【高齢者の熱中症】注意すべき症状とすぐできる対処法とは?

気温や湿度が上がってくると、注意したいのが熱中症です。とくに高齢者は若い方に比べ体内の水分量が減少しており、汗をかきにくかったり、暑さやのどの渇きを感じにくかったりするため、熱中症になりやすい傾向にあります。さらに、高齢者の熱中症は短時間で症状が悪化することもあるため、初期症状に気づくことが重要です。この記事では、熱中症のさまざまな症状とすぐにできる対処法について解説しています。暑い季節には、高齢者のちょっとした変化にも対応できるよう、参考にしてください。

熱中症の危険信号かも?注意すべき症状とは

熱中症の症状は重症度によって大きく3つの段階に分けることができます。高齢者の熱中症は急変しやすいため、初期での処置が肝心。熱中症を軽度のうちに処置するためには、どのような症状があるのか知っておくことが必要です。ここでは、熱中症のさまざまな症状について解説します。

症状1「めまい、立ちくらみ」

熱中症の初期症状として代表的なものが、めまいや立ちくらみです。
体温が上昇すると、体内にこもった熱を外へ逃がそうと皮膚の血管が広がります。すると、全身の血液量が減少し血圧も下がり、脳への血流が減少。こうした血圧や血流の変化によって、めまいや立ちくらみといった症状が現れるのです。場合によっては、一時的に気を失って倒れてしまうことも。呼吸回数が増えたり、脈が弱くなったり、唇がしびれたりという症状が見受けられることもあります。

症状2「こむら返り、筋肉のけいれん」

汗をかいたとき、水分ばかり補給して塩分がきちんと補給できないと、こむら返りや手足のけいれん、手足のしびれなどが現れることがあります。これらの症状は熱けいれんと言い、熱中症の初期に現れる症状の1つです。筋肉の硬直や筋肉痛、場合によって痛みを伴うこともあります。てんかんのような全身のけいれんとは異なり、部分的に症状が現れるのが特徴です。

熱けいれんは、塩分の欠乏によって現れる症状です。大量に汗をかくと、体内からは水分とともに塩分も失われます。水分だけを補給していると、血液中の塩分濃度が下がり、手足の筋肉の収縮が起こって熱けいれんが生じるのです。熱けいれんが起こってもほとんどの場合、意識ははっきりしており、必ずしも高体温になるとは限らないことを知っておきましょう。

症状3「頭痛、吐き気、嘔吐」

めまいや立ちくらみなどの初期症状が進行すると、頭痛や吐き気、嘔吐などを引き起こすことがあります。これらの症状は、重症度3段階のうち中度に分類されるため、即座に応急処置をし、意識がもうろうとしている場合には救急搬送が必要です。

上昇した体温を下げるために大量に汗をかくと、体内の水分や塩分が不足している状態に。血流が悪くなると、めまいや立ちくらみなど熱中症の初期症状が現れます。このとき、水分補給や冷却など適切な対処をしなければ、症状が進行し脳や消化管などへの血流が低下。臓器の温度上昇により、頭痛や吐き気という症状が現れるのです。

症状4「身体がぐったりする、倦怠感」

身体がぐったりする、倦怠感など、従来、熱疲労や熱疲弊と言われていた状態も熱中症の中度に分類される症状です。身体に力が入らないと感じたり、めまいや立ちくらみなどの初期症状と同時に起こったりすることもあり、ごく軽度の意識障害が見られるケースもあります。

高齢者は、疲れやすいこともあり、熱中症による倦怠感に気づきにくいことがあるかもしれません。そのまま放っておくと、さらに重症化する可能性もあるため、暑い季節の倦怠感や身体のぐったり感には一層の注意が必要です。

症状5「高体温」

身体が熱くなる高体温は、熱中症の中でも重度に分類され、熱射病とも呼ばれる症状です。

人の身体は、体温が上昇すると汗をかくなどして平常の体温をキープしています。体温を下げるために大量の汗をかいて体内の水分が失われると、汗をかくことが不可能となり、体温は上昇する一方に。体温調節機能がうまく働いていないため、生命に危険が生じる42℃を超える可能性もあります。高体温になった場合は、すぐに医療機関を受診し、身体を冷却して体温を下げる応急処置が必要です。

症状6「意識障害」

呼びかけても反応しない、返答がおかしいという意識障害がある場合は、重度の熱中症です。ほかにも、まっすぐ歩けない、身体がガクガクとひきつけを起こす、上手に水分が補給できない場合も重度に含まれます。すぐに医療機関を受診しましょう。

屋内にいると、なかなか熱中症と気づかないケースもありますが、高齢者の場合、室内でも熱中症を起こす可能性は十分考えられます。中には、我慢する利用者さんもいらっしゃるかもしれないので、ちょっとした体調の変化も報告してもらえるような関係性を築くことも大切かもしれませんね。

高齢者の熱中症ですぐできる対処法は?

高齢者の方が熱中症を発症したとき、応急処置法を知っておけばすぐに対応できるため安心です。ここでは、症状が出てからすぐできる対処法を紹介するので、介護職員の方はぜひ覚えておきましょう。

対処法1「涼しい場所へ移動する」

エアコンの効いた室内や風通しの良い日陰など、安全に休める涼しい場所へ移動しましょう。めまいや立ちくらみなどの症状がある場合は、ふらつきの心配があるため、自分で歩行できる状態でもしっかり支え、転倒しないよう注意が必要です。

対処法2「楽な姿勢で休ませる」

横になる、座らせるなど本人の楽な姿勢で休ませることも重要です。横にする場合には、足の下にタオルや座布団を置いて10センチほど高くすると、心臓や脳への血流や血圧が上昇しやすくなります。

対処法3「衣服をゆるめる・脱がす」

衣服を数枚着用している場合には脱がしたり、ベルトや下着はゆるめたりして、身体にこもった熱を逃がしましょう。

対処法4「身体を冷やす」

皮膚に冷水をかけ、扇風機やうちわで仰ぐことで身体を冷やし体温を下げることができます。氷のうや濡れたタオルなどで、首筋や脇の下、足の付け根など太い血管が通っている部分を冷やすのも効果的です。身体の冷却は、熱中症の対処法として欠かせません。もし救急車を要請した場合でも、到着するまで身体の冷却は続けましょう。

対処法5「水分や塩分を補給する」

水分だけでなく塩分の補給も重要な対処法の1つ。0.1~0.2%濃度の食塩水やスポーツドリンク、経口補水液が最適です。また、一度に大量に補給するのではなく、こまめに一口ずつ飲むことがポイント。食塩水が飲みづらいときには、梅干しもおすすめです。ただし、意識障害でうまく飲めない場合や嘔吐がある場合などは、水分が気道に入る危険性もあるため、無理して飲ませる必要はありません。医療機関を受診しましょう。

介護施設では熱中症の症状や対処法の知識も大切

熱中症にかからないよう対策をとっていても、環境や体調によって熱中症を起こしてしまう可能性があります。とくに高齢者の方は熱中症になりやすく、急変することもあるため、初期の症状を見逃さないことが重要です。高齢者の方が熱中症を起こしてしまったときのために、症状や対処法についてもきちんと知識を身に付けておきましょう。

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