社会福祉法改正で何が変わる?2020年の改正点を分かりやすく解説
すべての人が役割と生きがいをもつ社会を目指して、改正が続けられている法律が、社会福祉法です。介護や福祉に携わる方の働き方にも関連する、法律の1つと言えます。とはいえ、「どんな法律?」「いつの改正で何が変わったの?」と、少し分かりにくいのも正直なところ。そこでこの記事では、社会福祉法について分かりやすく解説していきます。2020年に行われた社会福祉法の改正点もまとめていますので、くわしく知りたい方はぜひご一読を!
【簡単に解説】社会福祉法とは?
社会福祉法とは、一人ひとりが役割と生きがいをもつ社会を目指して、さまざまな取り組みを推進している法律のこと。この法律の理解には、年表をさかのぼり、歴史から見ていくと理解しやすくなります。まずは簡単に、前身の法律から見ていきましょう。
現在の社会福祉法の前身は、1951年に制定された社会福祉事業法というものです。終戦直後の日本で、戦争孤児や失業者などの救済を目的に作られた施策を推進していくために制定されました。
そこから半世紀。福祉を必要とする方も、求めるものも大きく変化した2000年に、抜本的改正が行われました。そこで生まれたのが、現在の社会福祉法です。生活困窮者だけに一方的に支援を与える方法から、福祉はサービスであるという考えに転換。提供する側が支援を決めるのではなく、福祉を利用する方が中心に置かれるようになりました。
さらに、2018年には改正社会福祉法が施行され、福祉は事業者や行政だけでなく、地域住民と一体になって進めていくものという位置づけに変化。こうした考え方は「地域共生社会」と名付けられ、2020年に行われた社会福祉法の改正もこれらの実現を目指したものとして制定されています。
2020年に行われた社会福祉法改正のポイントは?
社会福祉法をはじめとした、介護・福祉関連の法律でキーワードとなるのが、前述でも取り上げた「地域共生社会」です。住民一人ひとりの生きがいと暮らしを、地域とともに創っていく社会、地域共生社会の実現を目指して各法改正が進められています。ここからは、厚生労働省が2020年に公表した、「地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律の概要」などを参考に、社会福祉法の改正ポイントを見ていきましょう。
地域に合った支援体制を創設するサポート
まず2020年の社会福祉法の改正では、地域ごとの支援体制が見直されました。介護と育児のダブルケアや、高齢の親と自立困難な中高年の8050世帯など、地域住民が抱える問題は複雑かつ複合的になりつつあります。こうした課題の打開策として、属性や世代を問わない一体的な事業を推進する地域に、国から交付金を支給してサポートする方針が示されました。
簡単にまとめると、高齢者と子育て世代、障害のある方などの属性や世代で分けない取り組みが自治体主導で推進されていくということです。この改正により、今後は一体的な事業や体制づくりがより強化されていくでしょう。
社会福祉連携推進法人制度の創設
2020年の社会福祉法の改正では、新しい制度の創設も示されました。それが「社会福祉連携推進法人制度」です。この制度は主に、社会福祉法人やNPO法人を運営している方に関係してきます。
社会福祉連携推進法人とは、福祉に関わる事業を行う法人組織同士の連携を推進するために創られる非営利法人のこと。簡単にいうと、社会福祉法人やNPO法人をグループ化して設立した法人組織です。
高齢化が急速に進む日本では、福祉におけるニーズが複雑かつ多様化しています。そのため、1つの社会福祉法人に期待されている福祉サービスも、幅広くなっているのが現状です。とはいえ、社会福祉法人が個々で提供できるサービスには限界があります。そこで、いくつかの社会福祉法人が連携し合って、より幅広い福祉ニーズに対応できるようにと創設されたのが社会福祉連携推進法人制度です。
社会福祉連携推進法人になると、グループ内で採用活動や人材育成の協力体制が築けたり、資金の融通が可能になったりといったメリットがあります。こうした課題を抱えている社会福祉法人などは注目しておくと良いでしょう。
なお、同制度の施行は2022年度から。制度を推進する厚生労働省の公式ホームページでは、制度説明の動画や実践者のインタビューなども掲載されています。まだまだ認知度は高くないと言われていますが、導入を検討している方はぜひチェックしておくと良いでしょう。
介護・福祉職に関わるポイントをおさらい!
ここからは、2020年の社会福祉法改正の中から、介護・福祉職に関わるポイントをおさらいしていきましょう。
これから目指すのは「地域共生社会」
現在の社会福祉法では、地域共生社会の実現に向けたさまざまな取り組みが推進されています。こうしたことから、介護・福祉職に携わる方も、職場内だけでなく地域とのつながりが増えるケースがあるでしょう。直接的なつながりでなくても、各自治体が主導した体制づくりに会社として参画することも考えられます。そのため、まずは地域共生社会について、よりくわしく知っておくと役立つでしょう。
属性や世代を問わない相談に応じていく
これまで行政機関などで高齢者や子育て世代の相談に応じてきた方は、今後は属性や世代を問わない相談にも応える機会が増えていく可能性があります。また、介護職の場合はこれまで連携していた行政機関とは異なる組織から、サポート依頼が来ることがあるかもしれません。どのような体制を築くかは各自治体によって異なるため、働いている地域の動向をチェックしておくと良いでしょう。
複数の社会福祉法人と連携していく可能性も
社会福祉連携推進法人制度が創設されたことにより、今後は組織を超えて働く方も増える可能性があります。たとえば、グループ内の法人を巡回する形で、人材採用や育成を行っていく方が現れるかもしれません。こうした体制が整えば、中小規模の社会福祉法人でも人材確保や育成がしやすくなることが考えられます。所属する組織が、社会福祉連携推進法人制度に参画する動きがあった場合は、その関わり方に注目しておくと良いでしょう。
社会福祉法の改正ポイントを押さえて動向をチェックしよう!
社会福祉法は、地域共生社会の実現に向けて、さまざまな改正が行われている法律です。改正と言われると一見「難しいのかな」と思いがちですが、時代のニーズに応じた変化をしていると捉えると、少しだけ印象が変わるかもしれません。介護・福祉職の方に関わる内容も多いため、ポイントを押さえて今後の動向もチェックしておきましょう。