認知症の回復で注目されているリコード法とは?概要を簡単にご紹介

この記事では、認知症治療の分野で注目されている「リコード法」についてご紹介していきます。リコード法はアルツハイマー型認知症の原因物質と言われるアミロイドβに着目した治療法です。2014年に論文発表された比較的新しい治療法のため聞き慣れない言葉かもしれませんが、介護施設の利用者さんやそのご家族から相談を受けたときにスムーズに話を進められるよう、ぜひ知識として蓄えておきましょう。

リコード法とは?

リコード法とは、アメリカのデール・ブレデセン博士によって開発されたアルツハイマー型認知症の治療システムです。2014年に論文が発表され、アメリカで出版された書籍はベストセラーとなりました。日本でもその翻訳本が出版されています。

リコード法は、英語の「Reversal of Cognitive Decline in Alzheimer’s disease(アルツハイマー病における認知機能低下の回復)」という言葉から「ReCODE protocol」とも記載されます。

リコード法は、アルツハイマー型認知症の原因物質とされるアミロイドβが増える原因に着目して、患者の検査を実施。一人ひとりに合った生活習慣改善プログラムを提供していくものです。

現在、アルツハイマー型認知症は、抗認知症薬で進行を遅らせることは可能ですが、根本的な治療薬や治療法が確立していません。リコード法もまた認知症を完全に治療できるプログラムではありませんが、これまでよりもきめの細かい治療法として注目を集めています。

リコード法による一般的な認知症改善プログラム

リコード法の内容を少し詳しくご紹介していきましょう。

ブレデセン博士は、認知症の原因物質と言われるアミロイドβが、脳の神経細胞の防御反応としてできる物質であることを指摘。その防御反応が起こる原因を減らすことで、認知症が改善するのではないかと提唱しています。

リコード法では、防御反応が起こり、脳にアミロイドβが蓄積する原因を6つに分類しています。

  1. 炎症性
  2. 萎縮性
  3. 毒物性
  4. 糖毒性12
  5. 血管性
  6. 外傷性

原因は患者さん・利用者さん一人ひとりで異なるため、リコード法を用いた治療ではまず細かな検査を実施。検査内容は認知機能検査をはじめ、アルツハイマー病リスク遺伝子検査、栄養解析、体組成検査などがあります。ほか、自律神経バランス分析・抹消血液循環分析、認知症のリスクでもあるうつ病をチェックするSDS検査などです。

それらの結果から、オーダーメイドで認知症改善プログラムを組んでいきます。内容としては、「食事」「睡眠」「運動」「ストレスケア」「脳トレ」といった生活習慣の改善がメインです。なかでも大きなウエイトを占めるのが食事の改善で、「ケトフレックス12/3」という手法がとられます。

介護施設で取り入れられるプログラムは?

リコード法を本格的に治療に取り入れるには、専門医師への相談と連携が不可欠です。医師からの指示を得てリコード法を介護施設で取り入れるのならば、前項でご紹介した「ケトフレックス12/3」が代表的でしょう。

ケトフレックス12/3とは?

まずはケトフレックス12/3をご紹介していきましょう。
ケトフレックス12/3の「ケト」とは、ブドウ糖と同様に脳のエネルギー源になるケトン体という物質を、脂肪を利用して作れる状態にすることです。「フレックス」は緩やかな菜食主義を意味します。最後の「12/3」は夕食から朝食まで12時間あける、夕飯は寝る3時間前までにとる、というルールのことです。

ケトフレックス12/3では、糖質の摂取はできるだけ控えて脂肪から脳のエネルギー源になるケトン体を作ります。ケトン体を作り出せる環境を整えることでエネルギー不足が解消され、脳の認知機能改善が期待できます。

野菜中心の食生活へシフトしていくことも大切。食物繊維を多くとることで血糖値の急激な上昇を抑えることが可能です。同時に腸内環境も整えることができます。野菜の栄養素によって脳の老化が穏やかになることも期待できるそうです。

ケトフレックス12/3の食事のポイント

ケトフレックス12/3では、ケトン体を作り出すために、以下のような食材を積極的に摂取することが大切です。

  • タンパク質が豊富な食材(ナッツ・青魚・卵など)
  • 脂質が含まれる食材(オリーブオイル・亜麻仁油・エゴマ油など)
  • 葉物野菜
  • キノコ類
  • 海藻類

介護施設でケトフレックス12/3を取り入れる際の注意点

ケトン体を作りやすくするためには糖質の摂取量を減らすことがポイントとなりますが、高齢者の場合は糖質を制限しすぎると、体重が減ってしまうことがあります。介護施設などでこの手法を導入する際は、高齢者が痩せすぎないよう定期的に体重を測定し、チェックを欠かさないようにしてください。可能であれば3ヶ月ごとに血液検査で体の状態もチェックしていきましょう。

まずは甘いおやつを減らすことから実行し、慣れてきたら夕食から、主食であるごはんやパンをなくしていきます。主食を減らすかわりに、タンパク質を含むおかずを1品から2品増やしていきましょう。主食がないかわりにおかずの味つけを控えめにするのがポイントです。

ケトフレックス12/3では食べる順番も意識します。主食ではなくおかずから食べることで、血糖値の急激な上昇を防ぐことが可能です。また、よく噛んで食べて脳に刺激を送ることも重要。夕食の主食をなくすことができたら、徐々に朝食や昼食の主食もなくす方向へシフトしていきます。

リコード法は、本人とご家族が医師に相談し、十分な説明を受けメリットやデメリットを確認してから取り組むことが重要です。ご家族や介護者の負担もあるので、双方がきちんと納得してから導入するようにしましょう。

リコード法を試してみるのもひとつの手段

リコード法はアルツハイマー型認知症の治療の選択肢のひとつです。効果が保証されているわけではありませんが、リコード法を実践してみて認知症の症状に改善がみられた例もあり、大変注目されています。介護施設として取り組む場合は、家族や医師と連携をとり、本人の体調を観察しながら導入していきましょう。

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