老人ホームに多い入居者同士のトラブル!介護職がとるべき対処法とは

さまざまな利用者さんが集まる老人ホームにおいて、入居者同士のトラブルはつきもの。ときには、ほんの些細な出来事が大きな事件に発展することもあります。そして当事者同士での解決が難しい場合には、介護スタッフが間に入り、冷静に対処しなければなりません。そこで今回は、そんな入居者間のトラブルについて主な事例と対処方法を解説します。いざトラブルに直面したときに役立つように、今から解決策を学んでおきましょう。

老人ホームで起こりやすい入居者同士のトラブルとは

まずは老人ホームで多い入居者同士のトラブルにはどんなものがあるのか、具体例を見ていきましょう。

騒音によるトラブル

老人ホームで日常的に起こるのが、テレビやラジオの騒音トラブル。高齢の利用者さんの中には耳が遠い方も多く、無意識に音量を大きくしすぎてしまうのです。耳が遠いと相手の声はもちろん、自分の声も聞こえにくくなり、自然と大声で話すようになります。そのうち本人の気づかないところで周囲の利用者さんに迷惑がられたり、反感を買ったりするようになるでしょう。その一方で、日常的な騒音に悩まされて強いストレスを抱えてしまう利用者さんも出てきてしまうのです。

周りの利用者さんやスタッフとの相性によるトラブル

さまざまな利用者さんが集まる老人ホームには、自分と価値観の合わない相手に対して攻撃的な態度をとる方もいます。具体的には無視したり、陰で悪口を言ったり、意地悪をしたりなどです。中には行為がエスカレートして、口論になってしまうこともあります。

恋愛感情によるトラブル

年の近い高齢者が集まるため、入居者同士で恋愛関係になる方もいます。関係が良好な場合には問題ないのですが、悪化するとトラブルに発展することも。中には、相手への強い執着や嫉妬心から、ストーカー行為に走ってしまう方もいます。

認知症の利用者さんとのトラブル

老人ホームでは、認知症特有の症状によって入居者同士のトラブルが起こることがあります。もちろん症状には個人差がありますが、周りの利用者さんや介護スタッフに対して暴言や暴力をふるってしまう方も。病気によるものなので仕方ないとはいえ、周りの入居者家族からは「認知症の方とは距離を取ってほしい」と要望が出ることもあります。

金銭トラブル

老人ホーム、特に特別養護老人ホームでは、利用者さんの事故防止のために鍵をつけていない施設が多いです。そのため、貴重品が紛失すると別の利用者さんによる盗難を疑う方も少なくありません。しかし実際には、持ち主が認知症を発症していて盗まれたと思い込んでいたり、無意識に他の利用者さんのものを盗んでしまったりというのも、よくある話。お金やモノに執着の強い利用者さんに多いトラブルです。

老人ホームで入居者同士のトラブルが起こりやすい理由

老人ホームでさまざまな入居者同士のトラブルが起こりやすい原因としては、高齢者が多く集まる施設であることがまず挙げられるでしょう。

人は年をとるにつれて頑固になりやすいといわれています。それは、これまでに多くの経験をし、たくさんの知識を得たという自負があるからかもしれません。そしてどんどん価値観が凝り固まってしまうと、「自分の意見こそが正しい」という思考になりやすくなります。

そんな年齢の人々が多く集まっているとしたら、さまざまなトラブルが起こってしまうのも無理はないでしょう。そのうえ、認知症や加齢性難聴など、身体的な不自由もあいまって、ストレスや不満が生まれやすい状況であるともいえます。

入居者同士のトラブルが起こったときの対処法は?

老人ホームで入居者同士のトラブルが起こってしまったとき、スタッフの迅速かつ適切な対応が解決の糸口となります。以下に、主な対処法をご紹介しましょう。

事実確認をする

まずは、当事者たちへ聞き込みを行い、トラブルの状況をできるだけ明確化しましょう。その際には、当事者同士が接触することのないよう、スタッフが間に入ってそれぞれから話を聞きます。一方的な決めつけはせず、中立的な立場で聞き込みすることが肝心です。

施設内でトラブルの報告、ルールの周知を行う

他のスタッフともトラブル内容を共有し、再発防止に努めます。入居者へ施設内ルールを再度周知することも必要でしょう。

必要ならご家族にも相談する

トラブルは大ごとになる前に解決するのが一番ですが、なかなか収束しない場合には、ご家族に協力を求めることもあります。そうなったときのためにも、トラブル内容についてしっかりと調査し、原因や状況を事細かに記録しておくことが大切です。

居住スペースを分ける

なかなかトラブルが解決しそうにないときは、当事者の部屋やフロアを離すことも検討しましょう。また、老人ホームの施設内でレクリエーションをするときや、食事の席でも遠ざけるようにして、徹底的に接触の機会を減らすよう配慮します。

トラブルが解決しないときは住み替えを提案することも

もしどうしても状況が改善しそうにない場合には、当事者となった方へ住み替えを検討していただくよう提案・対応することも1つの方法です。ただし、住む環境が変わることで認知症の進行が早まったり、強いストレスを感じたりする方もいます。あくまで住み替えは最後の手段です。利用者さんの家族ともしっかりと相談して、慎重に決めるようにしましょう。

入居者同士のトラブルを未然に防ぐ方法は?

老人ホームで入居者同士のトラブルをゼロにすることはかなり難しいでしょう。ただ、少しでも軽減できるように普段からできる対策はあります。以下のような方法をぜひ試してみましょう。

家族とのコミュニケーションをしっかりとってもらう

利用者さんがトラブルを起こす一番の原因は、孤独感やストレスだといいます。住み慣れた自宅を離れ、他人との共同生活に不安感を募らせる方もいるでしょう。
そんな気持ちに寄り添い、少しでも安心してもらえるように、普段から家族とコミュニケーションをとるよう促してあげるといいでしょう。また、トラブルが起こりそうと感じたら、すぐにご家族へお伝えすることも大切です。

利用者さんの性格や好き嫌いはスタッフ間で共有する

利用者さんの性格や相性などの情報は、スタッフ間でしっかりと共有しておきましょう。そうすれば部屋の配置決め、食事の席決めの際にも配慮できます。

金品などの貴重品類はなるべく本人以外に管理してもらう

トラブルの火種となりやすい貴重品類は、できるだけご家族に管理してもらうようにお伝えしましょう。もし本人の希望により施設内に持ち込むことになった場合には、施設側で管理すると安心です。

入居者同士のトラブル解決には家族の協力が必要!

老人ホームでは、入居者同士のトラブルは日常茶飯事であることが多いもの。完全に防止することは難しいですが、日頃から家族と密に連携し、利用者さんの心のケアをしてあげることで未然に防げる場合もあります。そのためにも、普段からスタッフ同士で協力しやすい環境となるように心がけておきましょう。

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