老人ホームで「ペット可」など動物との関わりが増えている理由
老人ホームなどにおいて、ペット可の施設が増えていることをご存知ですか?ペットと過ごすことで、利用者さんにさまざまなメリットがあると考えられているためです。それに伴い、動物との関わりを持つアニマルセラピーを導入する施設もあります。そこで今回は、老人ホームで「ペット可」が増えている理由や、ペットとの入居が可能になることで考えられるトラブルなどについて見ていきましょう。
老人ホームでペット可が増えている?!
動物とふれあうことで、利用者さんの生きる活力が生まれる、身体機能が回復に向かうことがあるとして、老人ホームでペットの同伴入居が可能な施設が増えています。また、ペットと暮らすことに限らず、レクリエーションの一環としてアニマルセラピーを導入する施設も。
まずは、老人ホームでペット可の施設が増えていることについて見ていきましょう。ある調査では、2020年と2022年を比べた場合、老人ホームでペット可の施設が約6倍に増えていることがわかりました。
老人ホームのペット可の施設は、東京や大阪など都市圏に多いことが特徴です。この背景には、ペットの飼育頭数自体が多いという点が理由にあげられます。
「高齢者×ペット」でアニマルセラピー?
次に、アニマルセラピーについて見ていきましょう。アニマルセラピーとは、動物とふれあうことで精神を落ち着かせ、身体機能を向上させる効果が期待できる療法のことです。
動物の温もりや鼓動を感じることでリラックスしたり、「動物をお世話しなければ」という責任感によって身体を動かすようになったりするという効果が期待できます。また、アニマルセラピーによって意欲が高まることで、認知症の予防や認知症の進行を抑えるという研究結果があるほどです。
以上のことから、老人ホームのレクリエーションなどで、アニマルセラピーを導入する施設が増えています。
ペットにまつわる事前に想定できるトラブルとは?
アニマルセラピーなどの実施によってさまざまなメリットが考えられますが、トラブルがある場合も。老人ホームがペット可だからといって、ペットを飼っている方のみが入居するわけではありません。ペット可であることを理解しているものの、これまでにペットを飼ったことのない利用者さんもいるはずです。
すべての利用者さんが安心して快適に過ごせるよう、事前に想定できるトラブルを考えていきましょう。
におい
ペットを飼うと、ペット特有のにおいや排泄物のにおいが気になることもあります。特に、ペットを飼っていない利用者さんからすると、においは強烈なものでしょう。
他の利用者さんや衛生面を考えて、空間除菌脱臭機を導入したり、カーテンや壁の塗料に消臭効果があるものを取り入れたりするなどの工夫が必要です。
騒音
特に犬の場合、吠えることがあるため、「うるさい」などと騒音トラブルに発展する可能性があります。しつけをしっかり行ったり、就寝時間にはペットだけ別の部屋に移したりする必要もあるでしょう。
ケガのリスク
どんなにしつけをしていても、ペットの本能的に、他の利用者さんを噛みつくことがあるかもしれません。ケガを負わせてしまったきっかけは、他の利用者さんが急にペットにふれたことによってペットが驚いたことが理由の場合もあるでしょう。
しかし、どんな理由があったとしてもペットが噛んだことに違いはないため、他の利用者さんから苦情が出る可能性があります。また、ペットが横にいることに気付かず、つまずいて転倒してしまうことも考えられるでしょう。
老人ホームでペット可にする場合は、ペットを飼わない方に対しても、入居前にペットとの交流方法やケガのリスクなどの注意点をしっかり説明する必要があります。
施設内の環境整備
犬や猫は部屋の中で走ることがあるため、滑りやすい床はケガの原因になることも。また、コンセントなどがペットの目線にあると、おもちゃかと思って噛んで遊ぶ可能性もあるでしょう。
犬などのペットにとっても快適な空間になるように、環境整備する必要があります。
利用者さんにもしものことがあったときは…
最後に、利用者さんが気になることといえば、「自分にもしものことがあった際に、ペットはどうなるのか」ということです。ペットより先に亡くなることもあれば、長期の入院が必要になることもあるでしょう。
そういった場合に備えて、老人ホームでペット可にする際には、万一のときには利用者さんのご家族や保証人に引き取ってもらったり、引き続き施設でペットの世話をしたりするなどの規定を設けていることが一般的です。
契約時に万一の際の説明をしっかりしておくと、利用者さんも安心してペットと暮らせるでしょう。
ペット可のニーズは今後も高まるはず
老人ホームのペット可の施設は、今後も増えるでしょう。アニマルセラピーなどによる動物の持つ魅力はもちろんのこと、ずっと一緒にいたペットを手放して、自分だけ施設に入居することを「寂しい」と感じる利用者さんも多いためです。利用者さんやペットが快適に暮らせて、なおかつ同じ施設にいるペットを飼っていない利用者さんも快適に暮らせるような運営が必要でしょう。