リハビリに使えるVR技術6選!歩行訓練や発達障害にも活用を

近年、さまざまな分野で活用されている「VR(ヴイアール)」技術。専用のゴーグルなどを装着し、視界を360°覆うように映像を映すことで、実際にその場所にいるような感覚が得られる技術です。最近は、映像の中を自由に移動したり、ものを動かしたりと、より没入感が高い体験も可能になってきました。

介護業界でも活用が進んでおり、リハビリに使えるVRも登場しています。この記事では、そんなリハビリVRのサービスを6個紹介していきましょう。

リハビリを変える新しい技術「VR」とは?

「VR(ヴイアール)」とは、「Virtual Reality(バーチャルリアリティ)」の略で、日本語だと「仮想現実」と訳されます。ゴーグルなどの専用機器を装着し、人の視界を360°見渡せるように映像を映し、まるでその場にいるような感覚が味わえる技術です。

例えば、テーマパークなどではVRゴーグルを使ってゲームの世界観をその場に映し出す体験型アトラクションが人気を呼んでいます。医療分野ではVR技術を使って、現実世界の手術に近い感覚でトレーニングできるサービスに活用されています。このように、VRはエンターテイメントやビジネス、医療まで幅広いところで活用が進められているのです。

介護分野でもさまざまな活用が進められており、注目度も高まってきています。ここからは、リハビリに使えるVRについて見ていきましょう。

各地の名所を巡りながらリハビリ「RehaVR」

健康を保つためとはいえ、いつも同じ場所の行き来は誰しも飽きるもの。「RehaVR」は、そんなリハビリの悩みを解消してくれるVRです。

専用のVRゴーグルをつけると、視界に広がるのは「宮島」や「金沢兼六園」など各地の名所。椅子に座ったままで専用の足こぎペダルを回し始めれば、あたかも観光地を散歩するような感覚でリハビリが行えます。

利用者さんが見ている映像は、iPadを通してトレーナーにも共有されるため、運動状況もリアルタイムで把握が可能です。大画面につなげば、VR体験者以外も同じ映像を見ることができ、ほかの利用者さんも一緒にVR散歩に出かけた気分が味わえます。

退屈になりがちなリハビリも、VRを導入すれば、各地を巡りながら楽しんで行えるでしょう。

歩行に必要な感覚のリハビリに「mediVRカグラ」

歩くために必要な機能を分析して開発されたのが「mediVRカグラ」です。脳梗塞後の方や高齢者の方が失いやすい「姿勢バランス」と、同時に2つ以上のことを行う「二重課題型の認知処理能力」を養えるリハビリVRとなっています。

基本動作は、座った状態で専用のVRゴーグルとコントローラーを手に持ち、仮想空間内の狙った位置に手を伸ばす「リーチング」というもの。「落下ゲーム」や「水戸黄門ゲーム」「果物ゲーム」など、5種類のゲームでリーチングを繰り返し、歩行に必要な感覚を養います。

今までのリハビリは、「指示や評価を明確に伝えることが難しい」という課題がありましたが、同機器は定量化も実現。「あと30センチ手を伸ばしてみましょう」など、距離や方向を利用者さんにはっきりと伝えられ、評価することが可能です。

同機器を活用したリハビリに関する論文も多数発表されるなど、エビデンスもあります。経済産業省主催の2018年度「ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト」でグランプリも受賞したVRです。

日常生活の動作のリハビリにも「iADVISOR」

作業療法の現場から生まれたリハビリVRの「iADVISOR(アイアドバイザー)」。電話や買い物、調理などの「IADL(手段的日常生活動作)」のリハビリに用いることができます。

専用ゴーグルをつければ、コントローラーを持つ必要がないことも特徴。自分の手をゴーグル内に搭載されたカメラに写すと、自らの手で作業しているような感覚でリハビリが行えます。

IADLに必要な8つのリハビリはもちろん、上肢機能や高次脳機能のリハビリにも適したプログラムも搭載。幅広い利用者さんのリハビリに、活用可能です。

3D空間で立体的なリハビリを「リハまる」

いつものリハビリ空間に、バーチャルな映像が浮かび上がる「リハまる」。専用のゴーグルをつけると、見慣れた空間に数字やフルーツなどが浮かび上がります。これらを、順番に並べたりや特定のフルーツを選んだりしながら、リハビリが行えるのです。

完全にバーチャルな世界に入り込むVRとは少し違う、MR(複合現実)の世界でリハビリを行えることが特徴です。歩行訓練を行う利用者さんには、視界に広がる花道を歩いて特定の色を選ぶ動作や、迷路の中を歩いてゴールするリハビリも行えます。

脳梗塞後のリハビリにも「MindMotion PRO」

スイスで開発されたリハビリVRの「MindMotion PRO」。専用の機器を手や肩に取りつけることで、脳梗塞を発症した経験のある利用者さんなどの上肢リハビリが行えます。

特徴は、ゴーグルをつけなくてもVR空間でリハビリが行えること。独自の追跡技術やカメラシステムなどによって、仮想空間上に自分の手が映し出されるシステムです。MindMotion PROのほか、在宅療法にも使える同社のVR機器「MindMotion GO」も世界各国で活用されています。

発達障害支援施設でのリハビリには「emou」

発達障害をもつ方のリハビリに活用できるのが「emou」です。発達障害の方が失敗しやすい対人関係や社会におけるさまざまな場面をVRで体験できます。

学齢期・思春期・就活期・就労期の4つの年代が対象のコンテンツが80個以上搭載され、各年代でつまずきやすいポイントを繰り返しVRで学べます。障害をもつ方が利用する福祉施設や就労移行支援施設などでも利用されているVRです。

リハビリにVRを導入するメリット・デメリットは?

どのVRを使うかでも変わりますが、従来の方法では難しかった数値での評価や指導が行いやすい点はメリットと言えるでしょう。これまでは、指導する側の見方によって変わりやすかった評価を、数値で管理することが可能になったのです。

また、映像が変わったりゲーム感覚で手を伸ばしたりと、楽しみながらリハビリが行えるところも魅力の1つ。利用者さんのモチベーションを高める効果にもつながります。

一方で、導入コストが高いことはデメリットとして考慮しておくべき点です。ただし、月額費用を払うサブスクリプション方式を採用しているVR機器であれば、初期費用をあまりかけずに導入できるでしょう。

リハビリへのVR導入について理解を深めておこう!

さまざまな分野で活用が進められているVR技術。エンターテイメント分野だけでなく、医療や介護でも幅広く活用され始めています。今回ご紹介したリハビリへのVR導入も、徐々に広まりつつある分野です。「どういったものがあるのか」をまずは知ることで、利用者さんの可能性を広げられるかもしれません。ぜひ、介護分野でのVR導入について今後も注目しておきましょう。

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