異性介護は問題?利用者さんの尊厳を守るために知っておきたいこと
排泄や入浴などの身体的な介護を異性から受けることを、「異性介護」と呼びます。本来介護の原則は同性介護ですが、介護職は女性の比率が高いことから、やむを得ず異性介護を行っている施設も少なくありません。そのため、異性介護による問題も生じているのが現状です。この記事では、異性介護とは何か、また問題点や事前に知っておきたいポイントについて解説していきます。
異性介護とは?
異性介護とは、排泄や入浴などの身体的介護を、異性から受けることです。介護では、プライバシーへの配慮から同性介護が原則とされていますが、実際には人員が揃わないなどの理由から異性介護も行われています。
異性介護の問題点
異性介護は、利用者さんと介護職だけでなく、利用者さんの家族に対しても次のような問題点があると考えられています。
利用者さんが我慢している状態にある
まずは、利用者さん側の問題点です。同性介護に対して十分に配慮したいと考えている施設であっても、シフトなどの兼ね合いから、異性介護をせざる得ないこともあります。すると、同性介護を望んでいる利用者さんであっても、我慢して受け入れるしかありません。もちろん、介護職の方はプロとして適切な介護を行うため尽力しますが、利用者さんが我慢している状態であることは否めないでしょう。
介護職の方がセクハラにあうことがある
異性介護は、利用者さんだけでなく介護職にとっても問題点があります。例えば、利用者さんによるセクシャルハラスメントもその1つです。一部の利用者さんは、介護職の方の体を触ったりわいせつな言葉を話したりすることがあります。男女問わず起こり得る可能性がありますが、中でも女性の介護職の方が被害にあいやすく、離職につながるケースもあるようです。男性利用者さんは高齢とはいえ、女性よりも力が強いことも多いため、施設として十分な対策が必要だと考えられています。
入所拒否になる可能性がある
異性介護が利用者さんの家族に不安を与えることもあります。1つは、異性介護によるストレスです。同性介護と比べ、異性介護は利用者さん・介護職ともにストレスを感じやすいといわれるため、この点を不安視する利用者さんの家族も少なくありません。
もう1つは、問題行動により入所を断られることが挙げられるでしょう。施設によっては、ショートステイを利用した上で入所の可否を判断するケースがあります。この場合、万が一ショートステイ時に問題を起こしてしまうと、入所自体がむずかしくなるケースも。
とくに異性介護の場合は、セクシャルハラスメントを起こしてしまう可能性があるため、できるだけ避けてほしいと考える利用者さんの家族は多いようです。このように、異性介護は利用者さんの家族にも不安を与える可能性があるでしょう。
異性介護を行う際に知っておきたいこと
異性介護における問題点はあるものの、同性介護だけで運営するのは難しいという施設は多いでしょう。そのため、実際には異性介護を行うことも十分考えられます。異性介護を行う際には、次のポイントを改めて理解しておくと良いでしょう。
問題行動は施設全員で向き合う必要がある
施設によっては、利用者さんの問題行動は介護職の対応が悪いと考え、穏便に済ませようとするケースがあります。しかし、暴力やセクシャルハラスメントなどの問題は、介護職1人だけで対応できる問題ではありません。そのため、異性介護による問題は施設全員で向き合い、対策を講じる必要があると認識しておきましょう。
安心して利用者さんに介護を受けてもらえるよう配慮する
異性介護では、同性介護では生じない問題が起こる可能性があります。そのため、利用者さんに安心して介護を受けてもらえるような配慮が必要でしょう。とはいえ、利用者さんごとに感じ方は異なるため、明確な答えがないことが現状です。難しい問題といえますが、気持ちは行動にも現れるため、相手のことを尊重する気持ちを持ち続けることは大切な配慮の1つといえるでしょう。
異性介護における否定的な考えがあることも知っておく
介護施設では、同性介護が原則であるため、異性介護における否定的な考えは少なからずあります。例えば、異性による介護は虐待だと考える方もいるようです。誠実に業務に取り組んでいる介護職の方が虐待行為をしているかどうかは、冷静に考えれば分かることですが、こうした考えを持つことは止められません。そのため、異性介護を行う場合は、さまざまな捉え方があると知っておくとトラブルへの対処も冷静に行えるでしょう。
異性介護を行う前に現状を知っておこう!
介護の基本は同性介護ですが、人員の関係から異性介護を行う施設も少なくありません。しかし、異性介護では同性介護とは異なる問題も生じやすいため、十分に配慮しておく必要があります。また、万が一問題が生じている場合には1人で悩まず、施設全体の問題として捉えてもらえるよう働きかけていくことが大切です。