冬の脱水症状に要注意!高齢者がなりやすい理由と対策
脱水症状と聞くと、夏場に気を付けなければならないことと思っていませんか?実は、冬の脱水症状にも注意する必要があります。また、高齢者は脱水症状を引き起こしやすいです。そこで今回は、冬の脱水症状とはどういったものなのか、また高齢者が脱水症状を引き起こす理由、対処法などを見ていきましょう。利用者さんの異変をすぐに察知できるように、脱水症の症状を介護スタッフ間で共有しておくことがおすすめです。
脱水症とはどんな病気?
まずは、脱水症について見ていきましょう。脱水症の定義やどんな症状が出るのかを紹介します。
脱水症とは?
そもそも人間の身体は体液で満たされており、大人は体重の60パーセント、高齢者は50パーセントを占めています。体液とは、血液・リンパ液・汗・消化液などのこと。脱水症は体液が失われて、体内の水分量が正常以下になった状態・生命維持活動に支障が出た状態です。
脱水症になると、生命維持活動に必要な栄養素や酸素を身体の中に取り込めなくなり、不要になった老廃物を体外に出すことができず、体温のコントロールができなくなることもあります。脱水症の症状が出た際に適切な治療ができないと、命に関わってくるでしょう。
どんな症状が出るの?
脱水症の主な症状としては、めまい・立ちくらみ・手足のしびれ・頭痛・吐き気などです。
中には、脳や心臓の血管に血栓が詰まって脳梗塞や心筋梗塞などを引き起こすこともあります。なぜ血栓ができるのかというと、体内の水分が減少して血液の濃度が上がり、血液が固まりやすくなるためです。
冬の脱水症について
夏に発生しやすい脱水症状ですが、冬にも注意喚起されます。どういったメカニズムで冬の脱水症状が引き起こされるのか見ていきましょう。主な原因は以下のとおりです。
- 空気の乾燥
- 水分補給量の低下
- こたつなどの暖房機器の使用
冬は気温の低下にともなって、湿度も低下します。実は湿度が低下すると、人間の水分量も低下していくのです。その反面、冬は夏に比べて汗をかきにくく、体内の水分が減っている実感がわかないもの。
また、飲み物を飲むことで身体を冷やしたくないという思いから、水分補給を控える方もいるでしょう。
そして冬は、寒さをやわらげるために暖房機器を使用します。こたつや電気カーペット、電気毛布などの暖房機器を長時間使っていると、体温調整がしづらくなり、体内の水分も減って脱水症状を引き起こすことがあるのです。
例えば、こたつで昼寝をして起きた際に、のどが渇いたという経験はありませんか?これはまさに、体内の水分が減っていることを意味します。冬の脱水症状は気付かないうちに起こりやすいといえるでしょう。
高齢者が脱水症を引き起こす理由
次に、高齢者が脱水症状を引き起こしやすい理由について紹介します。主な理由は4つです。
感覚機能の低下
高齢になると、感覚機能が低下します。感覚機能が低下すると、のどが渇いたと気付きにくくなることもあるでしょう。
また認知症の方の場合は、のどが渇いたことに気付かないばかりか、飲み物を飲んだかどうかや、そもそも飲み物という存在を忘れている可能性があるのです。
内臓機能の低下
高齢になると内臓機能も低下します。内臓が正しく機能すれば、体内の水分量をコントロールしたり、体内の塩分濃度を調整したりしますが、内臓機能の低下が起きると調整ができなくなることも。
つまり高齢者は、体内の水分バランスが崩れることで、脱水症状を引き起こしやすくなるのです。また、食べ物や飲み物を飲み込む機能である嚥下機能の低下によって、水分摂取量が減るケースもあります。
その他には、筋力の低下によって水分を蓄えられる筋肉量が減ることも、高齢者が脱水症状を引き起こす原因だと考えられています。
薬の影響
人間は年齢が上がるにつれて血圧が高くなる傾向にあり、高齢者の多くが降圧薬を飲んでいる可能性が高いです。降圧薬の中には、利尿作用を促すものを含んでいるものもあります。
健康のために飲んでいる降圧薬によって、体内に必要な塩分や水分を排出してしまい、脱水症状を引き起こすというわけです。
トイレの回数を減らすために飲むのを減らす
老化による機能低下や薬による影響以外に、意図的に水分を控えるという問題も隠れています。高齢になると、たとえ部屋の中でも移動が面倒になり、できるだけ座っていたり横になったりしたいもの。
ケガをしていたり、足腰に慢性痛があったりすると、さらに動きたくないと感じる高齢者の方も多いようです。「できるだけ移動を減らす→トイレの回数を減らす→水分補給を控える」というように、わざと飲む量を減らしている可能性もあります。
脱水症を引き起こさないための対処法
それでは、どうすれば冬の脱水症状を防げるのでしょうか?ここでは対処法を紹介します。
定期的に水分補給
基本は定期的に水分補給することです。先ほども説明したように、冬はのどの渇きを感じにくく、高齢者は感覚が鈍くなっています。介護施設などで脱水症状の予防を行うのであれば、定期的に飲み物を飲む時間を設けたり声かけしたりすると良いでしょう。
1日に必要な水分摂取量は1リットルや1.5リットルと言われ、飲み物以外に果物やゼリーなどからも摂取できます。ただし、カフェインが多い緑茶・コーヒー・アルコール・糖質が多いジュースなどは避けたほうが良いでしょう。
部屋の温度や湿度調整
湿度の低下によって体内の水分が減るため、部屋の温度や湿度の管理が必要です。温湿度計で室内の環境を整え、乾燥しているようであれば加湿器を使ったり、濡れたタオルを干したりしましょう。
冬は乾燥しやすいので、湿度管理をしっかり行えば、インフルエンザなどのウイルス対策にもなります。
衣類の調整
衣類の調整も脱水症状を防ぐ対策の1つです。暖房機器がついた部屋にいるにもかかわらず「寒いから」と着込んでいると、汗をかいて身体の水分が出ていきます。着脱しやすい衣類を用いて、体温をコントロールしましょう。
万一、汗をかいている場合は、着替えて水分補給するように促してください。
脱水症状が見られたら…対処法を知っておこう
最後に、万一脱水症状を起こした利用者さんがいた場合の対処法を紹介します。いざということに慌てないために、しっかり理解しておきましょう。
軽度の場合
軽度の脱水症状では、めまい・立ちくらみ・手足のしびれ・発汗などが表れます。意識があり発熱もないようであれば、涼しい場所に移動し、安静にさせましょう。できれば水分や塩分補給をしてください。
中度の場合
脱水症状の中度になると、頭痛・嘔吐・倦怠感・発熱・判断力の低下などが見られます。この場合も軽度の脱水症状と同じように、涼しい場所で安静にし、水分や塩分補給させましょう。
症状が改善しない場合や水分などを自力で摂れない状態であれば、すぐに医師に相談してください。
重度の場合
脱水症状が重度になると、意識障害・けいれん・発熱・体温が高いのに汗が出ないなどの症状が出ます。
この場合は、救急車を呼ぶ・病院を受診して、判断を仰ぎましょう。
冬の脱水症状は気付かないうちにやってくる
冬の脱水症状は、気付かないうちに起こります。気付いたときには、脱水症状中度や重度になっているかもしれません。利用者さんが脱水症状を起こさないように、こまめな水分補給や室温管理、体温調整をしっかり行ってください。万一脱水症状が見られた場合は、迅速に適切な対応ができるように、フローチャートなどを作っておくと良いでしょう。