【デイサービス開業】指定基準や初期費用などを解説
本記事では、デイサービス開業に関する情報をご紹介します。高齢化が急速に進み、介護施設の需要が高まる昨今。時代のニーズに合わせたビジネスチャンスのひとつとして、“デイサービス開業”に注目が集まっています。将来的な事業拡大を考えている介護施設の経営者、独立希望の現役介護職員の方は、デイサービス開業の指定基準や費用、注意点をチェックしておくことが大切です。それぞれ解説していくので、知識を身に付ける際に役立ててください。
デイサービス経営は儲かる?
デイサービス開業を考えるにあたり、気になるのはデイサービス経営が儲かるかどうかという点でしょう。2020年度の独立行政法人福祉医療機構の調査では、約4割の施設が赤字です。黒字経営を目指すには、以下の項目を意識する必要があります。
職員の定着率を高める
職員の定着率は、職場環境や仕事に対する満足度に比例します。定着率が高まればサービスの質が向上し、利用者さんの満足度も高くなるでしょう。サービスに満足した利用者さんが他の方を紹介してくれるケースもあるので、スタッフの定着率を高めることは黒字経営につながる要素とも言えます。
稼働率を高める
稼働率はデイサービス経営における重要指標です。稼働率が高いほどに売り上げは大きいと言えるので、運営を安定させるためにも稼働率を意識しましょう。
強みを打ち出す
利用者さんがどのデイサービスに通うかを決める際は魅力的に感じる要素があるものです。自社ならではの強みを打ち出して施設の魅力を高め、他との差別化を図りましょう。
デイサービス開業の必要条件と指定基準について
デイサービス開業には、必要条件と指定基準を満たす必要があります。
デイサービス開業の必要条件は?
まず必要条件として、報酬請求のために法人格を取得しなければいけません。法人の形態は複数あり、それぞれ特徴が異なります。
<営利法人>
- 株式会社:信頼度は高いが、立ち上げ費用が高い。
- 合同会社:立ち上げ費用が安く、倒産してもリスクが低い。信頼度は薄い。
<非営利法人>
- 社会福祉法人:補助金や税金が優遇される。基本的に設立できない。
- 一般社団法人:社会的信用は高いが、余剰利益が出ても社員に分配できない。
- NPO法人:寄付金に課税されない。立ち上げ書類が膨大で、役員は10人以上必要となる。
指定基準について
デイサービス開業の指定基準は、人員・設備・運営の3つに分かれます。
<人員基準>
職種 | 配置条件/資格要件 |
管理者 | 1名以上/資格要件なし |
生活相談員 | 1名以上(兼務可)/介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士など |
看護職員 | 1名以上(利用定員が10人未満なら配置基準なし)/看護師、准看護師 |
介護職員 | 1名以上/資格要件なし |
機能訓練指導員 | 1名以上/理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師、はり師、きゅう師など |
管理者は2職種のみ兼務できます。たとえば、介護福祉士の資格を持つ管理者なら生活相談員との兼務が可能です。
<設備基準>
設備 | 基準 |
食堂・機能訓練室 | 利用者数×3平方メートルの面積の確保 |
浴室 | 使いやすく安全が確保される設備 |
トイレ | 手すりやブザーの設置 |
相談室 | プライバシーに配慮した構造 |
事務室 | 机、イス、書庫、鍵付きキャビネットの設置 |
消防設備 | スプリンクラー・消火器の設置 |
こちらは主な設備の例です。その他、厨房や静養室などにも基準があります。
<運営基準>
- サービス提供内容と手続きの説明・同意
- 提供拒否の禁止
- サービスの提供の記録
- 介護等の総合的な提供
他にも運営基準は複数あります。運営側がサービスを一方的に押し付けることのないよう、定められた基準を守らなければいけません。
デイサービス開業までに必要なこと
デイサービス開業でおもに必要となる項目は5つあります。
事業計画書の作成
デイサービス開業には都道府県・市町村の事業所指定が必要で、事業計画書は提出書類のひとつ。融資を受けるなら金融機関へも提出することになります。また、売り上げの見通しを立てて収支計画を作成するためにも必要な書類です。
経営理念の決定
“誰のために、どんなサービスを、どのように提供するのか”を明確にしましょう。
事業概要の決定
事業概要は経営テーマと事業内容に分かれます。
マーケティング戦略の立案
マーケティングは施設を利用してもらうための強みにあたります。“儲かる・儲からない”を分ける要素でもあるので、他社にはない独自の強みを打ち出せるよう、戦略を立てましょう。
開業費用の確認
デイサービス開業には、法人設立費や改修費用、広告宣伝費、人件費など複数の項目に費用がかかります。どのくらいの費用が必要なのか事前に確認しておきましょう。
デイサービス開業に必要な費用
デイサービス開業に必要な費用の相場は約1,200万円と言われています。開業にあたり融資を受けることもできるので、自己資金は約400~500万円を想定しておきましょう。
法人設立費
法人格の取得にかかる費用。法人の形態によって費用に差はありますが、約11~25万円が相場です。
改修費用
既存の建物を改修して開業する場合の費用。初期投資として十分確保しておくといいでしょう。改修内容によって費用は前後しますが、約200万円が相場です。
指定申請費
事業所として指定を受けるために必要な費用。約3万円が相場です。
人件費
優秀な職員を確保できればサービスの質も高まります。介護報酬の売り上げが入るタイミングも考慮し、余裕を持った費用を確保しましょう。約800万円が相場です。
車両費
利用者さんの送迎に使う車両の費用。安全面はもちろん利用者さん一人ひとりの状態に合わせた対応をするために、改造が必要なケースもあります。スロープ付き送迎車の中古相場は50万円~120万円なので、約70万円を想定しておきましょう。
その他の費用
広告宣伝費や備品にかかる費用など。合わせて約80万が相場です。
デイサービス開業の注意点
デイサービス開業時にチェックしておきたい3つの注意点を見ていきましょう。
コンセプト・サービス内容をじっくり考える
施設としてのコンセプト・サービス内容は、利用者さんに選ばれ、継続的に通ってもらうためにじっくり考える必要があります。たとえば、どんなサービスを提供すれば利用者さんが快適に過ごせるか、安心してもらえるか、という視点でサービス内容を考えてみましょう。既存の施設を参考にするのもひとつの方法ですが、“自社ならでは”のサービスを織り交ぜると差別化できます。
職員の確保
職員の確保は、利用者さんに適切なサービスを提供し、安全性を高めるために不可欠です。定められた人数をクリアすることはもちろん、十分な経験やスキルを持つ職員を確保しましょう。
資金繰りのシミュレーション
デイサービス開業の初期費用は膨大で、開業後もしばらくは多くの運転資金が必要です。準備段階で収支のバランスをしっかりシミュレーションし、安定した運営を目指しましょう。開業後はさまざまな税金が発生するので、税理士や弁護士とのコネクションを作っておくことも大切です。
デイサービス開業は“準備をしっかりと”
デイサービス開業には、十分な知識を身に付けて必要な物をそろえる“準備”が欠かせません。3つの指定基準については項目ごとに細かく定められているので、一つひとつ確実にクリアしていくことが大切です。費用についても、どんな項目にどれくらいかかるのかチェックする必要があります。ご紹介した相場を参考にしながら、実際に必要な費用を計算してみましょう。