【介護の体位変換】目的やポイント、注意点まで詳しく解説
介護を必要とする利用者さんにとって、体位変換は日常生活を継続させるために欠かかせないケアのひとつです。しかし、やり方を誤ると利用者さんに負担をかけるうえ、ケガをさせてしまうケースもあります。そこで今回は、体位交換の目的や、押さえておきたいポイント、注意点を解説しました。体位変換がどんな目的で行われているのか、2時間毎の体位交換は本当に正しいのか気になる方はぜひご一読ください。
体位変換の目的とは
体位変換は、利用者さんの日常生活をケアする、褥瘡や廃用症候群の予防、生活の質を高めることを目的に行います。
利用者さんの日常生活をケアするため
食事のとき、着替えをするとき、おむつを替えるとき、車いすに乗るときなど、日常生活ではあらゆる場面に適した体位があります。体位変換は、さまざまな活動に合わせて提供するものであり、生活に欠かせないケアであることを認識しておきましょう。
褥瘡や廃用性症候群の予防
体位変換は、同じ姿勢を長時間続けることで発生しやすい褥瘡の予防に役立ちます。圧迫され続けた皮膚は血流が滞り、発赤やただれ、最悪のケースでは壊死状態に陥ることもあるので注意しておきましょう。
また、筋力や心肺機能の低下といった廃用症候群を防ぐ目的でも、体位変換は行われます。体を自由に動かせないことで生じるリスクは、体位変換で最小限に回避できることを認識しておきましょう。
生活の質を高めるため
体を動かせない利用者さんにとって、同じ姿勢、同じ景色を見続けることは、強いストレスです。体位変換はこのようなストレスを軽減させるとともに、生活の質を高める結果につながります。
体位変換は2時間毎が適切って本当?
体位変換は2時間毎が推奨されていますが、実は明確なエビデンスはありません。マットレスの種類によっては4時間毎で大丈夫とされていたり、利用者さんの状態によっては1時間で褥瘡が発生してしまうケースがあったりとさまざまです。したがって、ルーチンで2時間毎に体位交換を行うのはNG。利用者さんごとの状況に合わせた適切な回数の体位変換を行いましょう。
体位変換のポイントや注意点
褥瘡発生の予防や、介護スタッフ自身の腰を痛めないためにも、体位変換のポイントや注意点を押さえていきましょう。
体位変換前は必ず声かけを行う
体位変換は利用者さんのペースを尊重することが鉄則です。声かけをせずに突然動かす、強引に引っ張るなどの行為は、利用者さんにケガをさせる恐れがあるだけでなく、信頼関係を失いかねません。体位変換前は必ず声かけを行いましょう。
ボディメカニクスを意識する
体位変換時は身体力学であるボディメカニクスを意識すると、少ない力で利用者さんを動かすことができ、腰痛予防にもなります。
- 足幅を開いて支持基底面積を広くとり、重心を低くする
- 大きな筋群を使うよう心がける
- てこの原理やトルクの原理を活用する
など、ボディメカニクスのコツを押さえて介助しましょう。
利用者さんが持つ力を見極める
動ける利用者さんの場合は、体位変換がしやすくなるよう、できる範囲で動いてもらいましょう。そのためには、利用者さんが持つ力を見極め、協力を得ることが大切です。
体位変換に利用できる用具を理解しておく
体位変換ではベッド上での移動を補助できるスライドシートや、枕タイプの体位変換器など利用できる福祉用具が多くあります。どんな種類があるのか、正しい使い方も理解して適切な場面で活用していきましょう。
利用者さんと介護スタッフともに有効な体位交換を目指そう
体位変換は利用者さんにとって、生活の質を左右する大切なケアです。介護スタッフが無理をすれば、利用者さんにも苦痛を与えかねないことを理解しておきましょう。また、性能のよい福祉用具があっても、使い方を間違えれば宝の持ち腐れになりかねません。道具も有効に活用できるよう、知識や技術を深めておきましょう。
介護スタッフの腰痛事情については以下の記事も参考にしてください。