【防災の日】介護施設の防災マニュアルとは?命を守る正しい対応を学ぼう
毎年9月1日は「防災の日」。この時期には、介護施設で利用者さんも含めた避難訓練や防災グッズの見直しをすることも多いのではないでしょうか。ただ、どんなに備えていても不測の事態が起こりうるのが自然災害の恐ろしさ。今回は、介護施設で発生しやすいリスクとともに、知っておきたい防災知識を詳しく解説します。いざというときに利用者さんや自分自身の命を守れるように、正しい防災マニュアルについて学んでおきましょう。
目次
高まる介護施設の防災意識
毎年のように被害をもたらす豪雨災害や突然の大地震。目を覆いたくなるような被災地の状況に、自然と防災意識が高まる方も多いのではないでしょうか。
自然災害の恐ろしさは、あっという間に被害が拡大してしまうところ。1分1秒逃げ遅れただけで、生死を分けてしまうこともあります。
介護施設の利用者さんは、その多くが避難に支援が必要な方です。介護スタッフは避難のサポートをしつつ、自分の身も守らなくてはなりません。そのため、より一層高い防災意識を持ち、日頃から備えておく必要があります。
2024年からは、度重なる大災害を受けて、介護施設でのBCP(業務継続計画)策定が義務化されることが決まりました。(厚生労働省、2021年4月施行「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」より )
BCPとは、突然の災害など不測の事態が発生した際に、利用者さんの安全を確保し、必要なサービスを提供し続けるための方針やその手順をまとめた計画書のこと。このような省令が施行されたことからも、介護業界での防災意識が高まっていることが分かるでしょう。
もし災害が発生したら?介護施設で起こりやすいリスク
日常生活にサポートが必要な高齢者の方が多く利用する介護施設。災害時には、次のような問題が発生しやすくなります。
情報収集が難しく、孤立する
災害発生時には、被害状況や避難場所など正確かつスピーディに情報収集する必要があります。しかし、介護施設の利用者さんの中には情報を集める手段が分からなかったり、家族の安否が確認できなかったりして、強い不安を感じる方も少なくありません。
自力での避難が難しく、逃げ遅れる
介護施設には歩行が困難な方や身体が動かしづらい方、耳が聞こえにくい方など、自力での避難が難しい方が多くいます。また、普段は自力で行動できていても強い恐怖を感じ、パニックに陥ることも。その結果、転倒や思わぬケガをしてしまう方もいます。
避難所での生活に適応できない
災害が発生したら、まずはすぐに避難所を目指すことが重要。しかし、無事に避難所にたどり着けたとしても、安心できる状況とは言えません。高齢者の方の中には、避難所の不便な生活に適応しきれず、体調を崩してしまう方も多いです。ましてや介護を必要とする方であれば、サポート体制の整わない避難所での生活は、余計にストレスを抱えやすくなってしまうこともあります。
い ざというときに備えて!介護施設の防災マニュアル
介護施設で定期的に見直すべき防災対策を挙げました。日々の備えとしてぜひ取り入れてみましょう。
避難経路の確認
「もし車が使えなくなったら」「もし土砂災害で道が塞がれてしまったら」など、さまざまな“もし”を想定して、複数の避難経路を確保しておきましょう。
また、同じ避難経路であっても昼間と夜では状況が違うことも。異なる時間帯で避難経路の様子を確認しておくとより安心です。
備品の定期チェックと備蓄
避難できずに施設内にとどまることになっても、数日間は生活できるくらいの食料や水分を確保しておきましょう。利用者さんによっては、食物アレルギーがあったり、とろみ剤や流動食が必要だったりと食事に制限がある方も。利用者さん一人ひとりの食事方法に合わせて、必要物品をリスト化しておくといいでしょう。
施設や家具の耐震対策
どの程度の地震に耐えられるのか、施設の耐震性能を把握しておきましょう。
また、地震の揺れで倒れた家具の下敷きになってしまわないように、家具をしっかりと固定化しておくことも大切。避難経路には大きな家具や倒れやすいもの、割れやすいものを置かないようにするとより安心ですね。
緊急連絡先の把握
利用者さんのご家族や親戚など緊急連絡先をすぐに確認できるように、リスト化しておきましょう。また、ケアマネジャーやかかりつけの病院の連絡先も把握しておくと安心。もし災害発生時に利用者さんの体調に異変が起きたとしても、迅速に対応できます。
定期的な介護施設での防災訓練
定期的な避難訓練は、何よりの備えです。高齢者の方の中には、突然の災害発生に対応しきれず、咄嗟の判断ができない方も多いです。日頃から避難訓練で災害の恐ろしさや対応の仕方を知っておいてもらえれば、いざというときの危機意識にもつながるでしょう。
突然の災害発生!介護施設がとるべき応急防災対策
実際に災害が発生したとき、冷静に対応するためには日頃からの心構えが大切。緊急時にとるべき対応についてまとめました。
利用者さんと介護スタッフの安否確認
まずすべきは、利用者さんと介護スタッフの安否確認です。体調に異変がないか、少しでも変わったことがないか細かくチェックしてください。
医療機器の使用状況を確認
利用者さんの中には医療機器が必要な方もいます。災害による異常がないか、バッテリーの残量は十分にあるか確認しましょう。
利用者さんを安全な場所に集める
介護スタッフの目が行き届く範囲で、安全な場所に利用者さんを集めます。いざというときに避難しやすくなるだけでなく、利用者さんの不安な気持ちや恐怖心を和らげることにもつながるでしょう。
避難経路の状況確認
災害によって避難経路が寸断されていないか、危険な状況になっていないか確認します。安全な避難が難しい場合には、すぐに別の避難経路を検討し、判断することも必要です。
エレベーターの閉じ込み確認
エレベーターのある施設では、中に閉じ込められている利用者さんがいないか注意が必要。逃げ遅れている可能性もあるため、必ずチェックするようにしましょう。
備蓄品をまとめる
もし災害によって停電してしまったら、備蓄品を探すのも一苦労に。周囲が明るいうちに、できるだけ1ヶ所に備蓄品をまとめておくと安心です。
介護施設の防災マニュアルは定期的に見直しを!
おそらくすでに多くの介護施設では防災マニュアルを作成して、さまざまな備えをしているところも多いはず。ただ、利用者さんの状況に応じて、備蓄品や避難経路は定期的に見直す必要があります。いつ災害が起きても冷静な対応ができるよう、日頃から防災マニュアルを万全にして、防災の日などに向けて実施する訓練の機会に活用しましょう。