もし餅が喉に詰まったら?高齢者を守るための対処法

お正月に欠かせない食べ物が餅です。皆さんの中にも、「お雑煮を食べないと新年を迎えた気がしない!」という方がいるのではないでしょうか。しかし、餅を食べるときに気を付けたいのが、窒息などの事故です。特にお正月シーズンには、高齢者が餅を喉に詰まらせた、というニュースをよく耳にします。そこで今回は、高齢者が餅を喉に詰まらせやすい理由を解説するとともに、餅が喉に詰まったらどうすればいいのかをご紹介しましょう

高齢者が餅を喉に詰まらせやすい理由は?

高齢者が餅を喉に詰まらせやすい主な理由として、以下の3つが挙げられます。原因をしっかりと理解したうえで、詰まらせないための対策を考えましょう。

唾液が少ない

高齢になると、唾液を分泌する唾液腺が小さくなると言われています。唾液腺が小さくなると唾液の分泌量が減ってしまうのです。唾液の量が少ないと、食べ物を喉の奥へとスムーズに運ぶことができません。特に餅は粘性が強いので、喉に餅が張りついてしまうことがあるのです。

噛む力が弱い

噛む力が弱いことも原因のひとつです。噛む力が弱いと、口の中で食べ物を細かくして、飲み込みやすい状態にすることができなくなります。特に餅は噛み切ることが難しい食品なので、大きなまま飲み込んでしまうと、喉に詰まりやすくなるのです。

嚥下反射がうまくできない

飲み込んだ食べ物が間違って気管に行ってしまわないように、反射的に気管にフタをする機能を「嚥下反射」と呼びます。嚥下反射は、口から喉にかけての筋肉による微妙な調整が重要です。しかし、高齢になると筋肉の調整が難しくなり、嚥下反射のタイミングが合わなくなります。そうなると餅などの食べ物を誤嚥してしまい、窒息しやすくなるのです。

もし餅が喉に詰まったら?対処法を紹介

餅が喉に詰まったら、慌てずに冷静な対処をすることが重要です。利用者さんに万が一の事態が起きたときにパニックにならないよう、餅が喉に詰まったらどうすればいいか、順を追って解説します。

まずは119番

餅が喉に詰まったら、迷わず119番しましょう。自分たちで餅を吐き出させようとしても、うまくいかないかもしれません。そのため、救急隊員にできるだけ早く来てもらい、適切な処置を行ってもらうことが大切です。利用者さんが餅を喉に詰まらせたときは、手分けして、処置を開始するのと同時に119番に通報するようにしましょう。

咳込ませて自力で吐かせる

もし、餅が喉に詰まったら、ついついパニックになってしまいがち。でも、意識がある場合は咳をするように促し、自力で吐き出させるようにしましょう。仮に餅が喉に詰まったとしても、咳ができるということは、完全には詰まっていない状態です。気管に少しでも空気が通る道が開いているので、咳をすることで出てくるケースもあります。利用者さんの中には、恥ずかしいからと、トイレに行ったり、その場を離れたりして咳込もうとする方もいるかもしれません。そのときにも必ず誰かが付いていき、様子を見守ってください。

頭を下げ、背中を叩く

咳ができない、今まで咳をしていたのに急にできなくなった、という場合は、完全に餅が喉に詰まった状態です。このように、完全に餅が喉に詰まったら、息ができなくなってしまうので、事態は一刻を争います。背中を強く叩いて吐き出させましょう。気管の位置を真っ逆さまにするイメージで、頭をぐっと下げて肩甲骨の間を強く5回叩きます。このとき、何人かで協力して、利用者さんを逆さまに近い状態にして処置することが大切です。

ハイムリッヒ法を試す

利用者さんが全く咳をせず、弱々しくなった場合は、「ハイムリッヒ法」を試してみましょう。利用者さんの背後から両脇に腕を通し羽交い絞めにして自分の胸を相手の体へとしっかり密着させます。次に片方の手で握りこぶしを作って、親指を相手のみぞおちの中間付近へと押し当てましょう。もう片方の手で握りこぶしをしっかり握り、斜め上へと引き上げてください。5回から10回引き上げたら床に寝かせ、口の中をチェック。餅が見えたら箸などで除去します。また、指を突っ込んで餅を取ろうしてはいけません。むやみに指を突っ込むと、せっかく出てきた餅が再び喉の奥へと押し込まれ、完全に気管を塞いでしまう、というケースもあります。

心臓マッサージも視野に入れる

完全に意識を失い、ハイムリッヒ法でも餅が出てこない場合は、心臓マッサージをしてください。うろ覚えでもかまいません、ためらわずに、手で胸の真ん中付近を5センチほどへこませるくらいの力で押します。1秒間に1回以上が目安です。心臓マッサージは、1分間で120回ぐらいのペースで押すと蘇生率が高いといわれています。一生懸命マッサージしましょう。
映画「崖の上のポニョ」の主題歌が、ちょうど1分間に120回心臓マッサージするのと同じテンポだといわれています。主題歌を心の中で歌いながらマッサージするのもよいかもしれません。

餅を喉に詰まらせないための対策

餅が喉に詰まったらどうすればいいのかを覚えておくのと同じくらい、餅を喉に詰まらせない対策を講じることも重要です。具体的にはどうすればいいのかを紹介しましょう。

あらかじめ小さく切っておく

餅をあらかじめ小さく切っておきましょう。具体的には、チョコレートひとかけらくらいの大きさが理想だと言われています。料理に使用するときも、小さめサイズだと安心です。

食べる前に水分をしっかり摂ってもらう

餅を食べる前に、汁物やお茶を飲んで口の中を湿らせておくと、餅がくっつきにくくなります。餅を食べるときは、こまめにお茶や汁物を飲んでもらうよう促しましょう。

納豆や大根おろしと一緒に食べさせる

納豆や大根おろしを餅の表面にまぶしておけば、付着力が弱まり、喉に詰まりにくくなります。お雑煮の場合は、汁に大根おろしを加えてみぞれ汁にするのもよいでしょう。

食事に集中してもらう

餅を食べているときに、会話に夢中になったり歩き回ったりすると、噛むことがおろそかになってしまいがち。また、テレビを見ながら食べると、画面に意識が集中してしまい、よく噛まずに飲み込んでしまいます。餅を食べるときは食事に集中するように注意を促しましょう。また、しっかりと見守っておくことも大切です。

餅を美味しく安全に食べてもらう工夫を

お正月に欠かせない餅ですが、利用者さんに食べさせるときには細心の注意が必要です。餅を喉に詰まらせて、取り返しのつかない事態が起きないよう、万全の対策を取りましょう。また、万が一餅が喉に詰まったら、慌てず冷静に、記事に書いてある対処法を試してください。安心・安全な状態で、餅を美味しく食べてもらうようにしましょう。

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