高齢者施設のエアコン設定温度に注意!夏は何度が最適?【日中編】

日本の夏は、平均気温が30度を超えることが当たり前の時代になりました。そのため熱中症などのリスクを回避し、室内で安心して過ごすためには、エアコンの活用が必須となります。しかし、暑いからといってただやみくもに冷やしすぎると、自律神経のバランスが乱れてしまうことも…。では、高齢者施設でエアコンを使用する場合の設定温度は何度が適温なのでしょうか。今回は、夏場の日中にエアコンを使用するシーンにスポットを当て解説します。

夏の高齢者施設ではエアコンを活用しよう

日本の夏は、あたたかく湿った空気を持つ太平洋高気圧の影響により、気温が高いことに加え、湿度も高く蒸し暑いのが特徴。また日本の6~8月の平均気温は、100年で約1.5度上昇しています。さらに近年では、厳しい暑さの指標としてよく用いられる真夏日(日最高気温が30度以上の日)や、猛暑日(日最高気温が35度以上の日)の日数も増加傾向に。盛夏期の暑さがより一層厳しくなっているのが現状です。

このように厳しい日本の夏で、注意しなければならないのが熱中症です。熱中症とは、高温多湿な環境下に長期間身を置くことで、体内の塩分や水分のバランスが乱れたり、体温の調節機能が破綻したりするなどして発症する障害の総称。屋外だけでなく、室内でも日常生活を送っているときに発症する恐れがあり、場合によっては命の危険にさらされることもあります。

また、熱中症の患者さんの約半数は65歳以上の高齢者ということをご存知でしょうか?高齢者は暑さに対する感覚機能、体温調節機能が低下しているため、熱中症にかかりやすいのです。そのため高齢者施設では、エアコンを利用して室温を調節し、安全に過ごせる環境を整える必要があります。

高齢者施設の夏、エアコンの設定温度は26度が適温

人間は通常、脳が暑いと判断すると、皮ふ血流量や発汗量を増加させて熱放散を促進することで体温を調節します。ところが高齢になると、皮ふ血流量や発汗量の増加が遅れるだけでなく、その後体温が上昇してもうまく熱放散ができなくなるのです。つまり若年者に比べて高齢者は、体に熱がたまりやすく、深部体温がより上昇しやすいのが特徴。高齢者本人が、暑さやのどの渇きを訴えていなくても、熱中症の危険があります。

政府が推奨する室温の適温は28度前後

高齢者施設で利用者さんの熱中症を防ぐためには、温湿度計を設置し、室内温度をこまめにチェックすることが大切です。日中、暑さを感じる日にはエアコンを積極的に使用し、室温を28度前後に保つことを政府が推奨しています。

ここで重要なのは、室温の目安=エアコンの設定温度とは言い切れないこと。実はエアコンの設定温度を28度にしていても、室温が必ずしも28度になるとは限らないのです。外気温や日差しの入り方、建物の周辺環境のほか、室内にいる人数、出入りの頻度など、さまざまな要因が考えられます。

高齢者施設のエアコンの設定温度は26度がベスト

高齢者施設において、レクリエーションなどを行うホールでは、多くの利用者さんやスタッフが同じ空間で一緒に過ごします。利用者さん個人の居室においても、利用者さん自身がレクリエーションに参加したり、入浴室や食堂へ移動したり、介護スタッフが介助に訪れたりと出入りも頻繁にあるもの。そのためエアコンが効きにくい環境とも言えるでしょう。

そこで夏場の高齢者施設では、エアコンの設定温度を26度にするのがおすすめです。26度に設定することで、大多数の方が快適に過ごせるでしょう。ただし中には、設定温度26度だと寒いと感じる方もいるかもしれません。その場合は、上に1枚羽織っていただくと良いでしょう。エアコン稼働中は温湿度計をこまめにチェックし、室温が28度を越えないよう、反対に必要以上に下がりすぎないように注意することも大切です。

高齢者施設でエアコンをより効果的に使うには?

26度というと、エアコンの設定温度としては割と高めだと思う方も多いかもしれません。しかし、外気温が35度を超えるような真夏日には、エアコンもかなりの電力を消費します。そこで、エアコンをより効果的に使うためのツールやポイントを3つご紹介します。

フィルターをこまめに掃除する

フィルターにホコリなどの汚れが詰まると、風量が下がり、大きな電力が必要になってしまいます。フィルターを定期的に掃除することで、エアコンの効率をアップさせましょう。

家庭用エアコンを使用している高齢者施設の場合、フィルター掃除の理想の頻度は2週間に1回。業務用エアコンの場合は、1ヶ月に1回が目安です。ただし、業務用エアコンのセルフメンテナンスは難しいケースもありますよね。その場合には、業務用エアコンクリーニング専門業者に依頼するのもよいでしょう。

扇風機やサーキュレーターを活用する

室内の空気を循環させる目的で、扇風機やサーキュレーターを併用することもエアコンの効率アップにつながります。一般的にあたたかい空気は部屋の上層へ、冷たい空気は下層へとたまってしまうもの。部屋全体の温度を均一に下げるためには、下層にたまった冷気を循環させることがポイントです。

ポイントは、エアコンを背にするように扇風機やサーキュレーターを設置すること。すると空気のムラが解消され、部屋全体の温度を効率的に下げることができるでしょう。

ブラインドやカーテンで日射熱をコントロールする

夏場、室温を上げる大きな要因のひとつが、外部からの日射熱だと言われています。つまり、日射熱を遮断できれば室温の上昇を抑えられ、さらにはエアコンを効果的に使用できるというわけです。遮熱効果の高いカーテンやブラインドを上手に活用し、部屋に入る日差しを遮蔽しましょう。

エアコンは設定温度26度で快適・安全な空間づくりを

夏場の高齢者施設ではエアコンを使って室温を調節し、熱中症などのリスクを回避しなければなりません。エアコンの設定温度は、26度がベスト。ただし、エアコン稼働中も温湿度計など室温をこまめにチェックし、理想の室温と言われる28度付近をキープするよう心掛けてください。エアコン効率を上げるため、遮熱カーテンやサーキュレーターなどの併用もおすすめです。

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