摂食嚥下の5期モデルとは?介護職が知っておきたい食べるメカニズム
今回のテーマは、食べ物を認識して飲み込むまでを意味する“摂食嚥下”です。高齢になると、咀嚼(そしゃく)能力や味覚、唾液の分泌量の低下などさまざまなトラブルと向き合うシーンが増えてくるでしょう。介護施設で利用者さんの食事をサポートする際は、安全面に配慮するための知識、“摂食嚥下の5期モデル”について理解を深める必要があります。本記事では5つの段階とそれぞれの機能を解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
【摂食嚥下の5期モデル/その1】先行期
先行期は“食べ物を認識し、口に入れる段階”です。食べ物を認識するときには、視覚・触覚・嗅覚などの感覚が働きます。そこで「食べられる」と判断した後、食べ物を口に入れる動作へ移るのです。
先行期には、認知機能や食欲、心理的要因、上肢の運動機能などが影響します。そのため、“食べ物を認識する”“食べ始める”という行為は、認知機能の低下や食欲不振のある利用者さんにとっては難しいこともあるでしょう。食べ物を認識しやすくする工夫を凝らしたり、上肢機能へのアプローチを考えたり、利用者さん一人ひとりの状態に合わせた解決策を探すことが大切です。
【摂食嚥下の5期モデル/その2】準備期
準備期は“食べ物を咀嚼する段階”です。咀嚼は食べ物を噛む以外にも重要な機能を兼ね備えており、大きく分けて3つの役割を担っています。ここでは、準備期の“食塊形成”“消化吸収促進作用”“味覚伝達作用”について解説しましょう。
食塊形成
咀嚼により食べ物を粉砕し、唾液と混ぜて飲み込みやすい形へ変化させる機能。誤嚥(ごえん)や窒息のリスクを減らすために欠かせません。
消化吸収促進作用
咀嚼により食べ物を消化しやすいように粉砕し、唾液や胃液の分泌を促して消化吸収をサポートする機能です。きちんと咀嚼して食べ物を粉砕することは、消化不良や小腸閉塞などのリスク低減につながります。
味覚伝達作用
食べ物を咀嚼することで味覚を感じやすくする機能。舌だけでなく、歯と骨の間にある組織で食感を感じさせることも含まれます。食べ物の味や食感を通じて食事を楽しむために欠かせない機能です。
【摂食嚥下の5期モデル/その3】口腔期
口腔期は“粉砕した食べ物をのどへ送り込む段階”です。準備期で飲み込みやすい状態にした食べ物を、舌や唇、頬を使ってのどへ送り込みます。
口腔期で重要な役割を担うのが舌です。舌の機能が低下している利用者さんの場合、食べ物をスムーズにのどへ送り込むことができず、誤嚥や窒息につながる可能性があります。食べるときに姿勢を傾ける、舌の筋力を鍛えるなど、利用者さんの状態に合わせた対策を考えましょう。
【摂食嚥下の5期モデル/その4】咽頭期
咽頭期は“粉砕した食べ物をのどから食道へ送り込む段階”です。食べ物を飲み込むための仕組みは嚥下反射と呼ばれ、自身でコントロールできるのはごく一部と言われています。そのため、嚥下反射やその他の機能が低下している利用者さんにはリハビリを行い、機能回復が十分でなければ食べ物にとろみをつけるなどの工夫が必要です。
【摂食嚥下の5期モデル/その5】食道期
食道期は“粉砕した食べ物を食道から胃へ送り込む段階”です。食べ物が食道へ送り込まれたあとは、重力と食道のぜんどう運動により胃へ落ちていきます。
重力のかかり方に影響が出るので、食後30分程度は利用者さんが横にならないよう見守りましょう。高齢の利用者さんにとっては、食べ物の逆流によりむかつきを感じるだけでなく、誤嚥性肺炎につながる可能性もあります。
摂食嚥下の5期モデルを利用者さんのサポートに役立てよう
摂食嚥下の5期モデルは、高齢の利用者さんにとっての“食べる楽しみ”を長く維持するために必要な知識です。嚥下の動作を構成するのは全部で5段階。食べ物を認識する先行期、咀嚼する準備期、のどへ送り込む口腔期、食道へ送り込む咽頭期、胃へ送り込む食道期のそれぞれの特徴をふまえたうえで、利用者さんのサポートに努めましょう。