どうする?介護施設利用者さんからの暴言…介護職ができる対処方法は
介護職は、多くの施設利用者さんと接するお仕事。「利用者さんとの関係に悩みを抱えている…」という介護スタッフも、実は少なくないようです。そこで気になるのが、もしものときの対応方法。施設の利用者さんや入居者さん、そのご家族などから、暴言やハラスメントを受けた際は、どう行動したら良いのでしょうか。介護現場における利用者さんからの暴言・暴力の実情や、その対処方法をご紹介していきます。
施設利用者さんから暴言や暴力を受けるケースがある?!例を紹介
介護スタッフとして働いていると、さまざまなことを経験します。良いことばかりでなく、暴言や暴力を受けたことがある、といったケースも…。どのような例があるのかご紹介します。
精神的な暴力
利用者さんからのハラスメントのひとつが精神的な暴力です。怒鳴られる、奇声を発せられる、批判的なことを言われる、理不尽な要求に応えることを求められる、といった例があります。
身体的な暴力
精神的に苦痛を受けるだけでなく、身体的に暴力を受けるケースも。殴る、蹴る、唾を吐く、物を投げられる、衣服を破られる、刃物を向けられる、といった経験をしたケースもあるようです。
セクハラも問題に
暴言や暴力だけでなく、セクハラも問題となっています。介護スタッフが手や体を執拗に触られる、わいせつな言葉を投げかけられる、自宅などの個人情報を聞かれる、ストーカー行為をされる、といったケースです。
どれくらいの介護職が悩んでいるの?
実際に利用者さんからの精神的・身体的な暴力やセクハラに悩んでいる介護スタッフはどれくらいいるのでしょうか。
厚生労働省が平成31年に発表した「介護現場におけるハラスメントに関する調査研究報告書」によると、少なくないことが分かりました。「これまでに施設利用者さんからハラスメントを受けた経験がある」と回答した介護スタッフは、最も割合の高い介護老人福祉施設では実に7割以上を占めたのです。回答は施設形態により異なり、最も少ない割合だったのは、訪問リハビリテーションの約4割でした。
▼厚生労働省「介護現場におけるハラスメントに関する調査研究報告書」
https://www.mhlw.go.jp/content/12305000/000947359.pdf
暴言や暴力の原因はなに?
利用者さんから暴言や暴力、セクハラなどがあるのは、なぜでしょうか。介護スタッフが利用者さんを不機嫌にさせるキッカケを作ってしまったケースもありますが、利用者さんご自身に原因があることもあります。
たとえば、認知症の利用者さんであれば、感情のコントロールが効かないことが原因のひとつ。幻覚などで錯乱し、周囲へ暴力をふるってしまうこともあるようです。体の不調が原因となるケースも。便秘や体が痛いといったストレスが重なり、「なぜ気付いてもらえないのか」「どうにかならないのか」といった感情から攻撃的になってしまうことがあるのです。
そのほか、思い通りに手先や体を動かせない、介護サービスの内容が不満、などがイライラの原因となってしまうケースもあります。利用者さん自身は、介護スタッフに対して暴言や暴力で苦痛を与えている、という自覚がない場合もあるのです。
暴言や暴力を受けたらこんな対応をしよう
介護スタッフは、利用者さんの要求や行動をすべて受け入れないといけないわけではありません。もしも利用者さんから精神的・身体的な暴力やセクハラがあれば、次のように対応しましょう。
<精神的・身体的な暴力やセクハラへの対処方法>
- 利用者さんの体調や状況を確認
- 落ち着いて冷静になる
- 距離をとる
- 意思表示する
- ひとりで対応しないことが大切
- 自身で解決できない時は相談が正解
なにかあれば、まずは利用者さんの体調や様子を確認し、不快な状態を作っている原因がないか探ります。話ができるようであれば、理由を聞いてみるのもひとつです。介護スタッフは落ち着くことも大切。怒鳴り返したり怒ったりせず、冷静でいるよう心がけ、物理的に少し距離を取るのも良いでしょう。利用者さんに転倒のなどの恐れがなければ、一旦その場を離れて様子を伺うことも選択肢としてありです。
また、嫌だと思ったことに対して意思表示するのも重要。利用者さんが「これくらい平気だろう」と重要視していないケースもありますし、自覚がないケースもあるようです。嫌だと思っている旨を伝えることは、再発防止につながります。ただし、利用者さんへの伝え方や、タイミングよっては相手を激昂させてしまうことも…。上司に相談して同席してもらうなど、ひとりで対応しないこともポイントです。
利用者さんからの暴言や暴力、セクハラは、職場全体で対応することが重要です。それでも解決に至らない場合は、総合労働相談コーナーや自治体の相談窓口に頼ることも検討しましょう。
ひとりで解決しようとせず周囲に相談を
施設利用者さんとの相性がイマイチ、介助やお世話がうまくいかない、といった経験は少なからずあるものです。しかし、利用者さんからの精神的・身体的な暴力やセクハラは容認してはなりません。その場は冷静な対応を心がけ、必要に応じて上司や職場に相談してください。ひとりで抱え込まず、周囲の協力を得ながら解決を目指しましょう。