介護職員等ベースアップ等支援加算とは?給与アップの新制度を解説

2022年10月から施行される「介護職員等ベースアップ等支援加算」。介護職員の給与を月額平均9,000円アップすることを目指す、新たな制度です。介護業界で働く多くの方にとってプラスとなる同制度。この記事では、そんな介護職員等ベースアップ等支援加算の対象者や対象施設、取得するための要件などをくわしく紹介していきます。介護業界で働く方やこれから転職・就職する方の多くにかかわるため、ぜひチェックしてみてくださいね。

介護職員の処遇改善を目指す!「令和4年度介護報酬改定」

介護職員の賃金を底上げしていこうとする動きは、以前より活発です。厚生労働省が公表した「令和4年度介護報酬改定」では、「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」をふまえ、2022年10月以降に臨時の報酬改定を予定しています。これまでの賃金アップ制度に加え、2022年はもう1つの新制度が介護報酬に加わる年であることに注目しておきましょう。

【わかりやすく解説】介護職員等ベースアップ等支援加算とは?

「介護職員等ベースアップ等支援加算」とは、2022年10月からスタートする介護職員の処遇改善制度のことです。具体的には、月額平均9,000円の賃金アップを目指して導入されます。すでに2022年2月から「介護職員処遇改善支援補助金」として同様の賃上げがスタートしていますが、同制度は9月で終了。これを引き継ぐ形で、介護職員等ベースアップ等支援加算が開始される予定です。

<月額平均9,000円賃上げ制度>

期間2022年2月~9月2022年10月以降
名称介護職員処遇改善支援補助金介護職員等ベースアップ等支援加算
財源国費介護報酬
支払い時期2022年6月~2022年12月~

この月額平均9,000円の賃金アップを目指す制度は、9月までは国費で賄われるため、一時的な補助金とみなされています。しかし、10月からは介護報酬に組み込まれるため、継続的な制度として確立される予定です。

介護職員等ベースアップ等支援加算の対象になる人は?

介護職員等ベースアップ等支援加算の対象は、フルタイム勤務の介護職員だけでなく、パートやアルバイトなどの職員も含まれます。利用者さんの介護を実際に行う職員が、介護職員等ベースアップ等支援加算の対象です。そのため原則としては、同じ事業所内であっても直接介護を行わないケアマネジャーや事務職の方などは対象ではありません。

ただし同制度は、賃上げに活用するのであれば、事業所の判断によって柔軟に運用が可能というルールもあります。事業所によっては本来賃上げの対象ではない職員でも、給料アップの可能性があるでしょう。

介護職員等ベースアップ等支援加算の対象となる施設は?

介護職員等ベースアップ等支援加算は、2012年から運用されている「介護職員処遇改善加算」の(Ⅰ)~(Ⅲ)のいずれかを取得している施設が対象です。そのため、この加算が適用されない以下の施設は、対象から外れています。

<介護職員等ベースアップ等支援加算の対象外施設>

  • 居宅介護支援
  • 地域包括支援センター
  • 訪問看護
  • 訪問リハビリテーション
  • 福祉用具貸与サービス など

なお、厚生労働省老健局老人保健課の「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、約94%の介護施設が介護職員処遇改善(Ⅰ)~(Ⅲ)を取得しているとのこと。そのため、ほとんどの介護施設が介護職員等ベースアップ等支援加算の対象となります。ただし一部の介護施設では、介護職員処遇改善加算を取得していないため、就職や転職の際は取得の有無も確認しておくとよいでしょう。

介護職員等ベースアップ等支援加算で何が変わる?

ここからは、具体的に介護職員等ベースアップ等支援加算によって何が変わるのか、について見ていきましょう。

月額平均9,000円給与がアップする

介護職員等ベースアップ等支援加算が導入されると、月額平均9,000円給与がアップする可能性があります。支給額は、利用者さんの介護にあたる職員の最低人員配置基準をもとに算定。職員の賃金アップ以外では使えないルールもあるため、給与面でのアップを感じる方が多いでしょう。

ただし、支給額をどのように分配するかは、事業所次第です。そのため、実際にいくら給与がアップするかは、勤務先によっても異なるでしょう。

介護報酬の加算率が変わる

2022年10月からは、介護職員等ベースアップ等支援加算が介護報酬制度に組み込まれます。該当の介護報酬加算率も改定されるため、2022年9月までの補助金交付率とは異なる点に注意しましょう。ただし、申請や報告の方法などは、9月までの処遇改善支援補助金と同様です。

介護職員等ベースアップ等支援加算に要件はある?

簡単にお伝えしたとおり、介護職員等ベースアップ等支援加算の対象となるには、2つの要件を満たす必要があります。ここでは2つの要件について、より詳しく確認しておきましょう。

介護職員処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)のいずれかを取得している

介護職員等ベースアップ等支援加算は、前提として、介護職員処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)のいずれかの取得が必要です。

そもそも介護職員処遇改善加算とは、介護職員の職場環境を改善する取り組みを行う事業所への支給額を増やそうとする制度のこと。取り組む内容と数によって次のように金額が変わります。

  • 加算(Ⅰ):月額3万7,000円相当
  • 加算(Ⅱ):月額2万7,000円相当
  • 加算(Ⅲ):月額1万5,000円相当

介護職員等ベースアップ等支援加算は、これらの支給額に上乗せする形で導入される制度です。

加算額の2/3は介護職員等の基本給などの引き上げに使う

介護職員等ベースアップ等支援加算は、支給額の2/3を介護職員などの基本給や毎月支払われる手当の引き上げに使うルールが決められています。そのため、これらの使い道以外での使用は、原則としてNGです。

ただし、1/3は各事業所の裁量にゆだねられているため、いくら支給されるかはそれぞれの勤務先によっても異なるでしょう。

介護職員等ベースアップ等支援加算の申請方法とは?

介護職員等ベースアップ等支援加算は、各自治体に申請します。期日までに、職員の賃金改善総額(月額)などを記載した処遇改善計画書を提出し、支給後も実績報告書の提出が必要です。基本的な流れは、2022年9月まで行われる処遇改善支援補助金と同様と報じられています。

2022年6月時点では、申請受付は8月からとのこと。10月分の介護報酬から適用されますが、実際の支払いは12月からとされています。詳しい申請方法は、それぞれの自治体に確認してみましょう。

介護職員等ベースアップ等支援加算など処遇改善に注目を!

人手不足が指摘される介護業界では、人材確保のための処遇改善が積極的に行われています。今回お伝えした介護職員等ベースアップ等支援加算も、そんな取り組みのうちの1つです。制度利用にはいくつか要件があるため、これから勤務先を選ぶ際は、該当する施設かどうかも確認しておくとよいでしょう。

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