サ高住のサービス内容は?有料老人ホームとの違いを徹底解説
高齢化社会が進む中で、65歳以上になってもまだまだ元気で自立した方が少なくありません。元気な高齢者の間でニーズが高まっているのが「サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)」です。また、同じく高齢者向け施設としてサ高住と一部共通したサービスを提供している施設に「有料老人ホーム」があります。この記事では、サ高住と有料老人ホームの違いに触れながら、それぞれのサービスについて詳しく紹介しましょう。福祉・介護業界で仕事をされている方は、ぜひ理解を深めてください。
目次
サ高住とは?
サ高住とは、比較的自立していて、支援や介護の必要度合いが軽い方向けのバリアフリー賃貸住宅です。サービス内容は基本的に「見守り」と呼ばれる状況確認と「生活相談」の2つが含まれています。
サ高住は、高齢の一人暮らしや夫婦のみの世帯が増えていることを背景に、高齢者が安心して生活できる住宅を確保するために創設されました。2011年に「高齢者の住居の安定確保に関する法律」が改正されたことにより、サ高住の登録を開始。管轄する国土交通省は、サ高住のさらなる供給促進のために、登録事業者に対して補助・税制・融資によるさまざまな支援をしており、今後も民間事業者によるサ高住の登録が増える見込みです。
有料老人ホームとは?
有料老人ホームは、介護付き・住宅型・健康型の3種類に分かれており、利用者さんの状況とニーズに応じてサービスを提供する施設です。厚生労働省が管轄し、民間事業者が運営しています。「老人福祉法」に基づいて設けられた制度で、高齢者の暮らしやすさに配慮した住環境と、食事、洗濯、掃除などの家事サービスや健康管理、生活相談や健康維持のためのアクティビティなどを行っています。介護サービスの提供方法については、各施設によって異なるのが特徴です。介護付き有料老人ホームが介護サービスも含むのに対して、住宅型有料老人ホームは、必要な介護サービスを外部の介護保険事業所と連携して提供します。なお健康型有料老人ホームは、介護サービスを提供しない施設ですが、全国にわずかしか存在していないのが現状です。
サ高住と有料老人ホームのサービスの違いを詳しく解説!
ここでは、それぞれの施設によって異なるサービス内容を細かく解説しましょう。
サ高住のサービス
細かいサービス内容は施設により異なる場合もありますが、一般的には見守り(状況確認)や生活相談などのサービスを行っています。利用者さんは自宅で生活しているような、自由度の高い暮らしを送っているのが特徴です。身の回りのことは自立して行えるが、一人暮らしは不安という方のニーズに対応した住宅となっています。介護が必要となった場合には、訪問介護などの外部サービスを契約して利用することになります。オプションとして、食事の提供や清掃、洗濯などの補助、健康相談などを行っている事業者や、利用者さんが必要な介護保険サービスを選ぶことができる「特定指定入居者生活介護」の指定を受けている住宅もあります。実際に、全国の7~8割のサ高住が高齢者生活支援施設を併設しており、受けられるサービスのオプションや追加の費用などによって、利用者さんに合った住宅を選ぶことができるでしょう。
サ高住で働くスタッフの条件
サ高住において、状況確認と生活相談サービスを行う専門家は、日中必ず施設内に常駐する必要があります。この専門家とは、養成研修修了者、社会福祉法人・医療法人・指定居宅サービス事業所などの職員、医師、看護師、准看護師、介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員のいずれかの資格や条件を満たす人物に限られます。
サ高住の設備
バリアフリーに対応した構造であること、居住者の専用部分が原則25平米以上(ただしリビング・キッチン・ダイニングなどが共同利用するために十分な面積を有する場合は18平米以上)であること、専用部分にキッチン・水洗トイレ・収納・洗面・浴室が備わっていること(ただしキッチン・収納・浴室は、利用者さんが共同利用するために適切な環境が確保される場合は、共同利用可能)が義務付けられています。
介護付き有料老人ホームのサービス
介護付き有料老人ホームは、主に介護が必要な利用者さんが入居しています。食事や洗濯、清掃などの生活面での支援、入浴や排泄などの介助のほか、レクリエーションなどのサービスを受けることができるのが特徴です。これら必要なサービスを提供するスタッフもホームごとに常駐しているため、必要な介護レベルに応じて施設が分かれていることがあります。
住居型有料老人ホームのサービス
住宅型有料老人ホームでは、食事、洗濯、清掃などの生活面での支援サービスを行います。ホームのスタッフは介護サービスを提供していないため、利用者さんが要介護となった場合には、別途訪問介護サービスの事業者などとの契約が必要です。
健康型有料老人ホームのサービス
健康型有料老人ホームは、基本的に家事サポートや食事のみのサービスを提供し、その他の生活に必要なことは利用者さん自身が自立して行います。利用者さんに介護が必要となった場合には退去しなければならないのが特徴で、現在、健康型有料老人ホームは全国にわずかしか存在していません。
サ高住と有料老人ホームの違い
サ高住は、原則的に60歳以上の高齢者であれば入居することができ、60歳未満であっても要介護認定を受けた方であれば契約できる場合もあります。食事、洗濯、清掃などの生活面でのサポート、介護サービスは外部との契約になるため、これまで在宅利用していたケアマネジャーを継続して依頼することも可能です。
一方、有料老人ホームは、65歳以上(住居型有料老人ホームの場合はおおむね60歳以上)から入居が可能で、生活面での支援サポートや、介護付きの場合は介護サービスも一体化しています。そのため、介護の必要度に応じて施設が分かれていることも多く、介護の状態によって居室を移動することもあるでしょう。
サ高住と有料老人ホームの違いを一覧でチェック!
