介護施設で役立つ3つの転倒事故対策!万一の際の対応も
高齢者にとって転倒は、その後の生活の質を下げる可能性がある大変危険なものです。ときには、転倒事故が寝たきりの原因になることもあります。そのため介護施設において、利用者さんの転倒事故を防止することは重要です。しかし高齢者は転びやすいため、転倒防止には細心の注意が必要!そこで今回は、高齢者の転倒事故によるリスクや高齢者が転倒しやすい理由、介護現場で有用な転倒事故対策などをご紹介します。
目次
介護現場での転倒事故は大変危険!
高齢者の転倒事故は、軽い怪我だけでは済まないケースがあります。例えば、転倒によって骨折したり、頭部外傷を負ったりといった大きな怪我につながる恐れがあるのです。中には、転倒事故が原因で要介護状態になってしまうこともあります。
内閣府「令和4年版高齢社会白書(全体版)」によると、介護が必要になった主な原因の第4位が「骨折・転落」となっており、その割合は13.0%にのぼります。転倒による骨折が原因で体を動かす機会が減り、身体機能が衰え、ついには寝たきりになってしまうという方も少なくありません。
また転倒を経験すると、恐怖心により活動意欲がそがれ、結果的に身体機能が低下しまう方もいます。このように高齢者にとって転倒事故は、身体的・精神的ダメージを与える可能性のある大変危険なものです。
高齢者が転倒してしまう理由とは?
高齢者は若年者に比べて転倒しやすいといわれています。では、なぜ高齢者は転んでしまうのでしょうか?その理由を、内的要因・外的要因の両面から見ていきましょう。
高齢者自身に転倒の原因がある内的要因
内的要因による転倒とは、高齢者自身に原因があるもので、加齢による身体的変化や薬の影響、精神的な影響などが挙げられます。具体的には、筋力や視力などの低下、感覚の鈍化、服用薬による立ちくらみやふらつきなどの副作用などが、内的要因による転倒です。また、不安や緊張、焦りなどの精神的な変化によっても転倒は起こります。
転倒の原因が生活環境などにある外的要因
外的要因による転倒とは、生活環境や居住空間の中の物理的な原因によって起こるものです。例えば、敷居などの段差や滑りやすい浴室の床、手すりのない玄関や階段、床にある延長コード、高さの合っていない椅子などが外的要因にあたります。身体機能が低下した高齢者にとっては、生活環境の中にあらゆる転倒要因が潜んでいるということです。
高齢者が転倒しやすい場所とは?
介護施設における転倒事故対策には、転びやすい場所を知っておくことも大切です。
段差がある場所
転落・転倒の恐れのある階段はもちろん、敷居のような小さな段差でもつまずいて転倒してしまうことがあります。ときに、点字ブロックも転倒の原因になるため注意が必要です。
暗い場所
加齢により視力が落ち、視野が狭まっている場合、室内・屋外を問わず、暗い場所は転倒のリスクがあります。特に暗い場所では周囲や足元を目で見て確認することが難しくなり、ぶつかったり、つまずいたりして転倒してしまうのです。
濡れている場所
高齢になると体のバランスを保つ機能が低下するため、床や地面が濡れていると転倒につながる恐れがあります。浴室やトイレなどの水場は、特に注意が必要です。
介護施設における3つの転倒事故対策
介護施設で実施すべき転倒事故対策を3つご紹介します。一つひとつ確実に取り組みましょう。
介護施設の転倒事故対策1:利用者さんの心身の状態を把握する
利用者さんの体調や病状はもちろん、心の状態までしっかりと把握することが大切です。つまり、内的要因による転倒をできる限り防ぐことが転倒防止のカギとなります。介護施設における具体的な転倒事故対策は次のとおりです。
- 急かしたり、不安にさせたりしないよう利用者さんのペースに合わせてサポートする
- 薬の服用記録をつけ、薬の種類や副作用の有無などを把握する
- 日々の健康状態や行動を観察し、体調に変化がないかチェックする など
介護施設の転倒事故対策2:転倒事故が起きにくい環境を整える
介護施設では、外的要因による転倒事故対策は徹底しなければなりません。なぜなら、入念に対策を行うことで、事故を限りなくゼロに近づけられるためです。具体的な対策は次のとおり。
- 床や階段に物を放置しない
- マットや家具が容易に動かないよう、滑り止めグッズや固定器具を活用する
- 照明を明るくする
- 段差予防シートやケーブルカバーなどを活用し、段差を排除する など
整理整頓の徹底や、転倒リスクのある場所を排除する視点を持つことなどが重要です。
介護施設の転倒事故対策3:利用者さんに転倒予防の運動をしてもらう
転倒防止には、下肢や体幹を鍛え、立ったり座ったりするための筋力や体のバランスを強化・維持し、転びにくい体を作ることも重要です。これらの身体機能を維持するためには、利用者さん自身に転倒予防の運動をしてもらう必要があります。
椅子に座った状態でつま先立ちやつま先上げ、もも上げなどの運動が効果的です。利用者さんの体調を考慮し、無理のない範囲で行いましょう。
介護施設で転倒事故が起きた場合の対応
いくら転倒事故対策をしていても、事故を100%防ぐことは難しいのが現状です。万が一のために、転倒事故が発生した場合の対応を押さえておきましょう。
呼びかけて意識と状態の確認
転倒事故発生後、まずは意識確認のため名前を呼びかけます。耳元で大きな声で呼びかけましょう。反応があった場合は、バイタルサインや意識レベルを確認します。呼びかけに応じない、または呼吸停止などがあれば、迅速に救急要請しましょう。
外傷や骨折の有無など受傷部位の確認
外傷の状況や骨折の有無などを確認します。裂傷や腫脹などを確認し、出血が見られる場合は止血を行いましょう。なお、骨折や頭部外傷はその後の生活機能や生命予後に大きく影響する可能性があるため、事前にどのように対応すべきか決定しておくことをおすすめします。
応援要請や救急要請
1人で対応することのないよう周囲にいる介護スタッフへ応援要請し、声かけや受傷部位の確認などを分担します。外傷や骨折の有無が判断できない、または受傷部位が明らかな場合は、迅速に救急要請を行いましょう。
介護施設の転倒防止対策は内的要因と外的要因の排除と転倒防止運動が重要!
高齢者にとって転倒は、寝たきりの原因になりうる大変危険なものです。そのため介護施設では、日頃から転倒事故対策に力を入れる必要があります。利用者さん自身に原因のある内的要因、そして生活環境に潜む外的要因の両方を排除する対策に加え、転びにくい体づくりのためのサポートを行うことも重要です。