訪問看護管理者になるには?業務内容や兼務可能かについて解説

病気や障害をもつ人が自宅でサービスを受けられるようサポートする訪問看護ステーション。主治医の指示のもと、訪問看護師らが定期的に自宅を訪ねて病状のチェックやリハビリなどの看護サービスを行います。この記事では訪問看護ステーションを管理する立場である訪問看護管理者の仕事内容や訪問看護管理者になるための条件、兼務可能かなどを解説。訪問看護ステーションで働いている方や、訪問看護管理者を目指す方は参考にしてください。

訪問看護管理者(訪問看護ステーションの管理者)とは?

厚生労働省の「指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準について」という規定により、訪問看護ステーションには事業所ごとに専従の管理者が必要です。この管理者が「訪問看護管理者」と呼ばれ、法令や制度を守りながら、事業所の管理を担う責任ある立場のことを指します。

近年、介護や療養が必要な方が慣れ親しんだ地域で自分らしい生活を送れるよう地域内で助け合う「地域包括ケアシステム」という体制の構築が進められています。

厚生労働省が2017年に発表した「在宅医療を受けた推計外来患者数の年次推移」によると、在宅医療を受けた患者さんの数は2008年から年々増加傾向に。そんな在宅医療のニーズの高まりに伴い、訪問看護ステーションの数も増えています。

訪問看護師などの人材育成や、事業所の環境整備においてリーダーシップをとる訪問看護管理者の存在は、今後ますます重要になってくると言えるでしょう。

訪問看護ステーションでの訪問看護管理者の役割は?

利用者さんに質の高い看護サービスを提供するため、管理者に求められることはさまざまです。訪問看護管理者の主な役割には以下のようなものがあります。

在宅での看護サービスの質をチェック

主に利用者さんの自宅で行われている在宅看護。管理者の目の届かない場所でのサービス状況を把握・評価し、ケアの質の維持や向上を目指す役割があります。療養の目標やケア内容を記載した書類「訪問看護計画書」などをチェック。時には実際に現場を確認することも必要です。

人材育成のための環境を整備

知識習得やスキルアップを目指せる環境を整え、質の高いスタッフの育成を行います。より良質なケアを継続的に提供するため、スタッフに事業所内外で研修を受ける機会を作ることも管理者の役割といえるでしょう。

リーダーとしてチームをまとめる

訪問看護ステーションでは、看護師や保健師、リハビリを行う理学療法士や作業療法士、言語聴覚士、その他には事務職員などのスタッフが働いています。それぞれに異なる専門のスキルを持ったスタッフをまとめ、スムーズに業務を行えるようチーム作りを行うのも大切な役割です。

スタッフが持つ悩みを共有し一緒に考えたり、意見交換をしたりと、日常的にチームで助け合う雰囲気づくりをすることが、より良い訪問看護サービスにつながります。

関係機関の窓口として連携する

在宅で医療サービスを受ける利用者さんのもとには、さまざまな組織から多くの職種の人が訪問することも。関係各所の連携の窓口となって全体をトータルにみることで、訪問看護ステーションの役割を明確化する役割もあります。

ステーションの経営状態にも意識を向ける

経営者と専門スタッフの中間の立場である訪問看護管理者は、ケアの質の向上だけでなく経営意識を持つことも必要です。訪問数とそれにともなう収入などの数字をスタッフに提示し、コスト面での意識づけを行う役割もあります。訪問数の目標達成の度合いなどを把握し、経営者と話し合うことも訪問看護管理者の大切な役割です。

訪問看護管理者の業務内容は?

続いて、訪問看護管理者としての業務にはどんなものがあるか紹介します。事業所の規模によってどこまでの業務を管理者が担うかは異なりますが、責任者としての仕事内容をイメージする際に、参考にしてください。

訪問看護計画書の管理

訪問介護サービスを行う計画を記載した「訪問看護計画書」「訪問看護報告書」の管理を行い、ケアの状況を把握します。

利用者さんからのクレーム対応

訪問看護サービスでは、利用者さんやその家族との意向の食い違いなどから、クレームを受けることもあります。その場合にクレームの内容を確認し、改善へ向けての対策をとることも管理者の必須業務の一つです。

保健・医療・福祉との連携

在宅医療を支えるため、地域の保健・医療・福祉サービスとの連携を行うことも必須業務です。地域ケア会議などに出席し、多職種とネットワークを構築します。

スタッフのシフト調整やカルテの管理

事業所の規模によっては、シフト調整やカルテの管理、レセプト請求などの事務業務を管理者が行う場合があります。

訪問看護管理者に必要な資格や条件は?

厚生労働省が発表している資料「訪問看護管理者の基準」によると、「専従かつ常勤の保健師または看護師であり、適切な訪問看護を実施するために必要な知識・技能を持つ者」と定められています。

そのため訪問看護管理者になるには、保健師または看護師免許の取得が必要です。

なお、この基準にある「専従」とは、原則として訪問看護の提供時間の間、訪問看護以外の職務を行わないことを指します。そして「常勤」が意味するのは、訪問看護ステーションでの勤務時間が、事業所で定められている時間数に達していることです。

また、資格以外に求められる条件として、医療機関や訪問看護ステーションでの一定の勤務経験があることと、訪問看護に関連した研修を受けていることが望ましいとされています。

他の施設と兼務することはできる?

訪問看護管理者は複数の訪問看護ステーションで業務を行うことはできません。

厚生労働省の「指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準」によると、「管理者は当該指定訪問看護ステーションに専従かつ常勤の者でなければならない」「例えば同時に他の訪問看護ステーションなどを管理することは認められない」とあります。

ただし、管理上支障がない場合は、同一の訪問看護ステーションにて、訪問看護職員として兼務することは可能です。

訪問看護管理者が不在の場合はどうすればいい?

訪問看護管理者が病気の療養や出張など、やむを得ない理由で不在になった際は、管理者の資格を持たない職員が管理業務を行うことができます。

ただし、その場合は地方厚生(支)局長の承認が必要です。さらに、利用者さんのケアに対する一定の知識と経験を持つ職員に限られ、できる限り早く看護師か保健師資格を持つ管理者を再確保することが求められます。

ニーズの高い訪問看護管理者のお仕事

慣れ親しんだ自宅で医療サービスを受けながら、自分らしく過ごしたいという利用者さんの希望や、家族の要望に応える訪問看護ステーション。そのリーダーである訪問看護管理者は、今後ますます重要な役割を担うことになります。すでに看護師や保健師の資格を持っており、将来的に管理者を目指したいという方や、訪問看護ステーションでの仕事が気になっているという方は、給与なども含めて求人をチェックしてみてください。

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