傾眠の原因とは?事前に知っておきたい対処法と注意点

介護施設の利用者さんの中に、一日中うとうとしている方はいませんか?もしかしたら、傾眠傾向にあるのかもしれません。実は、傾眠の背景に病気が隠れていたり、傾眠のせいで脱水症状が進み、さらに状態を悪化させたりすることもあります。そこで今回は、傾眠とはどんな状態を指すのか、傾眠の原因や予防策・注意点について見ていきましょう。

傾眠とはどんな状態?

まずは、傾眠がどんな状態にあることを指すのか、また傾眠の種類や原因について紹介します。

傾眠とは?

傾眠とは軽い意識障害のことで、浅く眠っている状態です。そのため、声をかけたり肩をたたいたりするなど、弱い刺激で意識を取り戻します。

傾眠傾向を放置すると、脱水症状や隠れていた病気を悪化させることにつながるため、注意しなければなりません。傾眠は高齢者によく見られるため、ただうとうとしているだけなのか、それとも病気の兆候なのかを見極める必要があります。

意識障害の種類

意識障害の程度によって「意識清明・傾眠・昏迷・半昏睡・昏睡」の5つに分類されます。以下にて、簡単にまとめました。

  • 意識清明…意識がはっきりしており全く問題がない状態。(起きている状態)
  • 傾眠…うとうとしている状態。軽い刺激で目を覚ます状態。
  • 昏迷…体をゆする・たたくなど強い刺激で意識が戻る状態。
  • 半昏睡…つねるなどの痛みを与えると身体の一部が反応する状態。
  • 昏睡…どんな刺激を与えても起きず、深い眠りについている状態。

傾眠の原因

傾眠が起きる原因にはいくつかあります。主な原因は以下のとおりです。

  • 認知症
  • 加齢
  • 脱水症状
  • 内科系疾患
  • 慢性硬膜下血腫
  • 過眠症
  • 低血圧
  • 薬の副作用

認知症の初期症状に、傾眠傾向が強くなる場合があります。また、認知症によって睡眠リズムが崩れ、睡眠不足から傾眠傾向になるケースも。加齢や体力の低下によって神経伝達機能が低下し、自然と傾眠を引き起こすこともあります。

高齢者は、のどの渇きを感じにくく体内に水分を蓄えにくくなっています。そのため脱水症状を起こしやすく、脱水症状を起こすと意識が朦朧としたり、幻覚症状を引き起こしたりする場合もあるでしょう。

発熱や体内の炎症などの内科系疾患によって、傾眠になることも。転倒して頭を打った際に、硬膜と脳の間に血腫ができる慢性硬膜下血腫を原因として、傾眠を引き起こすこともあります。

その他には、中枢神経系の機能異常が原因で睡眠障害を引き起こして過眠症になっているケースや、食事後の血圧低下、薬の副作用が傾眠の原因となる場合も。傾眠を疑う場合には、さまざまな要因が隠れていることを知っておきましょう。

傾眠を防ぐ方法

傾眠が進むと、栄養不足 に陥ったり病気が進行したりする可能性があります。ここからは、傾眠を予防する方法や傾眠の疑いがある場合の対処法について見ていきましょう。

話しかける

傾眠では、軽い刺激で目を覚ますため、積極的に話しかけて眠らないように配慮すると良いです。

こまめな水分補給

脱水症状を原因とする場合に限らず、こまめな水分補給を促しましょう。定期的に水分補給を促すことで、脱水症状を防げるだけでなく、会話のきっかけにもなります。

日中の運動

適度に運動すると、夜眠りやすくなり、生活リズムを整えることができます。また、身体を動かすことで血流が良くなり、脳が活性化することも期待できるでしょう。

薬の見直し

薬の成分や副作用によって、眠気が強くなるものがあります。傾眠傾向が強く見られる場合は、薬の変更や量を調整してもらう良いでしょう。

医師に相談する

傾眠の疑いがある場合は、まず医師に相談してください。認知症や他の内科系疾患の可能性があるためです。早い段階で原因がわかれば、病気を悪化させずに済むでしょう。

傾眠における注意点

傾眠が進むと、転倒のリスク・誤嚥のリスク・せん妄のリスクが高まります。傾眠は軽い意識障害のため、意識が朦朧としている状態で歩くと転倒や転落などの事故を引き起こし、ケガをするかもしれません。

また、意識がはっきりしていない中で食事を摂ると、誤嚥のリスクが高まります。誤嚥は肺炎の原因にもなるため、注意しなければなりません。傾眠とせん妄の傾向が見られた場合は、認知症の可能性が高いです。すみやかに医師に相談しましょう。

傾眠は放っておいてはいけない

利用者さんがうとうとしていると「暖かいからうたた寝しているのかな」や「昨日眠れなかったのかな」と思いがちですが、傾眠の可能性もあります。傾眠の原因にはいくつも種類があり、もしかしたら複合的に組み合わさっているケースも。少しでも「いつもと様子が違う」と思えば、医師に相談するようにしましょう。

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