ヒートショックとは?高齢者が気を付けたい場所や対処法
冬になると頻発するヒートショック。主に高齢者に対して注意喚起されますが、そもそもヒートショックとはどういった状態を指すのでしょうか?また、ヒートショックが発生しやすい場所として浴室がよく挙がりますが、実は他にもあります。そこで今回は、ヒートショックとはどういうことか、また発生しやすい場所や、万一ヒートショックになってしまった場合の対処法についても見ていきましょう。
目次
ヒートショックってどんなこと?
ヒートショックとは、急激な温度の変化で血圧が変動し、気を失ったり血管の病気などを引き起こしたりすることです。入浴中の死亡者数は年間に1万9,000人いると推計されています。
そして警察庁が発表している2021年中の交通事故による死者数は2,636人。これらのデータでわかるように、ヒートショックによる死亡事例は、交通事故よりも身近で起きやすく、ごく一部の方がなるものではないということです。
また消費者庁の発表によると、高齢者の家や居住施設の浴室での死亡者数は、不慮の溺死事故の約7割を占めており、高齢になるほど死亡者数が増加。死亡者数は、男性の方が女性よりも多く、高齢になるとその差はさらに広がります。
ヒートショックが疑われる事例は、11月から4月の冬~春の時期に多発し、ピークは1月です。
浴室だけではない!ヒートショックが発生しやすい場所
ヒートショックが発生しやすい場所は浴室だけだと勘違いしている方もいます。しかし、ヒートショックの原因は、暖かい所から寒い所に行くなどの急激な温度変化です。つまり、浴室に限ったことではありません。
ここでは、ヒートショックが発生しやすい場所について紹介します。
脱衣所
暖かい部屋から出てきた方が寒い脱衣所で服を脱ぐと、急激な温度差が生じます。この段階でヒートショックになる方も。
また、脱衣所や浴室ではつねに血圧が変動しています。脱衣所で服を脱ぐと血圧が上昇、次に浴槽に入ることで血圧が低下。洗い場で身体を洗うことで血圧が上昇、再び浴槽に入ることで血圧が低下、脱衣所で着替えることで血圧が上昇…といった具合です。
血圧の乱高下によって、体調を崩したり弱った血管に負担がかかり、血管の病気を誘発したりする危険が高まります。
浴室
次に浴室ですが、脱衣所のケースと同じように、血圧の乱高下を引き起こします。
特に、寒い脱衣所で血圧が上昇し、次に浴室も寒いことからさらに血圧が上昇。この状態で冷えた身体をしっかり温めようと熱めのお湯に浸かることで、急激な血圧低下が発生します。これによって身体に大きな負担がかかってしまうのです。
トイレ
トイレに暖房機器が設置されていない、もしくは環境が整っていないと、冬はとても寒い空間。また高齢者は早寝早起き、頻繁にトイレに行くなどの理由から、深夜や早朝にトイレに行く方は多いです。深夜や早朝は気温がさらに低下して、トイレが冷えています。
トイレに行き寒くて血圧上昇、トイレで排尿や排便することで腹圧がかかり、さらに血圧が上昇して体調を崩す場合も。特に男性の場合、立ったまま排尿すると腹圧がかかり、血圧が急上昇することもあります。
一般的に、排便後は血圧が急降下すると言われているため、トイレも血圧の変化が起きやすく危険なのです。
廊下
廊下でもヒートショックになりやすいと考えられます。暖かい部屋から冷えた廊下に出ることで、血圧が上昇。この温度差が身体の負担になることがあるのです。
どんな方がヒートショックになりやすい?
ヒートショックは65歳以上の高齢者がなりやすいといわれています。しかし、実は若い方も注意しなければなりません。どんな方がヒートショックになりやすいのか見ていきましょう。
以下のような方は、ヒートショックに注意してください。
- 65歳以上の方
- 生活習慣病の方(高血圧、糖尿病、動脈硬化)
- 睡眠時無呼吸症候群や不整脈がある方
- 肥満の方
- 1番風呂が好きな方
- 熱いお風呂が好きな方
- 飲酒後に入浴する方
- 30分以上の長湯が好きな方
この他にも、浴室に暖房機器がない方も気を付けましょう。
ヒートショックを起こさないためにできること
次に、ヒートショックを起こさないためにできることを紹介します。ヒートショックの主な原因は、気温の変化です。これを意識するだけで、簡単に対策できるでしょう。主な対策は以下のとおりです。
- 家の中で大きな温度差を作らない
- 脱衣所や浴室を暖める
- 入浴時間は10分~15分
- お風呂の温度を38度~40度以下にする
- お風呂から出る際はゆっくりと
- 飲酒後の入浴はしない
寒いと部屋のドアを閉めて暖房をつけますが、定期的にドアを開けて廊下に暖気がいくようにすると、家全体を暖めることができるでしょう。また、脱衣所や浴室に暖房機器がない場合、シャワーを出して浴室を暖め、その暖気を脱衣所にも行かせてから服を脱ぐと良いです。
他に若い家族がいる方であれば、家族が入浴して、暖かくなっている状態のときに入浴するものおすすめです。入浴時間が長すぎると体温が高くなりすぎたり、血圧が低下したりします。長湯せず10分~15分ほどでお風呂から出ましょう。
お風呂から出る際は、ゆっくり立ち上がることがポイントです。急に立ち上がると血圧が急降下します。血圧の低下によってめまいを起こし倒れてしまう危険があるため、手すりなどを使いながらゆっくり立ち上がることが大切です。
家族や利用者さんが入浴やトイレに行った際は、倒れていないか意識的にチェックすることも必要でしょう。
ヒートショックになってしまった!対処法は?
最後に、ヒートショックになってしまった場合の対処法を紹介します。
ヒートショックになったと感じた方は、ゆっくりその場に座るか横になりましょう。立ち上がると、めまいや立ちくらみによって転倒する危険があります。家族を呼べそうなら呼んでください。座ったり横になったりしても症状が改善しなければ、すぐに救急車を呼びましょう。
万一、利用者さんがヒートショックを起こした場合には、すぐに救急車を呼んでください。入浴中であれば、浴槽のお湯を抜いておきます。
消防に通報する際に、ヒートショックの可能性があることを伝えると、対処法を指示されることがあるため、その指示にしたがって対応してください。
ヒートショックは工夫すれば防げる可能性が高い!
冬になるとヒートショックによる事故が急増するため、高齢者は特に注意しなければなりません。介護施設などでは、ヒートショックを未然に防ぐための対策を行っているケースもありますが、在宅介護の場合、あらゆるところに危険が潜んでいることも。寒くなる前に、利用者さんにヒートショックの危険や対処法について説明しておきましょう。