介護助手とは?仕事内容や導入するメリットをチェック!

近年、介護業界で注目されている職種が「介護助手」です。介護助手とは、直接的な介護を行わず、主に利用者さんの話し相手や清掃などの間接的な業務を担う介護職のこと。学生や元気な高齢者など、幅広い世代の就業先の1つとなるよう制度化の検討がなされています。そこでこの記事では、介護助手とはどのような仕事か、また導入のメリットなどについて紹介していきます。

介護助手とは?

介護助手とは、利用者さんに直接触れる介護を行わず、見守りや清掃など間接的な業務を担う介護職のことです。食事や入浴の介助といった利用者さんに直接触れる業務を行わないため、特別な資格がなくても介護助手として働けます。また、介護福祉士などの有資格者の方が業務に専念できるようサポートすることで、介護サービスの質の向上を目指す仕事です。すでに介護助手を導入している介護施設や事業所も多数あり、2024年度の介護保険制度改正では制度化に向けた議論が行われると報じられています。

背景には介護人材の不足あり!幅広い年代の就業を想定

介護助手が求められる背景には、介護業界における厳しい人材不足があります。厚生労働省が2022年3月に公表した「社会・援護局関係主管課長会議資料」によると、2021年12月の介護関係職種における有効求人倍率は3.89倍とのこと。新型コロナウイルス感染症の影響で、全職業の有効求人倍率が低下したなか、依然高い水準だと報じられました。今後はさらなる労働人口の減少が予想されているため、これまで以上に介護分野の人材確保は困難となります。そのため、介護に興味のある学生はもちろん、元気な高齢者の就業先など幅広い年代が働ける職種となるよう制度化が検討されているのです。

2022年度からは介護助手普及を目指す新事業を創設

厚生労働省は2022年度に、介護人材の普及を目指す事業「介護助手等普及推進員(仮称)」を創設しました。これは都道府県の各福祉人材センターに配置を促した役職で、介護助手等の希望者を掘り起こし、事業所とマッチングさせることを主な仕事としています。厚生労働省が公表した「令和4年度厚生労働省予算概算要求関係-Ⅲ主要事項」によると、同事業の予算は3億円とのこと。この予算からも、積極的に推進しようとする姿勢がうかがえるでしょう。

介護助手とはどのような仕事をするの?

では、介護助手とは具体的にどういった仕事をするのでしょうか。ここからは、三重県が行った介護助手導入支援の例をもとに、仕事内容について見ていきましょう。

利用者さんの見守りや話し相手

同県では、介護助手を導入した半数以上の施設や事業所で、利用者さんの見守りや話し相手を介護助手の方に依頼しています。直接的な介護を行う職員の方は業務量も多く、利用者さん一人ひとりの話を聞きたくても「時間がとれない」と感じていることが少なくありません。一方で、話し相手を求める高齢者の方は多く、近年は「話を聞くこと」をメインとしたサービスも生まれているほどです。同県ではこの業務を、介護や看護の資格を持っている介護職の方に優先して依頼しています。

食事の配膳やシーツ交換など

事前研修を受けた方は、食事の配膳やシーツ交換、車いすの移動なども介護助手の仕事として割り振られています。介護助手の方が食事を利用者さんのもとへと運び、介護職の方が食事介助に入ることができれば、業務効率はアップしやすいでしょう。実際に、同県で介護助手導入の効果を測定したところ、介護職の方の業務にゆとりが生まれたという回答が半数以上となったといいます。

居室清掃や消耗品補充など

資格や経験がない方でも、居室の清掃や消耗品の補充などの周辺業務を担うことは可能です。介護施設では日によって突発的な出来事があり、掃除まで手が回らずに、時間外で対応するということもあります。また、介護記録の整理や消耗品の補充も、何かと後回しになりがちな業務です。こうした仕事を介護助手の方が担うことで、全体の業務効率が上がりやすいでしょう。なかでも、これまで清掃業での業務経験があり、介護業界への転職を考えたいというときには介護助手としての就業が良いきっかけになるかもしれません

介護助手の導入メリットと課題

ここからは、介護助手の導入メリットと今後の課題について見ていきましょう。

介護職員の業務量軽減につながり離職率が低下するところも

前述の三重県の介護助手導入支援事業では、次のようなメリットがあったと報告されています。

【介護助手導入による効果】

介護職員の業務量が軽減した84%
介護職員が気持ちにゆとりをもって働けるようになった52%
地域社会への貢献ができた52%
介護職員が利用者さんに応じた丁寧な介護を行える場面が増えた48%
介護職員の専門職としての意識が向上した36%
介護職員の残業時間が削減された12%

参照元:厚生労働省「三重県 介護助手の導入支援について」

さらに、介護助手を導入した施設全体で離職率が低下したという報告もあります。このように、介護助手の方の存在が働く環境にも良い変化を与えていると考えられるでしょう。

現場のニーズとのギャップが課題となる可能性あり

介護助手によるメリットが伝えられる一方で、導入への課題もあるといわれています。例えば、実際の現場では介護助手ではなく、介護福祉士のニーズのほうが高いこともその1つです。独立行政法人福祉医療機構が公表した「平成30年度『介護人材』に関するアンケート調査の結果について」によると、現場で不足している職種を集計すると次のようになっています。

【不足している職種 ※複数回答

介護職員99%
看護職員32.6%
PT・OT4.3%
介護助手3.9%

参照元:独立行政法人福祉医療機構 平成30年度「介護人材」に関するアンケート調査の結果について

また、業務単位で見たときに人員が足りていないと感じられるのが「食事介助」「入浴介助」「夜勤」「排泄介助」となっています。これらの業務は直接的な介護となるため、介護助手ではサポートしきれない範囲です。このように、現場のニーズとかけ離れた業務の普及に、どれだけの意義があるのかと疑問をもつ声もあります。こうした点が、介護助手導入の障壁となる可能性があるでしょう。

介護助手とはどんな役割かを知っておこう!

介護人材の不足を背景に、近年積極的に導入されているのが介護助手です。実際に介護助手を導入する施設では、介護職の方の業務負担が軽減するなどのメリットも見られています。2024年度の介護報酬改定での制度化も検討されているため、介護業界で働く方や介護業界への転職を希望する方は、介護助手とはどのような役割かを知っておきましょう。

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