介護スピーチロックって何?知っておきたい言い回しをチェック
介護の現場では、介護スタッフが入居者さんとのやり取りの中でさまざまな声かけをします。入居者さんの介護シーンや日常会話など、特に気に留めることもなく声かけをしている方も多いでしょう。しかし、いつもの何気ない声かけが、実は介護現場で問題視されている“スピーチロック”になっているかもしれません。今回は介護スピーチロックをテーマに、事例を挙げて注意が必要な理由を考えていきましょう。
スピーチロックとは
スピーチロックとは、声かけによって身体的・精神的に行動を抑制すること。“言葉の拘束”ともいわれるスピーチロックは、介護の現場で起きやすいとされています。
たとえば人手不足の老人ホームで、入居者さんに対して「ちょっと待って」と声かけをするとしましょう。入居者さんは「どれくらい待てばいいのだろう」とひたすらその場で待つことになります。時には待つ理由がわからず、困惑することもあるかもしれません。このような声かけは入居者さんの行動を抑制することにつながり、“介護現場で起こるスピーチロック”として問題視されています。
介護施設で起こりやすい…スピーチロックの具体事例
何かと忙しく過ごす介護スタッフの中には、無意識のうちにスピーチロックをしてしまっている方もいるでしょう。ここでは介護施設で起こりやすいスピーチロックの事例と、言い換えをチェックしていきます。
スピーチロックの例 | 言い換えの例 |
---|---|
ちょっと待って | ~しているのであと〇分待ってもらえますか |
座って | ~すると危ないので、座っていてもらえますか |
動かないで | 一緒に〇〇へ行くので、待っていてもらえますか |
ダメ!やめて! | どうしましたか |
どうしてそんなことするの? | 危ないので、次から一緒に○○しましょう |
スピーチロックを防ぐポイントは、やわらかい言葉と気持ちをていねいに伝えること。入居者さんの気持ちをふまえたうえで、こちらの要望だけを伝える形にならないように気を付けましょう。
言い換えのポイント!依頼形やクッション言葉を活用
スピーチロックの言い換えにおいては、否定形ではなく依頼形で伝えることが大切です。依頼する言い方であれば、入居者さんを尊重しながら自身の要望を伝えられるでしょう。
また、やわらかい表現にするには“クッション言葉”を挟むと効果的です。たとえば、お願いするときは「お手数をおかけしますが」、お願いを断るときは「せっかくですが」など。一言挟むだけでいつもの言い回しの印象が変わります。
「ちょっと」や「少し」を使う場合は、曖昧さが入居者さんを不安にさせることも。「あと〇分」のように具体的な目安を伝えて、入居者さんの不安を取り除きましょう。
スピーチロックが入居者さんに与える影響とは
スピーチロックが入居者さんに与える影響は、行動意欲の低下や要介護度の悪化などです。
スピーチロックによってやりたいことを我慢させたり、長時間待たせたりすると、入居者さんに「拒絶された」というネガティブな感情が生まれやすくなります。その結果、入居者さんは意思表示することをやめ、自分から行動する気が失われることも。行動意欲の低下は筋肉を動かす機会の減少につながるので、入居者さんの身体の衰えが加速し、できることが減っていく…そうして要介護度が悪化する、という可能性もあるでしょう。
また、認知症の入居者さんの場合、短期の記憶能力は低下しているものの、自身の感情は強く残る傾向があります。スピーチロックによって「拒絶された」という感情がストレスになると、症状がエスカレートする可能性もあるので注意が必要です。
スピーチロック回避のカギは思いやり
介護の現場においては、言葉遣いがコミュニケーションの基本です。どんな言葉をどのような言い回しで入居者さんに伝えるか、思いやりを持って向き合うことがスピーチロックの回避につながります。「〇〇をしてほしいと伝えるにはどんな言い回しがいいか?」「入居者さんは今何を伝えようとしているか?」など、入居者さんと介護スタッフ、両方の立場から考えて、スピーチロックを避けつつ適切な言い回しを探しましょう。