【認知症の徘徊対策・対応編】利用者さんが行方不明になったら即するべきこと4つ
認知症の方の行方不明事故は、徘徊対策をしていても完全に防ぐことは難しいもの。利用者さんの行方不明に直面したとき、どのように対応していいか分からないという方もいらっしゃることでしょう。そこで今回は、利用者さんが行方不明になったら即やるべき対応について詳しく解説しました。併せて、認知症の方が徘徊してしまう理由にも触れています。行方不明事故が発生したらどうすればいいのか知りたい方は、ぜひ一読ください。
目次
認知症の利用者さんが徘徊してしまう理由
認知症の方は、外へ出た際に徘徊してしまい、行方不明になるケースが多いです。では、なぜウロウロと歩き回ってしまうのか、まずは理由をチェックしていきましょう。
居場所を探していた
記憶障害が進むと、施設にいる介護スタッフや、ほかの利用者さんの顔を忘れてしまいます。すると「知らない人が家にいる」と不安になり、安心できる場所を求めて、外へ出てしまうのです。
さらに、認知症になると感情のコントロールが難しくなり、あらゆることに不満を持ってしまいます。「こんな場所では暮らせない」と、施設を抜け出し居場所を求めて徘徊しているケースもあるようです。
帰宅したかった
見当識障害により施設にいることを忘れて「帰宅しなきゃ」と、どこかへ帰ろうとする動きも、認知症の方によくある行動のひとつです。また、歳をとってからの記憶が抜けて、自分は若いと勘違いし、実家へ帰ろうとする認知症の方もいます。
しかし、外へ出ても昔の記憶とは街並みが変わっている、そもそも実家がなくなっていることも多く、徘徊に至ってしまうようです。
なぜここにいるのか分からなくなってしまった
目的があって外出をしても、記憶障害や見当識障害により道順や目印を忘れてしまった、そもそも自分がどこにいるのか忘れてしまう事態も起こりがちです。
このような症状は屋外だけでなく、施設内でも出現します。トイレの場所が分からなくなり、廊下や食堂をウロウロしてしまう、排泄したかったことすら忘れてしまうケースもあるので注意しておきましょう。
過去の習慣が影響している
働いていたころの記憶がよみがえり、朝になるとスーツを着て、出勤しようと外へ出てしまうこともあります。今の生活状況を忘れ、過去の記憶や習慣で行動してしまい、結果徘徊になるパターンも認知症の方によく見られる動きです。
利用者さんが行方不明になったら!即するべきこと4つ
利用者さんが行方不明になってしまったら、どのような行動をとるべきなのでしょうか。ここでは初期対応としてするべき4つの行動をご紹介します。
まずは施設内を探す
認知症の利用者さんは施設内で迷子になり徘徊していることもあるため、まずは施設内をくまなく捜索します。介護スタッフだけでなく、あらゆるスタッフに声をかけて、10~20分を目安に探していきましょう。敷地外に出てしまっていることも想定して、できるだけ時間をかけないことが大切です。
つぎに敷地内を探す
施設内で見つからないときは、探す範囲を敷地内に広げます。ここでも捜索には時間をかけず、探すエリアを分担しながら効率よく行いましょう。捜索時間の目安は10分です。
それでも見つからない場合は、ご家族、施設責任者に連絡し、警察へ捜索願を出す
敷地内で見つからないときは、ご家族、施設の責任者に連絡し、警察に捜索願いを出します。
警察への届出は大ごとのように感じるかもしれませんが、施設スタッフだけで長時間探す行動はNG。徘徊している利用者さんが事故に遭った場合「不祥事を隠すために、警察への連絡が遅れた」とご家族に考えられてしまう可能性があるからです。
外に出てしまったと分かったら利用者さんをなるべく早く見つけられるよう、迅速な初期対応を心がけましょう。
捜索に協力してくれる外部機関にも依頼する
行方不明になった利用者さんを探す手段は、警察だけに限りません。自治体に連絡し、防災無線で迷い人を呼びかけてもらう、徘徊などのSOSを共有するネットワークを利用するなどの手段があります。さらに地域包括支援センターに連絡すれば、管轄内の事業所へ行方不明になった利用者さんの情報をすばやく広げてもらうことも可能です。
そのほか自治会、町内会、タクシー会社、学校にも協力を依頼することで、目撃情報などが得られやすくなります。利用者さんの安全を第一に考え、素早く捜索体制を整える行動をとりましょう。
徘徊発生時の初期対応は細かくルール化しておくと安心
利用者さんの行方不明が発覚すれば、誰もが動揺してしまうものです。探しに行きたいけれど、利用者さんはほかにもたくさんいるため、通常業務をおろそかにすることはできません。しかし、徘徊している利用者さんの安全を考えれば、迅速かつ的確な初期対応が重要になります。したがって、徘徊発生時の初期対応は細かくルール化しておくのがおすすめです。
- 通常業務をするスタッフ、探しに行くスタッフはどのような振り分けにするのか
- 施設内を効率よく探せるよう、分担エリアを決めておく
- 捜索時間の設定
- どこに連絡し協力を仰ぐのか、施設外、外部機関など、連絡先はまとめておく
など、分かりやすい行動指針を決めておきましょう。ルールが決まっていれば、新人介護スタッフでも動きやすくなるので、職員による対応スピードの差も出にくくなります。
認知症の徘徊対策は「いないことに素早く気づく体制づくり」も大切
認知症の徘徊に迅速に対応するためには、利用者さんの不在にいち早く気づく体制づくりも重要です。いつ施設を出たのかが不明だと、どこまで遠くに行っているのか検討がつきません。日頃から徘徊リスクのある利用者さんをピックアップし、制度の利用(徘徊SOS ネットワークなど)やハード面の強化(GPSを靴に取り付ける、玄関のセキュリティを強化するなど)を積極的に検討していきましょう。
認知症の徘徊対策は発生後の初期対応がカギ!
認知症の徘徊対策は、発生後の初期対応が大切です。歩ける方なら、わずかな時間で遠くまで徘徊してしまう可能性も。不在に気づいたら、すぐに捜索体制を取れるよう、施設でのルールを決めておくと安心でしょう。行方不明は施設の監督責任が問われる事故のひとつです。迅速な対応こそが利用者さんの安全につながることを認識して動いてくださいね。