介護現場のICT導入事例を紹介!取り入れるときのポイントは?

近年、介護業界でも「ICT」という言葉を耳にすることが増えました。介護記録をスマートフォンから送れたり、介護職員同士の連絡をチャットでしたりとICT導入を図る施設も増えています。そこでこの記事では、介護現場のICT導入事例を紹介しながら、具体的な活用方法に注目。ICTツールを導入する際のポイントについて解説していきます。ICT化を検討している介護職員の方は、ぜひご覧ください。

ICTとは?

ICTとは、日本語で「情報通信技術」を指す言葉で、「Information and Communication Technology」の略称です。具体的には「スマートフォンから同僚にメールやメッセージを送る」といった、インターネットを介して人と人がつながることを指します。

日本では、厚生労働省が中心となり介護現場のICT化を推進。記録業務や請求業務などをワンストップで行えるような業務改善を支援しています。次から介護現場の具体的なICT導入事例を見ていきましょう。

導入事例1:チャットツールを使った業務報告

1つ目は、業務報告や介護職員からサービス提供責任者(以下サ責)への連絡などに、ビジネス用チャットツールを利用したICT導入事例です。東京都の訪問介護サービスを提供する事業所では、以前より介護職員とサ責の連絡方法が電話であることが課題となっていました。介護職員は電話が集中しやすいサ責と連絡が取りにくく、サ責も業務時間の大半を電話連絡にとられていたのです。

そこで、複数人に同じ情報を共有できるチャットツールを導入。介護職員からの連絡をインターネット上のメッセージでやり取りできるようにしました。導入当初はICTツールに苦手意識がある介護職員が使えるのかなどの懸念がありましたが、利用してみると70代の方でも使えているとのこと。情報がリアルタイムで正確に伝わりやすくなり、介護職員とサ責が抱えていた課題が解決したといいます。

導入事例2:見守りセンサーを導入

2つ目は、介護職員が離れた場所にいながらも、利用者さんの状態を把握できる見守りセンサーを利用したICT導入事例です。静岡県を中心に幅広い介護サービスを行う企業では、かつて訪問介護に伺った先で利用者さんが倒れていたことから、遠隔での見守りを課題としていました。

そこで、心拍や寝返り、離床のデータが取れる見守りセンサーを導入。介護職員が離れた場所にいても、利用者さんの状態が分かるようにしました。すると、同企業内の介護施設では夜間の見回り回数を減らすことができ、その分の時間を事務作業に充てられたといいます。これにより、夜勤明けの残業を減らすことに成功し、介護職員の夜間業務の不安を軽減することにもつながっているそうです。

導入事例3:介護ロボットを導入!排泄予測もICT化

3つ目は、利用者さんの自立歩行を助ける介護ロボットなどのICT導入事例です。導入したのは、介護業界に先例がないことでも積極的に取り組む東京都の企業。スーツ型のロボットを使って利用者さんの自立歩行のサポートや、排泄予測が行える機器などを導入しました。

その結果、スーツ型の介護ロボットは利用者さんの歩行をサポートするだけでなく、リハビリにも活用できることを発見。排泄予測機器も、失禁リスクのある利用者さんに使用することで、無駄にトイレ誘導をする必要がなくなったといいます。これらの結果は、利用者さんのケア向上や、介護職員のモチベーションアップにもつながっているそうです。

導入事例4:介護記録や情報共有をICTで一元化

4つ目は、介護記録や情報共有をインターネット上で行えるようにしたICT導入事例です。岡山県の介護施設では、スケジュールやケアプランの管理はエクセルで、請求業務には別のシステムを利用していたといいます。しかし、この方法では転記に無駄な時間を取られることから、システムをインターネット上で一元化できるシステムを導入しました。

導入当初は「手書きのほうが楽」「記録を入力しにくい」といった声も聞かれたといいますが、慣れてくると徐々に意見が変化。現場発信で書類を削減する意欲が生まれ、手書きでの記録はかなり削減されたといいます。また、法人内で利用者さんの記録を情報共有するときにも役立っているそうです。

導入事例5:利用者さんと家族をつなぐICTツールも

5つ目は、介護施設と利用者さんのご家族をつなぐICTツールの導入事例です。東京都の特別養護老人ホームでは、新型コロナウイルス感染症の流行により、利用者さんの家族と連絡する機会が増えたといいます。「陽性者が発生した」「濃厚接触者が出た」などの連絡を、主に電話で行っていたとのこと。すると、連絡がとれない利用者さんの家族も多く、かなりの時間をその業務に割かなければなりませんでした。

そこで、介護施設と利用者さんの家族をつなぐ総合コミュニケーションツールを導入。オンラインで連絡や面会、安否確認などを行えるようにしました。これにより、利用者さんの家族に連絡をする介護職員の負担は減り、利用者さん家族との面会のハードルも下がったそうです。

介護現場にICTを取り入れるポイントは?

介護現場でのICT導入事例からは、業務効率化や利用者さんへのケアに集中できる環境が整うといったメリットが伺えます。そこでここからは、介護現場にICTを導入するポイントについて見ていきましょう。

費用対効果で考える

介護施設や事業所でICTツールを導入する際に、まず考えておきたいのは費用対効果です。導入するシステムや製品によっても初期費用や導入後にかかる費用は変わるため、見積書を出して検討していきましょう。

ICT導入前に運用方法などを明確にしておく

ICTの導入は、システムを運用するためのスタート地点です。そのため、導入前に運用ルールや介護職員の研修、活用方法などを明確にしておく必要があります。ICT導入がゴールとならないよう注意しましょう。

自分たちに合ったサービスを導入する

介護現場でのICT導入事例を見ても分かるように、ひと口にICTといっても、サービスの種類は多種多様です。そのためICTを導入する際は、介護施設ごとの課題に応じたサービスを導入するようにしましょう。サービス内容はもちろん、各施設の規模や目的に応じて自分たちに合ったものを選ぶことが大切です。

介護現場のICT導入事例を参考に業務負担軽減を目指そう!

5つの介護現場のICT導入事例を紹介しましたが、どの施設や事業所でも業務が効率化や介護職員の負担軽減が見られたことが分かりました。導入までに反対意見があったところでも、長く利用することで業務に欠かせないものになったようです。現在ICT化を検討している介護職員の方は、この記事も参考にしながら業務改善を図ってみてはいかがでしょうか。

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