介護保険法とは?制定された背景や改正ポイントを知ろう

介護保険法によって、40歳以上の日本国民は介護保険料を負担しなければならないという決まりがあります。当たり前のように加入が義務付けられている介護保険ですが、その制度が誕生した背景や目的について、しっかりわかっている方は少ないかもしれません。そこで今回は、介護保険法とはどういうものか、そして介護保険法制定の背景や目的、2020年度に改正された内容について紹介します。

【簡単に解説】介護保険法とは?

介護保険法とは、介護保険の運営について詳しく定めている法律のことです。介護保険では、40歳以上のすべての方が被保険者となり介護保険料を支払います。それによって将来介護が必要になった際、介護サービスの費用の一部を介護保険でまかなってくれる制度です。

実際にどのくらいの費用負担になるかの判断は、被保険者の身体の状態によります。身体の状態を客観的に表す指標である「要介護」(1~5)や「要支援」(1・2)の認定を受ければ、介護度に応じたサービスを1~3割の費用負担で受けられるようになっているのです。

介護保険加入者は、65歳以上の第1号被保険者と40歳以上64歳以下の第2号被保険者にわかれています。第1号被保険者の場合は、要介護または要支援の認定を受ければ介護サービスが利用できますが、第2号被保険者は加齢に伴った特定の病気の場合以外は、介護保険の対象外です。

介護保険制度の運営主体は市町村で、第1号被保険者の場合、介護保険料の徴収は原則年金からの天引きで行われています。

第2号被保険者は、加入している医療保険の保険者(健保組合や全国健康保険協会など)が、医療保険の保険料と併せて徴収します。

介護保険法制定の背景と目的

次に、介護保険法が制定された背景や目的についても知っておきましょう。厚生労働省の「日本の介護保険制度について」によると、そもそも介護保険法が制定される前には、老人福祉政策に関する法律がありました。それが1963年に制定された老人福祉法です。

1973年には老人医療費が無料化され、のちに老人医療費が増大しました。1982年には老人保健法が制定され、老人医療費の一定額負担制を導入。しかし日本は、急激に少子高齢化が進んでおり、これまでの老人福祉や老人医療制度では限界がくると判断されました。

そこで、高齢者の介護や医療を社会全体で支える仕組みを作ったのです。それが介護保険制度で、1997年に介護保険法が成立し2000年に施行されました。介護保険制度には以下の3つの柱があります。

  • 自立支援
  • 利用者本位
  • 社会保険方式

自立支援とは、単に介護を必要とする高齢者の世話をするだけでなく、要介護とならないように予防的な策や高齢者の自立を支援する目的のことです。

利用者本位に関しては、従来の制度では、市町村が介護サービスを決定する仕組みだったことが関係しています。利用者さんが本当に必要だと感じているサービスを受けられないこともありました。そこで利用者本位とすることで、利用者さんの選択によってさまざまなサービスを総合的に受けられるようになったのです。

最後の社会保険方式とは、所得に関わらず一定の負担割合で介護サービスを利用できるように制度化されたことを指します。

以上のような背景や目的によって介護保険法が制定され、介護の根幹を支えています。

2020年の法改正のポイントとは?

介護保険法は、2000年に施行後、何度か改正が行われてきました。ここでは2020年の法改正でどのようなことが定められたのか、ポイントを見ていきましょう。

ポイント1 市町村の包括的支援体制の構築支援

地域住民の複雑化や複合化によって、地域住民が抱える課題はさまざまです。そこで、既存の相談支援の取り組みを活かして、課題解決を行う包括的支援体制を整える事業を市町村がサポートするというもの。財政支援はもちろん、関係法律の規定整備も行います。

ポイント2 地域の特性に応じた施策やサービス提供体制の整備

今後の介護サービス需要を考えると、2040年には、利用者のさらなる増加が予測されるのはもちろんのこと、多様化やニーズの違いが露呈してくるでしょう。そのため、一律のサービス提供ではなく、地域の特性に応じた取り組みができるように推進します。

具体的には、認知症施策の総合的な推進や地域支援事業でのデータ活用、介護サービス提供体制の整備などです。

ポイント3 医療や介護のデータ基盤の整備

医療と介護のデータを正確に把握し連結させることで、調査分析や研究を促進することを目的にしています。ただそれだけではなく、これらのデータを用いることで、地域性を活かし、利用者さんに最適の質の高いサービスを提供できるようになるでしょう。

ポイント4 介護人材確保や業務効率化の取り組み強化

現在でも人材不足が深刻で、2025年以降はさらにその担い手が減ると予測されています。しかし利用者さんの需要は高まっているため、人的基盤の確保が重要と考えました。そこで、介護人材の確保はもちろん、介護業務の効率化の取り組みを強化します。

ポイント5 社会福祉連携推進法人制度の創設

人口構成の変化、福祉ニーズの複雑化や複合化を考えると、今後社会福祉法人間の連携の重要性が高まるでしょう。そのため、社会福祉法人間の連携はもちろん、合併や事業譲渡、新設が行いやすいように整備。

さらに、新たな法人として、社会福祉連携推進法人を創設しました。社会福祉法人を中心とした非営利連携法人となります。

今後も必要に応じて適宜法改正が行われていく可能性が高いため、法改正の話が出た際には必ずチェックしてください。

【わかりやすく解説】介護保険法に基づいた介護保険制度とは?

ここまで説明したように、介護保険法とは介護保険制度を維持するために必要な法律です。

冒頭で紹介したように、40歳以上の国民が介護保険に加入し保険料を納めることで、1~3割の負担で介護サービスが受けられます。どうして1~3割の自己負担で済んでいるのかというと、残りの費用の50%を介護保険料で、50%を国と都道府県、市町村が負担しているからです。

今後2025年に向けて75歳以上の人口は急速に増加し、2030年頃からは85歳以上の人口が増加すると予想されています。しかし介護保険料を負担する40歳以上の人口は2021年をピークに減少することが予想されているため、さらなる対策を考える必要があるでしょう。

介護保険とは重要な社会保険制度の1つ

超高齢社会を迎えた日本において、介護保険はなくてはならない社会保険制度の1つと言えます。ただ高齢者を支える若者の人口は減少傾向にあるため、今後何か対策を考えなければ介護保険制度は崩壊してしまうでしょう。そのため、介護保険制度の根幹である介護保険法の改正は今後も定期的に行われる予定です。改正のたびにチェックしておきましょう。

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