高齢者が熱中症になりやすい理由とは?知っておきたい対策もチェック

気温が高くなる時期、特に気をつけたい「熱中症」。どの年代でも起こり得る症状ですが、身体機能の低下などから高齢者は熱中症になりやすいため、とくに注意が必要です。そこでこの記事では、高齢者が熱中症になりやすい原因と、具体的な予防や対策について解説していきます。気温が上がる時期の高齢者のケアについて知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

高齢者が熱中症になりやすいのはなぜ?

まずは高齢者が熱中症になりやすい、3つの原因について見ていきましょう。

原因1.身体機能の衰えから暑さを感じにくい

本来であれば、人は皮膚が「暑い」と感じると、血流や汗の量を増やして体内の熱を逃がそうとします。さらに、エアコンを使ったり衣服を脱いだり、暑さを和らげる行動を脳が促す機能も備わっているのです。

しかし、年齢を重ねると熱を感じ取る皮膚センサー自体の機能が弱まるため、暑さに対して鈍感になっていきます。実際に7月~9月の70歳以上の高齢者と若年者の部屋の温度では、高齢者の室温のほうが2℃ほど高く、31℃~32℃に達していたというデータもあるようです。

このように、高齢者の熱中症は、暑さを感じる機能自体の低下が大きく関係しています。

原因2.体に熱がたまりやすい

高齢者は、若年層と比べて体内に熱がたまりやすいことも、熱中症になりやすい原因の1つ。とくに、高齢者は汗をかく機能が低下しているため、体内から熱が逃げにくくなっています。

さらに、暑くなると皮膚への血流量が増える一方、心臓に戻る血液は減少。それを補うために心拍数も増え、血管などへの負担は大きくなります。身体機能全体が低下している高齢者にとっては、こうした体の変化も、熱中症が起こりやすくなる一因です。

原因3.体の中の水分量が少ない

高齢者は、体液や血液の量が、若年層よりも減少しています。体内の水分量は、小児75%・成人60%に対し、高齢者はわずか50%とのこと。こうした体内の水分不足も、熱中症の引き金となっています。

さらに、身体機能の低下により、のどの渇きを感じにくいことも高齢者の特徴です。もともとの摂取量が少ない上に、歳を重ねるほどたくさんの尿を使って体の老廃物を排出しているため、水分不足はますます加速します。年齢に伴うこうした悪循環も、高齢者に熱中症が多い理由の1つです。

高齢者の熱中症を予防する6つの対策とは?

気温が高くなる時期は、次の6つの対策を行い、高齢者の熱中症を防ぎましょう。

対策1.のどが渇かなくても水分を摂る

高齢になると、のどの渇きを感じにくくなります。そのため、1日1.2リットルを目安にこまめな水分補給を心がけましょう。とくに、入浴前と後、起床後はすぐに水分を摂ることが大切です。可能であれば、1時間ごとにコップ1杯の水分を摂るようにしましょう。

また、高齢者の中にはトイレの回数が増えることを嫌がり、水分摂取を控えたいと思う方もいます。こうした方には、食事にナスやキュウリなど、水分が多い食材を使うことで水分を摂ってもらうのも1つの手です。

高齢者の水分摂取は、のどが渇いてからでは手遅れのこともあるため、計画的・意識的に水分を摂るよう促していきましょう。

対策2.こまめに部屋の温度を測る

高齢者の熱中症は、室内で発生することが多いと言われています。そのため、室温を適切な温度に保つことも大切です。暑い日には、エアコンなどの冷房機器を活用して、室温を28℃前後に保ちましょう

また、風向きなどを調整してエアコンの風が直接体に当たらないようにする工夫も大切です。窓とドアの2ヶ所を開けて、屋外の涼しい空気も入れながら、風通しのよい環境を保ちましょう。

対策3.1日1回は汗をかくようにする

一般的に高齢になると体温調節機能が低下しますが、運動習慣があると、こうした機能低下が起こりにくいことが明らかになっています。そのため、無理のない範囲で1日1回、汗をかくことも大切な習慣です。

最近の研究では、運動後30分以内に、牛乳などの「糖質とたんぱく質を含む食品」を摂ると、熱を逃がす能力が高まると報告されています。このように、日常的に体力づくりをすることは、熱中症を防ぐためにも重要な習慣と言えるでしょう。

対策4.お風呂や寝るときにも注意を

入浴中や寝ているときにも体内の水分は失われるため、熱中症になる危険性があります。そのため、入浴前後や就寝前の水分補給も大切です。お風呂に入る前と後に水分を摂り、寝室でも水分補給できるよう枕元に水などを用意しておきましょう。

季節にかかわらず、熱めのお風呂に長時間浸かると、熱中症のような状態になる高齢者もいます。お湯の温度に注意し、長く浸かりすぎないよう注意しておくことも大切です。

対策5.周りの方が気にかける

暑さに気づきにくい、のどが渇きにくいなど、高齢になると自分だけでは体調の変化に気づかないことが増えてきます。「節電をしよう」と、エアコンを使うこと自体を控えたがる方もいるかもしれません。高齢者の熱中症を防ぐには、周囲の方が次のような点を気にかけることも大切です。

  • 体調面:元気や食欲はあるか・熱はないか・口の中やわきの下の乾燥具合
  • 身体面:体重や血圧に変化はないか・心拍数は正常か
  • 環境面:部屋の温度と湿度・部屋の風通しや日当たり など

高齢者の熱中症を防ぐためには、対策を本人だけに任せないことも重要です。できるだけ周りの方が気にかけることで、予防を促していきましょう。

対策6.外出時は体に十分な配慮を

暑い時期の外出は、体への負荷が高まります。外出の際は服装を工夫し、水分補給や休憩を十分とるなどの対策が必要です。できるだけ日差しの影響を受けないよう、日傘や帽子を利用してもよいでしょう。

また、外出先はできるだけ涼しい場所や施設を選ぶことも大切です。合わせて、緊急時の連絡先についても確認しておくと安心でしょう。

高齢者の熱中症は本人任せにしすぎないことが大切!

高齢になると、身体機能の低下などから、熱中症が起こりやすくなります。暑さに鈍くなったり、のどが渇きを感じにくくなったりする方も増えるでしょう。そのため、水分補給や室温調整などを、本人の感覚に任せすぎないことが大切です。介護施設では、こまめな水分補給を計画的に組み込むなど、身体機能に応じた熱中症対策を行いましょう。

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