軽費老人ホームとは?サービス内容や費用面についても紹介
高齢者施設にはさまざまな種類がありますが、中でも軽費老人ホームは他の施設と比べて低額な料金で利用可能な施設です。しかし、どういった施設なのか詳しく知らない方もいるかもしれませんね。そこで今回は、軽費老人ホームとはどんな施設なのかを解説し、提供しているサービス内容、医療体制の有無、職員の種類などを紹介します。また、ケアハウスとの関係性についても見ていきましょう。
目次
【簡単に解説】軽費老人ホームとは?
まずは軽費老人ホームとはどんな施設なのかを簡単に解説していきます。読み方は「軽費老人ホーム(けいひろうじんホーム)」で、老人福祉法をもとに設置している施設です。
名前の通り、軽費=かかる費用が比較的安い老人ホームという意味合いがあり、無料または低額な料金で利用できます。ただし、利用するには以下の条件をクリアしなければなりません。
- 家庭環境や住宅事情などを理由に在宅での生活が困難な方
- 身体機能の低下によって自立して生活することが困難な方
- 原則60歳以上の方
具体的には、身寄りのない高齢者が、1人で家事をすることが難しくなったケース。また、入居していた賃貸住宅の管理側の事情で退去しなければならなくなったものの、親戚がおらず経済的にも困っており、新たな入居先が見つからないケースなどが該当します。
軽費老人ホームは、「在宅での生活が困難な高齢者」という前提がありますが、介護保険法では居宅に位置付けられているため、施設内で介護サービス事業者と契約すれば、介護サービスを受けることも可能です。また要介護認定を受けた利用者さんでも入居できます。
ただ、軽費老人ホーム設立の許認可や運営の財源を各自治体に移譲したことで、他の高齢者施設と比べると入所者数は横ばいです。全世帯の所得水準が低下しており、さらには単身の高齢者が増加している背景を考えれば、「軽費老人ホームを利用したい」と考える利用者さんは増えていくと思われます。
そこで、軽費老人ホームの代替として利用されている施設が、ケアハウスです。ケアハウスは自治体や社会福祉法人が運営する施設で、こちらも軽費老人ホームと同じように、60歳以上で身寄りのない高齢者が利用できます。
次では、軽費老人ホームのサービス内容について詳しく見ていきましょう。
軽費老人ホームで提供するサービス内容とは?
軽費老人ホームにはA型・B型・C型の3つのタイプがあり、タイプによって提供するサービス内容が異なります。C型は、都市型軽費老人ホームと呼ばれることも。
対象者と提供されるサービスなどは以下の通りです。
- A型…高齢や身体機能の低下などによって自立して生活するには不安がある低所得高齢者。住まいを提供し食事サービスも実施。
- B型…自炊できる低所得高齢者。住まいを提供する。
- C型は、都市部における低所得高齢者を対象にしており、住まい・食事・生活支援サービスを提供。
いずれのタイプでも外部の介護サービスを利用でき、要支援でも要介護でも入居可能です。
一方、包括的な介護サービスが必要な低所得高齢者については、特定施設入居者生活介護を行うケアハウスがおすすめ。ケアハウスでは、利用者さんに対し食事や入浴などのサービスと同時に、機能訓練なども行っています。
医療体制は?
厚生労働省令によると、基本的には医師や看護師の配置は定められていません。ただし、利用者さんの病状の急変に備えて、協力医療機関と協力歯科医療機関が必要という規定があります。
軽費老人ホームでは、B型軽費老人ホーム以外の施設では介護スタッフを入所者数に応じて設置。また、看護師はA型軽費老人ホームや特定施設入居者生活介護を行うケアハウスに設置されます。
職員の種類と人員配置
軽費老人ホームを運営するにあたり必要な職員の種類は、以下の通りです。
- 施設長
- 生活相談員
- 介護スタッフ
- 栄養士
- 事務員
- 調理員その他の職員
施設長は1人、生活相談員は入所者数120人またはその端数を増すごとに1人以上の設置が必要となります。施設長は専らその職務に従事する常勤でなければならないと規定されていますが、支障がなければ同一敷地内の他の事業所や施設の職務に従事することが可能。
生活相談員を複数人設置する場合は、1人以上常勤の者を設置しなければなりません。事務員は1人以上、介護スタッフは一般入所者数が30人以下であれば常勤が1人以上必要です。31人以上80人以下の場合は常勤2人以上、80人を超える場合は2人に加え、常勤換算方法を考慮して実情に応じた人数を常勤させることとしています。
次に、栄養士は1人以上、調理員は実情に応じた人数が必要です。しかし、入所定員が40人以下または他の社会福祉施設などの栄養士と連携できるケース、調理業務全てを委託する場合は人員の配置は不要となっています。
夜間の職員配置に関する規定も。夜間や深夜には1人以上の職員が勤務しなければなりません。ただし、敷地内に職員宿舎があるなど職員が緊急時にすぐに対応できる体制になっていれば、常駐しなくても良いことになっています。
どんな設備が必要なの?
軽費老人ホームを運営するには、以下の設備を設置しなければなりません。
- 居室
- 談話室や娯楽室(集会室)
- 食堂
- 浴室
- 洗面所
- トイレ
- 調理室
- 面談室
- 洗濯室(洗濯場)
- 宿直室
- 事務室やその他の運営で必要な設備
ただし、他の社会福祉施設の設備を利用し、利用者さんに支障がない場合などはこれらの設備を設けなくても良いという規定があります。
それぞれの設備にはさらに詳しい規定があるケースも。たとえば居室の場合は、基本的には定員1人で、地下に設けてはならないことや、広さの規定もあります。軽費老人ホームの運営に関わることがある方は調べておくと良いでしょう。
軽費老人ホームの利用費用はどのくらい?
利用者さんが負担する費用に関しては、利用者さんの前年度の収入によって負担額が異なります。また負担額については自治体が判断するため、利用者さんから詳しい費用を知りたいなどの要望があった場合は、自治体に確認すると良いでしょう。
入所までの基本的な流れは以下です。
- 自治体の窓口や地域包括支援センターなどに入所の相談をする
- 自治体の窓口で申し込む
- 調査を経て入所判定委員会によって判断される
- 入所が決定
もし利用者さんに聞かれたときなどは答えられるよう、覚えておくと良いでしょう。
軽費老人ホームの必要性は高くなるかも
今後、高齢者の増加に伴い、軽費老人ホームの必要性はますます高まるでしょう。介護に携わる方は、軽費老人ホームとはどういう施設なのかを知っておくことが重要です。ただ、A型やB型の軽費老人ホームは新規で建てられないため、今後はケアハウスに統一されることになっています。今回の記事を、今後の運営や利用者さんへのアドバイスに活かしてください。