介護職の爪切りは医療行為?利用者さんの爪の手入れ方法

介護施設で働いていると、利用者さんの爪が伸びているのを発見することってありますよね。「介護スタッフの私が爪切りしてもいいのかな、医療行為になると聞いたことがあるような…」そんな疑問を抱く方も多いのではないでしょうか。今回は、介護職による爪切りについて詳しく解説。医療行為になる爪切りとの違いや、爪の手入れ方法、爪切りの種類までご紹介します。利用者さんの爪切りに不安のある方は、ぜひ参考にしてみてください。

介護職による利用者さんの爪切りは医療行為?

利用者さんの爪切りは医療行為になる場合もありますが、次項で紹介する条件を満たせば介護職が爪切りを行っても問題はありません。爪を切るときは、介護職で切っても良い状態かを必ず確認しましょう。爪だけでなく、利用者さん本人の容体が安定しているかも確認することが大切です。

介護職が爪切りを行うための条件

介護職が爪切りをしても良い条件は以下の通りです。

  • 爪に異常がない
  • 爪周囲の皮膚に異常がない(化膿や炎症など)
  • 糖尿病などの疾患による専門的な管理が必要でない

高齢の方は、爪に問題を抱えているケースが少なくありません。爪が割れやすい、剥がれやすい状態の利用者さんが多いことも高齢者の特徴といえます。「この爪は、爪切りをしてもいいのかな?」と判断に悩むときは、先輩スタッフへ相談するようにしましょう。また、高齢者が抱えやすい爪のトラブルについて学んでおくと、介護職による爪切りが可能かの判断がつきやすくなるのでおすすめです。

爪切りの実践:準備編

爪切りに必要な物品は以下の通りです。利用者さんの爪に合わせた物品選びができるよう、爪切りの種類も押さえておきましょう。

【準備物品】

  • 爪切り
  • やすり
  • 切った爪を受ける膿盆・トレーやビニール袋など(あれば)

爪切りの種類

爪切りの種類は大きく分けて3つあります。それぞれ、どのような爪に向いているのか確認していきましょう。

グリップ型

よく見る一般的なV字型の爪切りです。閉じるとI字型になるので、コンパクトに保管できるうえ、さまざまなサイズがあることが特徴。てこの原理を利用した構造になっているので、軽い力でスパッと切ることができます。馴染みのあるタイプの爪切りなので、使い慣れている方も多いですが、爪の開きが狭く分厚い爪には不向きです。主に手の爪に適した種類と覚えておくと良いでしょう。

ニッパー型

工具のニッパーのような形をした爪切り。刃先が鋭利なので、分厚い爪や固い爪、分厚い爪などに適しています。グリップ型と比較すると爪への負担が少なく、切る圧力で爪が割れてしまったり、剥がれたりなどが起きにくいことが特徴です。しかし、普段使いしている方が少ない爪切りのため、使い慣れるまでは扱いにくいと感じることも。切った爪を受けるカバーがないため、使用する際は爪が飛び散ることも留意しておきましょう。

はさみ型

赤ちゃん用の爪切りとして流通していることが多いはさみ型。薄い爪を切るのに適しています。刃先が丸く安全な構造になっているので、弱い爪の方への使用におすすめです。

爪切りの実践:姿勢編

安全に利用者さんの爪を切るためには、介護スタッフの姿勢も重要です。

手の場合

爪を切りたい手側の隣に、利用者さんと並ぶようにして座ります。隣に座ったら、爪を切る側の腕を自分の両腕で挟み、利用者さんの腕が動かないように固定。利用者さんの手が、自分の爪を切るときのような位置関係になることがポイントです。爪切り中、安定した姿勢をキープできるよう、利用者さんには背もたれのあるイスや、ベッドに座ってもらうようにしましょう。

足の場合

足の爪を切る場合は、爪を切りたい足の隣に片膝をついてしゃがむ、もしくは低いイスなどを準備して座ります。安定して座ることができたら、介護スタッフの脚の上に利用者さんの膝から下を乗せましょう。手の場合と同様に、自分の足の爪を切るときのような位置関係にすることがポイントです。そして、膝に乗せた足に片方の腕を回し、脇と脚で挟み込むようにして固定させ、爪を切っていきます。利用者さんの中には膝を伸ばせない方もいるので、膝は曲げたまま持ち上げていきましょう。

こんな姿勢はNG

コミュニケーションがしやすい、利用者さんの表情が見やすいからと、介護スタッフと対面での爪切りは避けましょう。普段自分の爪を切る視点と異なる角度からの爪切りは予想以上に難しいです。死角が多く、爪以外の場所を切ってしまう原因になりやすいので注意しましょう。

また、利用者さんは背もたれのあるイスやベッドに座ってもらい、転倒や転落しないようにすることも大切です。とくに足の場合は、足先だけを持ち上げると利用者さんの上体が後ろに倒れやすくなるので気を付けましょう。車椅子でフットレストに足を乗せたまま、爪切りをするのもおすすめできません。作業中は、利用者さんも足元を見ようと前のめりになりがちです。車椅子ごと前へ転倒しないよう、足はフットレストから降ろし、地面に足がしっかりと着く姿勢にしておきましょう。

爪切りの実践:切り方編

体勢が整ったら、爪を切る作業に入ります。では、爪の切り方をご紹介していきましょう。

正しい手順

1:利用者さんに爪切りをすることを説明し、同意を得る
2:爪を切りやすい姿勢になるよう介護スタッフのポジションを決める
3:利用者さんの腕や下腿をしっかりと固定する
4:爪と皮膚の間に隙間ができるよう、爪の裏側の皮膚を手前に引きながら、爪切りの刃先を入れ込む
5:白い部分を1~2ミリ残して切る
6:巻き爪を防止するため、爪の両端を軽く切り落とした四角い形(スクエア型)に切る
7:ある程度まで切れたら、爪やすりで整える

爪切りをする際のポイント

高齢者の爪は、固く、もろい状態となっているケースが多いので、足浴後や入浴後がおすすめ。爪に水分が含まれているので、爪がやわらかく切りやすいです。また、巻き爪になりやすいという特徴もあるので、対策としてスクエア型に切っておくと良いでしょう。

正しい爪切りで安心安全なケアを提供しよう

トラブルを抱えやすい高齢者の爪。深刻な事態にならないよう、日常的なケアがとても大切です。介護スタッフとして安心・安全な爪切りができるよう、ポイントを押さえて実践していきましょう。また、利用者さんの爪の状態を知っておくことは非常に重要です。トラブルになる前にケアができるよう、日々の観察から心がけておきましょう。

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