シニアのメイクセラピーとは?介護施設での取り入れ方
メイクセラピーを老人ホームや介護施設で取り入れると、利用者さんの生活の質を向上させると言われています。そもそもメイクセラピーがどういうものなのか、なぜ生活の質を向上させるのか、利用者さんへのメリットなどを見ていきましょう。また、どうすればメイクセラピストになれるのか、介護施設でメイクセラピーを行う際の料金相場についても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
メイクセラピーとは?
メイクセラピーとは、化粧療法のことを言います。医療行為や治療法ではありませんが、化粧を用いることで、生活の質の向上を目指すケア方法です。
女性にとってメイクは身近な存在。メイクをすると外出モードにスイッチが入る方も多いはずです。しかし、年齢を重ねたりリハビリや治療に専念したりすると、どうしても身だしなみを整えることを後回しにしがち。また、顔に手術痕や大きなシミなどがあると、気持ちが塞ぎがちになることも…。
メイクセラピーによって、積極的に周りの方と交流しようと行動したり、どうすればきれいにメイクできるのか考えたりするでしょう。化粧などで身だしなみを整えることで、表情が明るくなり自分らしさを表現しやすくなるメリットもあります。メイクによって気になる部分が薄らぎ、人と顔を合わせるのが楽しくなり、生きることへ前向きに考えられるようになるのです。
メイクセラピーではメイクをするだけではありません。スキンケアや顔のストレッチを行うこともあります。スキンケアやストレッチであれば、男性の利用者さんにも抵抗なく受けていただきやすいでしょう。
メイクセラピーによる利用者さんへのメリット
次に、メイクセラピーが利用者さんに与える具体的なメリットを見ていきましょう。
気持ちが安定しやすくなる
メイクすることで鏡に映る自分がきれいに見え、明るい表情に。自己肯定感がアップし幸福感で満たされるだけでなく、安心感やリラックス効果も期待でき、気持ちの安定にも関係します。メイクすると鏡をこまめにチェックする習慣ができ、外見を意識するようになる方も多いでしょう。
また、化粧品の香りやかわいらしいパッケージ、アイシャドウやチークのカラフルな色合いを視覚的に捉えることで、気分がアップする方もいるはず。気持ちの若返りにもつながり、「次はこの色の口紅を使おう」「今日はこの服を着たからこの色のアイシャドウにしよう」などと、美意識が高まることも期待できます。
コミュニケーションのきっかけになる
気持ちが安定すると、周りの方と積極的に会話を楽しむなど、コミュニケーションをとるようになります。また、周りの方も「今日のアイメイクは素敵ね」や「どんな口紅を使っているの?」など、利用者さんに話しかけるきっかけにもなるでしょう。
口腔機能や認知機能の向上
メイクセラピーは精神面のケアだけではありません。メイク前後に顔のマッサージをしたりホットタオルで温めたりすることで血行が良くなり、筋肉が緩むため、表情筋のトレーニングにも効果的です。
また、顔のマッサージで唾液の分泌が促され、口腔機能の向上も期待できます。メイクセラピストによる施術で得た知識を、介護施設などで利用者さんが普段にも自ら行うことで、自然と手を使う機会も増えることに。
手を動かすことで脳の機能が活性化すると言われているため、認知機能の向上にもつながりやすいでしょう。
リハビリの要素も
先ほど紹介したように、顔のマッサージやメイクで手や指を使うため、リハビリの要素も含まれます。定期的に手を使うと手の血行が良くなり筋肉が緩み、手の機能にも効果的でしょう。
メイクセラピーの流れ
メイクセラピーの工程を見ていきましょう。
- オーダーカウンセリング
- メイクセラピストによるメイク
- メインカウンセリング
- 利用者さんによるメイク
- フォローカウンセリング
オーダーカウンセリングでは、顔の中で気になっている箇所やどんな雰囲気になりたいのかを質問します。その後、顔の半分をメイクセラピストがメイクアップ。メインカウンセリングでは、オーダーカウンセリングとの比較や、その方の魅力の発見を行います。
残りの半顔は、メイクセラピストがレッスンしながら、介護施設の利用者さんが自身でメイク。メイク道具を持っている利用者さんであれば、普段使っているメイク道具でメイクすることも可能です。これは、普段使っているアイテムでも「こんなにも変化できる」ことをわかってもらうためです。フ
ォローカウンセリングでは、メイクアドバイスシート(メイク方法などを記載したシート)をプレゼントしたり、利用者さんに似合う色やメイク方法を紹介したりして終了です。
メイクセラピストになるためには
メイクセラピストになるためには、一般社団法人メイクセラピストジャパンが行うメイクセラピー検定に合格する必要があります。検定の講座では、メイク理論や色彩学などのメイクの基本から、メイクセラピーに関する知識、心理学やコミュニケーション方法なども学習。
メイクセラピー検定の勉強方法には、公式テキストで学んだり、eラーニングで講習を受講するほか、協会の認定校に通ったりする方法があります。
受験レベルは3級・準2級・2級1・級・特級の5つです。2級までは誰でも受験できるため、介護スタッフが受験して資格を取得することも可能。2級からプロ向けの内容となるため、利用者さんにメイクするのであれば、少なくとも2級以上の合格が必要です。
2級合格により、1級以上の受験ができるようになります。1級より上の特級を受験するには、1級の検定試験に合格し、活動報告書の提出や認定講座の受講が必要です。特級に合格すると晴れて「認定メイクセラピスト」になれます。
メイクセラピーの料金相場
メイクセラピーの料金相場は1回10,000円から15,000円ほどです。地域やお店、セラピストによって違います。勤務している介護施設でメイクセラピーを導入する際は、周辺エリアでの相場をチェックしましょう。
メイクセラピーは介護現場で注目の分野
介護施設で過ごしている利用者さんにとって、日々の生活はマンネリ化しがちです。レクリエーションのネタが尽きてしまった、女性がの利用者さんが多い介護施設などでは、メイクセラピーを取り入れるのも良いでしょう。顔のマッサージであれば、男性利用者さんも利用しやすいはず。メイクセラピーを介護施設に導入するメリットなどを把握して、ぜひ検討してみてください。