【介護施設の食中毒】施設内勉強会で共有したい3つの予防ポイント
食中毒といえば、介護施設で発生すると怖いもののひとつ。高齢者は体の抵抗力が低くなっており、中には持病のある方もおられますよね。そのため体内に入った菌やウイルスが少量であっても食中毒になりやすいため注意が必要です。介護施設で食中毒を発生させないためには、働くスタッフ全員が食中毒予防に関する正しい知識を身に付けておくことが大事!そこで今回は、施設内勉強会で共有したい食中毒の3つの予防ポイントをご紹介します。
目次
梅雨~夏、そして秋も要注意!介護施設で食中毒を防ぐためには?
5~6月の梅雨時期や、7~9月の気温や湿度が高い時期は、とくに菌が増殖しやすいため、食中毒が起こりやすい傾向にあります。また、秋や春には他の時期に比べ、自然毒(※)による食中毒が増えることも特徴です。さらに12~3月の冬には、ノロウイルスをはじめとするウイルス性の食中毒の発生がみられます。
季節ごとの食中毒の傾向をお伝えしましたが、さまざまな原因によって食中毒は年間を通して発生しているので注意が必要です。
※自然毒 :動植物が本来持っている有毒成分、および食物連鎖によって動植物に取り込まれた毒素のこと。フグや貝、毒キノコなど。
そして、介護施設においては食中毒への警戒をさらに強めなければなりません。なぜなら、高齢者は食中毒になりやすく、症状も重篤になりがちだから。高齢者は免疫機能が低下している可能性が高く、持病のある方もいます。そのため、少量の菌やウイルスでも食中毒になる恐れも…。介護施設では食中毒予防のための勉強会や研修を行い、徹底して対策することがおすすめです。食中毒予防の3原則「菌をつけない」「菌を増やさない」「菌を殺す」を念頭に置き、対策しましょう。
食中毒予防のポイント1:手洗い
食中毒予防の原則のひとつが、「菌をつけない」。そのためには、手洗いを徹底し、手に「菌をつけない」ことが重要です。洗う際には、流水と薬用せっけんを使用し、しっかりと丁寧に洗いましょう。特に指先・爪まわり・指の付け根は汚れが残りやすいので注意してください。
介護施設で手洗いをするタイミングは以下のとおり。
- トイレのあと
- おむつ替えをしたあと
- 食事の前
- 食品を取り扱う前
- 嘔吐物を処理したあと
食中毒予防のポイント2:食品洗浄
食中毒を予防するためには、調理前の食品をしっかり洗浄することも大切です。食中毒を引き起こしやすい食品というと、生肉や生魚、生卵などが代表的ですが、実は生野菜を原因とする食中毒の事例も報告されています。
特に注意したいのが、トマト・きゅうり・レタスです。これらの野菜は付着している一般細菌数が比較的多いのが特徴。レタスにおいては、大腸菌群が付着している場合もあります。どの野菜も30秒程度の流水洗いをするだけで、約1/3まで菌数を減らすことが可能。しかし、多くの高齢者が過ごす介護施設においては、より念入りに食中毒予防をする必要があるでしょう。
トマトの洗浄方法
トマトは表面がつるつるしているため、きゅうりやレタスに比べて菌が落ちやすいのが特徴です。50度の温水で洗浄すると、きれいになります。
きゅうりの洗浄方法
きゅうりの表面にはイボがあるため、水洗いだけでは菌を落とすことが難しいようです。高齢者に生で提供する場合は、熱湯を5秒かける、または熱湯に5秒浸すと洗浄消毒することができます。
レタスの洗浄方法
葉物野菜のレタスは表面積が大きい分、重さあたりの菌の数が多いのが特徴です。洗浄・消毒する際には50度の温水を用いるのがおすすめ。菌を洗い流して落とすことができるうえ、しおれたレタスがシャキッとするメリットもあります。
食中毒予防のポイント3:十分な加熱
「菌を殺す」ためには、食品をよく加熱することが重要です。介護施設において、特に取り扱いに注意が必要な生肉・生卵について、食中毒予防のポイントをまとめました。
生肉の取り扱い方のポイント
生肉には、O157などの腸管出血性大腸菌や、カンピロバクターなどの食中毒菌が付着しており、重篤な食中毒の原因になることがあり注意が必要です。
介護施設に限らず、ハンバーグや肉団子などひき肉で調理したものは、中心部までしっかりと火が通ったことを確認しましょう。焼肉やすき焼きなどカット肉を使う料理に関しても、しっかりと加熱してください。
生卵の取り扱い方のポイント
生卵は、サルモネラ菌に汚染されている場合があります。卵かけごはんなど、生卵を使った食事でサルモネラによる食中毒を起こし、子供が死亡した事例もあるようです。
そのため新鮮な卵を購入し、購入後は冷蔵庫で保管することをおすすめします。卵を割ったらすぐに調理し、十分に加熱しましょう。また、ヒビが入っていたり、割れていたりする卵の使用を控えることも大切です。
食中毒予防マニュアル資料で定期的に勉強会を
介護施設のスタッフ全員で食中毒予防に関する知識を身につけ、実行していくためには、食中毒に関する勉強会や研修を行うのがおすすめです。またその際には、食中毒予防についてまとめられたマニュアルなどを用意しておくとよいでしょう。
地方自治体や団体、企業などの中には、厚生労働省が発表している「食中毒」に関する情報をもとに、独自の食中毒予防マニュアルや資料を作成している場合もあるようです。食中毒予防マニュアルをダウンロードできるサイトなどもあるので、ぜひ活用してみてください。
また、厚生労働省老健局による「介護現場における感染対策の手引き」によると、介護施設や介護事業所において食中毒が発生した場合の対応について記載されています。
食中毒の発生時や発生が疑われる場合は、症状のある利用者さんと介護スタッフの状況、それぞれに講じた措置などを記録しましょう。ここでいう記録の内容は、以下のとおりです。
- 利用者さんと介護スタッフの健康状態(症状の有無)について、発生した日時や利用者さんの居場所(居室のある階やユニットなど)ごとにまとめる
- 受診状況・診断名・検査・治療の内容
これらの記録をまとめる手順についても、食中毒に関する勉強会の中で全スタッフへの周知を図りましょう。
食中毒の予防や対策に関する勉強会を行う時期としては、食中毒のリスクが高まりはじめる5~6月がおすすめです。勉強会は、食中毒予防マニュアルの内容を学ぶ座学と、対策方法に関してスタッフ同士でディスカッションできるよう、グループワークを組み合わせて実施すると効果的ですよ。
スタッフ一丸となって介護施設での食中毒を防ごう
高齢者は免疫機能が低下している場合も多く、食中毒を発症してしまうと、重症化する恐れもあります。そのため、介護施設などでは食中毒を発生させないことが大事です。食中毒予防の3原則「菌をつけない」「菌を増やさない」「菌を殺す」を念頭に、スタッフ全員で食中毒対策を行いましょう。定期的に勉強会を開催し、正しい知識を身につけることも重要です。