地域包括支援センターは法律でどのように定められている?

高齢者をさまざまな側面からサポートする地域包括支援センターは、2005年に介護保険制度の見直しに伴って、設置が定められた機関です。介護予防のケアプランを作成したり、介護以外の問題を解決する役割があったりなど業務は多岐にわたります。そのため、地域包括支援センターの役割や意義を十分に把握できていない方もいるでしょう。今回は、地域包括支援センターの設置の根拠となっている法律や、同センターの法律的な解釈について紹介します。

厚生労働省の「介護保険法」 第115条で定められている

地域包括支援センターを設置する根拠は、厚生労働省の介護保険法第115条に明記されています。地域包括支援センターの役割や意義について知る前に、まずはその根拠となる「介護保険法」が制定された背景について見ていきましょう。

1960年代、日本社会の高齢化に対する危機感の高まりから、「老人福祉法」が制定されました。その後、老人医療費の増大や寝たきり老人問題などによって、「老人保健法」が制定され、高齢者に対する制度や設備の整備などが進みました。

しかし、増え続ける高齢者人口に対して介護施設も不足しており、介護の悩みを相談する場所がないなど、さまざまな問題が持ち上がりました。そこで、介護を社会全体で支え合う仕組みとして、1997年に「介護保険法」が成立し、2000年に施行されたのです。

その後も、将来におけるさらなる超少子高齢化社会が問題視され、将来的な介護保険制度の維持・要介護にならないための予防対策・社会保障の統合化を目的に、介護保険法の見直しが行われました。

その際、高齢者が要介護となっても、住み慣れた地域でできるだけこれまでと変わらない生活が送れるよう、必要なサービスや支援を地域で一体的に提供できるようにする「地域包括ケアシステム」を整備することが決定。そのシステムの中核となる機関として位置づけられたのが「地域包括支援センター」です。

地域包括ケアシステムは、単に高齢者を守るためだけではありません。自助・互助・共助・公助を基盤に、介護保険を利用して保健・福祉・医療との連携を図り、「地域が高齢者を支え、高齢者が地域を支える」という構図を作る目的もあります。

こうした流れを受けて、介護保険法第115条に地域包括支援センターに関する内容が法律で明記され、市町村ごとに地域包括支援センターを設置することに決まりました。事務局に関しては、市町村が担当することになっています。

地域包括支援センターの設置者とは?

厚生労働省発表の地域包括支援センターに関する資料によると、地域包括支援センターの設置者は、「①市町村 又は②地域支援事業(包括的支援事業)の実施を市町村から委託された者」と法律で決められています。地域包括支援センターを設立するために、市町村で新たな条例を定める必要はなく、設置者の判断によって設立が可能です。

ただ、地域包括支援センターの機能を分割したり事業の一部を再委託したりすることはできません。しかし、住民の利便性向上のために、地域包括支援センターにつなぐための窓口のような施設を設けることは可能としています。その場合、地域包括支援センターが担う事業をサポートすることを前提にし、あくまで窓口の機能だけを持つ施設であることが絶対条件です。その場合であれば、サポート的に作った窓口の経費も地域支援事業費から支出して良いことになっています。

先ほど紹介したように、基本的な設置者は市町村ですが、委託された者も設置可能です。そのため、中には居宅介護支援事業所などの他の施設を運営している事業者もいます。その場合、地域包括支援センターを他の事業所の事務所と共用することも可能です。ただ、厚生労働省は、事務所との共用は可能としながらも、業務の兼務は認めず、明確に区分する必要があるとしています。

地域包括支援センターの設備に関しては、運営するためにあらかじめ決められた設備基準はなく、適切な業務ができれば良いとしているのも特徴です。

2015年設置運営について改正を実施

地域包括支援センターの設置運営については、2015年の介護保険法の改正に伴って設置運営要綱が改正されました。主な内容は以下の4つです。

  • 適切な人員体制の確保
  • 市町村との役割分担と連携
  • センター間の役割分担と連携
  • 効果的なセンター運営の継続

改正前は、報酬などを鑑みた人員基準について、介護給付費見込額の2%を上限としていたため、専門職などの人員を多く配置することが困難でした。しかし改正によって、高齢者人口に連動する仕組みに変更されたことで、適切な人員体制を確保できるように改善されました。

在宅医療や介護、地域ケア会議などさまざまな役割を持つことで、地域によっては基幹型センターや機能強化型センターが必要になることもあります。そうすると、センター間の役割分担が曖昧になり、地域包括支援センターを作っても上手く機能しないケースも。また委託型センターでは、市町村の考えとズレが生じるケースもあったようです。

改正によって、基幹となるセンターの位置づけが明確になり、他の施設との役割分担や連携強化をしやすいように整備されました。そして市町村は、委託方針を提示することができるようになり、より具体的に方針を伝えることができるようになったのです。これによって、市町村やセンターの役割が明確になり、効率的に業務ができるようになりました。

また、さらに充実したサービスを提供していくためには運営の評価が必要とされ、市町村が運営する協議会によって評価する仕組みが導入されています。PDCA(Plan計画、Do実行、Check評価、Action対策)を充実させながら、情報公表制度を使ってセンターの取り組みが周知されるようになりました。こうして、他のセンターの良い点を知り、取り入れることで、さらなるサービス充実を目指したのです。

今後も地域包括支援センターの役割は重要

高齢者やそのご家族の悩みをくみとり、利用者さんに適切なサービスを提供するために、地域包括支援センターの役割は今後ますます重要になります。 地域包括ケアシステムの中核である地域包括支援センターの存在意義を知り、質の高いサービスを提供できるようにエリア内施設との交流を深めるだけでなく、他エリアの施設との情報交換を行うことも大切でしょう。地域包括支援センターに関する法律は今後も改正される可能性があるため、こまめにチェックするようにしてください。

この記事をシェアする