看取り対応とは?施設でできる「看取り」について解説

高齢者施設に求められている対応のひとつが「看取り」です。施設や病院、在宅など、さまざまな看取りの形態がありますが、高齢者施設での看取り対応とは、具体的にどのような内容なのでしょうか。この記事では、高齢者施設での看取り対応について詳しく解説しています。施設によって、看取り対応としてできることも異なるので、違いも含めて参考にしてください。

看取りとは?定義や他との違いを解説

まず、「看取り」の定義について確認しておきましょう。看取りとは、終末期を迎えた高齢者が亡くなるまでの過程を見守ることを指します。ここでは、介護施設などにおける看取りについて、解説していきましょう。

平成24年3月に公益社団法人全国老人保健施設協会学術委員会によって作成された「介護老人保健施設における看取りのガイドライン」によると、介護老人保健施設における看取りは、次のように定義されています。(以下、ガイドラインより抜粋)

「介護老人保健施設では、終末期にある利用者に対し、利用者本人(以下、本人)の意思と権利を最大限に尊重し、本人の尊厳を保つと共に、安らかな死を迎えるための終末期にふさわしい最善の医療、看護、介護、リハビリテーション等を行う。なお、これらの一連の過程を本ガイドラインでは「看取り」と定義するものとする。」

介護老人保健施設における看取りのガイドライン

つまり、看取りとは、近い将来に死が避けられない状況となった方に対し、苦痛を緩和しながら最期まで尊厳のある生活が送れるよう支援することです。施設での看取りに関しては、医療・看護・介護などの面からサポートすることを指しています。

終末期の医療に関しては、さまざまな言葉を耳にすることがあります。それぞれの意味や内容について、見ていきましょう。

ターミナルケア

ターミナルケアとは、病気や寿命により死が迫った状態と判断された方に対し、医療・看護・介護などの面からケアをすることです。目的は、精神・身体両方の苦痛を緩和して、生活の質(QOL:クオリティ・オブ・ライフ)を保つこと。一般的に、病気の回復が見込めない場合や寝たきりで食事が摂れない状態を目安として、ターミナルケアに入ります。

身体面・精神面・社会面の3方向からケアを行い、病気の完治を目指す積極的な治療ではなく、痛みの緩和や症状に応じた医療的処置を行います。社会面のケアでは、医療ソーシャルワーカーが療養中のサポートを行うことも多いようです。

緩和ケア

緩和ケアとは、WHO(世界保健機構)によると、「生命を脅かす疾患による問題に直面している人と家族」に対して行われるもの、そして「痛みやその他の身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題を迅速に発見し、適切なアセスメントと治療や処置を行い、苦しみを予防し、緩和することで、QOLを改善するアプローチ」と定義されています。

つまり、生命を脅かすような重篤な疾患にかかったとき、痛みなどの苦痛を緩和するために行われるケアのことです。ターミナルケアと違い、治癒が見込めなくなった段階ではなく病気にかかった段階で開始することもあり、積極的な治療と並行して行われます。

在宅での看取り

「慣れ親しんだ自宅で最期を迎えたい」「残された時間を家族と一緒に過ごしたい」など、患者さんや家族の希望により在宅での看取りを行うこともあるでしょう。最期を看取るまでの間、医師や看護師の訪問による医療ケアを受けながら、自宅で介護をします。訪問サポートにより、前述のターミナルケアや緩和ケアを受けることも可能です。

看取り看護と看取り介護の違い

「看取り看護」と「看取り介護」、両方目にする機会が多い言葉ですが、内容については同じような意味で使われることが多いようです。どちらも終末期を迎える患者さんに対し、苦痛を緩和して最期までその人らしい生活を送るためのサポートがメインとなります。

そもそも看護とは、病気やケガなどの治療や療養のサポートを行うことで、看護師など医療の資格を持つ人が携わります。一方介護は、介護福祉士やヘルパーが生活面での介助を行うことです。
そのため、看取り看護という言葉が使われる場合、看護師などによる医療行為を含むことがあります。看取り介護については、介護スタッフによる介助を指す場合もありますが、医師や看護師、介護職の連携による看取り期のサポート全体を指すこともあるのです。

どの言葉も終末期医療でよく使われていますが、似ているようで少しずつ内容が異なります。中でも緩和ケアは病気の積極的治療と並行して行われることもあり、必ずしも看取りと深く関わっているとは限らないことを覚えておきましょう。

施設によってできることが違う看取り対応

ここからは、施設による看取り対応の違いを見ていきましょう。厚生労働省による「平成27年人口動態調査」によると、老人ホームや介護老人保健施設での死亡率は、2000年以降増加傾向にあります。このことからも、施設での看取り対応が可能であることが分かるでしょう。
主な施設における看取り対応と医療体制について、一覧表にまとめました。

各施設の看取り対応と医療体制

看取り対応介護サービス看護サービス医療サービス
特別養護老人ホーム施設内施設内提携医療機関
介護老人保健施設施設内施設内施設内
介護付き有料老人ホーム施設内施設内提携医療機関
住宅型有料老人ホーム外部訪問看護提携医療機関
グループホーム施設内訪問看護提携医療機関
病院施設内施設内施設内

:充実した対応 :受け入れ可能 :施設によって受け入れ可能

施設でできる看取り対応のサービス内容

施設ごとに人員配置等の基準により、看取り対応が異なることが分かりました。この先は、看取り対応のサービス内容について解説します。

厚生労働省の資料によると、平成25年3月に実施された「人生の最終段階における医療に関する調査」の「職員に対する終末期医療に関する研修・教育の実施状況」では、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の56.3%が「研修や教育を行っている」と回答。病院の28.4%、診療所の7.3%に比べて極めて高く、調査施設の半数以上が終末期医療に関する研修を行っていることからも、看取りに対応できる環境が整ってきていることが分かります。

介護施設にはさまざまな形態があり、各施設によって看取りの対応は異なりますが、対応の可否については医療体制にも大きく関係があると考えられます。国の基準により介護・看護スタッフが常駐している施設もあれば、特に基準がない施設もあり、受け入れ可能な体制かどうかに影響しているようです。

施設内に介護・看護スタッフが常駐している施設では、看取りまでの間のケアも手厚く受けられるでしょう。しかし、病院と違って積極的に医療器具や投薬治療が行えるわけではないので、全ての苦痛を医療ケアの面から取り除くことは難しいと考えられます。

また、高齢者向けの施設の中でも、住宅型有料老人ホームのように施設内の人員配置に定めがない施設では、介護スタッフの常駐は必須ではありません。そのため、受けられるケアに差が出ることもあるでしょう。
また、看取り対応可能な施設であっても、状況によっては外部の病院に搬送されるケースもあります。

病院での看取りでは、24時間体制で医師や看護師によるサポートが可能ですが、急変の際に家族の到着が間に合わない場合もあります。
反対に、在宅での看取りの場合、家族は常時付き添えますが、医師や看護師のサポートが病院のように常に受けられる訳ではありません。

施設での看取りの場合も同様に、医師や看護師の対応、家族による看取りの希望など、メリットやデメリットがあります。看取りの希望については、入居時に家族と施設側がしっかりと確認しておく必要があるでしょう。

施設での看取り対応について理解を深めましょう

今回の記事では、看取りについて詳しく解説をしました。必ず訪れる最期のときをどう過ごすのか、家族はそのときにどのような看取りをするのか、さまざまな看取りの形態があることが、お分かりいただけたと思います。高齢者向けの施設でも、各施設によって看取り対応が異なりますので、この記事を参考にして理解を深めてください。

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