介護職の腰痛事情とは?欠勤したら労災は認定される?

介護職の中には「腰痛が悪化して欠勤しなければならない」という経験を持つ方も多いのではないでしょうか?腰に負担がかかる動作や姿勢が多い介護現場では、腰痛を発症する方が少なくありません。そこでこの記事では、介護職の腰痛事情と欠勤した場合の労災認定の有無、さらに腰痛への対策方法について解説していきます。腰痛に悩む介護職の方は、ぜひご覧ください。

介護職の腰痛事情!発症の原因は?

介護の現場では、腰に負担かかる動作や姿勢が多いことから、腰痛を発生する方が多いといわれています。まずは原因となる動作や姿勢について見ていきましょう。

ベッドや車いすへの移乗

利用者さんのベッドや車いすへの移乗介助は、中腰や前傾姿勢で行うため、腰への負担が大きくなります。とくに、体の大きな利用者さんの移乗介助は、介護職の全身に負担がかかり、腰痛の原因となりやすいです。

入浴の介助

利用者さんの体を支えて頭や背中を洗っていく入浴介助は、かがんだり立ち上がったりを繰り返すため、腰への負担が大きくなります。また、利用者さんを浴槽に移乗する際にバランスを崩し、急に腰に力を入れたことで痛みが生じてしまうケースも

寝ている利用者さんの体位変換

寝返りがご自身でできない利用者さんや寝たきりの方には、床ずれを防ぐための体位変換が必要です。この際、介護職は肩や太ももの下から腕を入れながら体位を変えるため、中腰や前傾姿勢をとらなければなりません。そのため、腰痛を発症しやすくなります。

着替えの介助

1人で身支度を整えることが難しい利用者さんには、介護職が着替えの介助に入ります。しかし、このとき自然にとる動作も腰痛の原因の1つです。例えば、寝たきりの利用者さんに対する介助であれば、前傾姿勢で利用者さんの腰をひねる動作が腰痛の原因となります。また、体にマヒがある方ならば着脱に時間がかかり、中腰姿勢を維持する時間が長くなることで、負担がかかりやすくなるのです。

トイレやおむつの介助

車いすからトイレへの移乗などが必要な排泄の介助も、介護職の腰痛につながりやすい業務です。利用者さんを支える動作の他、着衣の上げ下げで介護職の方が中腰姿勢を維持することも、腰への負担となります。また、おむつ交換時はどうしても前傾姿勢をとらなければなりません。こうした積み重ねが介護職の腰痛の原因となっているといえるでしょう。

介護職が腰痛で欠勤・退職したら労災認定される?

介護現場で起こりやすい腰痛ですが「介護の仕事が原因である」と証明されると、労働者災害補償保険、いわゆる「労災」が認められます。ただし、介護現場で労災認定されている腰痛は、次の2種類です。

仕事中のケガによる「災害性腰痛」

災害性腰痛とは、介護の仕事中に起こった外傷や筋肉の損傷などによる腰痛のことです。具体的には、次のような例で認定される可能性があるでしょう。

<災害性腰痛の例>

  • 体の大きな利用者さんをベッドに移乗する際、腰に無理な力がかかり痛みが生じた
  • 入浴介助中にバランスを崩し、腰を強打した

このように、腰への外傷や突発的な強い力による筋肉の損傷が原因の腰痛は、労災認定されることがあります。なお、ぎっくり腰(急性腰痛症)は日常の動作でも生じるため、仕事中に発症した場合でも労災の対象にはなりません。ただし、発症時の動作や姿勢に異常があったと認められれば、労災認定される可能性があるでしょう。

慢性的な症状を発症している「非災害性腰痛」

非災害性腰痛とは、腰に過度な負担がかかる業務を長い期間行うことで生じる腰痛のことです。次のような例で認定される可能性があるでしょう。

<非災害性腰痛の例>

  • 入浴介助を3ヶ月以上継続して行ったことで、筋肉疲労が蓄積し生じた腰痛
  • 10年以上介護業務を行った中で、異常な骨の変形が生じている腰痛

介護職の腰痛は非災害性腰痛であるケースが多いですが、筋力不足や加齢など業務以外の原因も考えられるため、労災認定されにくい傾向です。そのため腰痛による欠勤の原因が明らかに仕事である場合は、医療機関受診時に、介護の業務をいつから始めて・どんな症状が出ているか、勤務時間や日々持ち上げる重さなどを具体的に医師に伝えましょう。医師から「療養の必要あり」と診断されれば、労災として認められる可能性が高まります。

介護職の腰痛を防ぐ対策

介護職として長く働くためには、腰痛を防ぐことも大切です。ここからは、介護職の腰痛を防ぐ対策について見ていきましょう。

利用者さんの残存機能をできるだけ活かす

腰への負担を軽減するためには、利用者さんに協力していただくことが大切です。身の回りのことで無理なく行っていただけそうな動作は、できるだけ利用者さんの残存機能を活かしてもらいましょう。自立支援にもつながります。

日頃から筋トレやストレッチを行い体の状態を整える

介護現場では、日常的に同じ姿勢をとることが多いため、腰回りの筋肉が固くなっていることがあります。日頃から筋トレやストレッチを取り入れることで、こうした状態を緩和しましょう。

ノーリフティングケアなど体に負担が少ない方法を取り入れる

ノーリフティングケアとは、介護職が利用者さんを抱きかかえたり持ち上げたりせずに行うケアのことです。利用者さんの自立度に合わせ福祉用具などを活用します。このように、体への負担が少ない方法を取り入れることも介護職の腰痛対策となるでしょう。

▽ノーリフティングケアについてくわしく知りたい方はこちらの記事がおすすめ!

介護職の腰痛による欠勤は労災認定されることも!日頃から腰痛対策を

介護職の職業病ともいわれる腰痛ですが、発症原因や医師の診断によっては労災認定されることもあります。そのため、明らかに業務により生じた腰痛である場合には、労災の申請を検討してみると良いでしょう。また、日常的な業務方法の見直しも大切です。腰痛対策をすることで、長く仕事を続けられる環境を整えてみてはいかがでしょうか。

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