サ高住と有料老人ホームは、いずれも民間の事業者が運営している施設です。入居条件や費用、サービス内容などの面で、さまざまな違いがあります。詳細は施設によって異なりますが、おおむね平均的な施設のケースでその違いを比較してみましょう。
サ高住 | 有料老人ホーム | |
---|---|---|
入居対象者 | 60歳以上 または要介護認定を受けた60歳未満の方 | 65歳以上 (住居型の場合はおおむね60歳以上) |
提供サービス | 状況確認、生活相談 | 食事、家事、介護、健康管理のいずれか |
初期費用(目安) | 57,116円 | 住宅型:41,738円 介護付:119,672円 |
月額(目安) | 139,289円 | 177,508円 |
1人あたり居住面積 (専用部分) | 25平米以上 (但し、共用スペースの条件を満たす場合は18平米以上) | 13平米以上 |
契約形態 | 賃貸借契約 | 利用権契約 |
管轄 | 国土交通省・厚生労働省 | 厚生労働省 |
- 東京都福祉保健局「あんしん なっとく 高齢者向け住宅の選び方」PDF参照※2019年3月時点
- 厚生労働省「高齢者向け住まい及び住まい事業者の運営実態に関する調査研究報告書(株式会社野村総合研究所)」※2017年3月時点
サ高住のメリット・デメリット
一般社団法人 高齢者住宅協会のデータによると、サ高住は、2011年の登録開始以降、ニーズの高まりから民間事業者による登録数が伸び続けており、現在では270,244戸にのぼります。(国土交通省「サービス付き高齢者向け住宅の現状等」PDF参照※2020年12月時点)。
サ高住の利用者さんにとってのメリットとしては、有料老人ホームに比べ、初期費用が抑えられる傾向にある点です。利用者さんは基本的に自立した生活を送っているため、食事やレクリエーションなど施設ごとに生活時間が規定されることなく、家族友人との面会や外出も自由に行えます。
サ高住で状況把握と生活相談を行うケアの専門家は、日中に常駐することが義務付けられていますが、夜間は緊急通報システムでの対応となるケースも存在します。その場合、24時間スタッフのいる有料老人ホームと比べ、夜間の見守り体制が手薄になるというデメリットになるでしょう。
有料老人ホームのメリット・デメリット
老人ホームには、有料老人ホームのほかに、公的機関が運営する特別養護老人ホーム(特養)やケアハウスなどがあります。これらは比較的安い費用で利用できるのが特徴ですが、そのために人気が高く、多くの入居待機者が発生しているのが現状です。その点、有料老人ホームは待機が少なく、すぐに介護を必要とする高齢者が選ぶことができるのがメリットです。
有料老人ホームは、利用料の前払い方式を採用している施設が多く、特養やケアハウスはもちろんのこと、サ高住と比較しても初期費用が高くなる傾向にあるのがデメリットと言えるでしょう。
今後ますますニーズの高まるサ高住でのお仕事
サ高住と有料老人ホームの違いについてご理解いただけたでしょうか。サ高住は、有料老人ホームと比べて、自立して自由度の高い生活を送っている利用者さんが多い傾向にあることなどを説明しました。前述のとおり、サ高住において必要なサービスを提供することができるスタッフの条件も定められています。必要資格の取得を目指している方や、すでに必要資格を取得していて新しい職場をお探しの方は、サ高住でのお仕事も検討してみてはいかがでしょうか。