特別養護老人ホームとはどんな介護施設?特徴や費用感までチェック

介護サービスを提供する施設には、さまざまな種類があります。そのため、今介護の仕事をされている方でも、施設ごとの違いについて詳しく把握することが難しいかもしれませんね。この記事では、数ある介護施設の中でも、「特別養護老人ホームとはどのような施設なのか」ということにスポットを当てて、その特徴や医療体制、費用などについてわかりやすく解説しています。特別養護老人ホームとはどんなところなのか興味のある方は、ぜひご覧ください。

簡単にわかりやすく解説!特別養護老人ホームとは?

特別養護老人ホームとは、要介護認定を受けた高齢者が入居する公的な生活施設のことです。略して特養とも呼ばれています。ここでは、特別養護老人ホームの特徴や入居条件について簡単にご説明しましょう。

特別養護老人ホームの特徴

地方公共団体や社会福祉法人など公共的な機関が運営する特別養護老人ホームは、民間企業運営の介護施設と比較すると、国からの助成金もあり、比較的安い費用で入居することができます(ただし、全ての特別養護老人ホームが民間運営の介護施設より安いとは限りません)。

そのため人気が高く、申し込みから入居するまでに時間がかかることも。2015年4月以降、特別養護老人ホームの新規入居の条件が要介護3以上となり、入居待機者は減少しましたが、地域ごとに格差があるといわれています(出典:厚生労働省 平成29年度 特別養護老人ホームの入所申込者の状況)。

また、特別養護老人ホームの中には看取りの対応を行う施設もあるため、最期まで24時間体制の介護を受けたいという方にも人気があります。

特別養護老人ホームとは、介護度の高い利用者さんがそれぞれに自立した日常生活が送れるようにするための役割を担っています。

介護度や年齢など、特別養護老人ホームへの入居条件は?

特別養護老人ホームは、原則として要介護3以上の高齢者(65歳以上)を対象とした施設です。ただし、特定疾病がある要介護3以上の方は、40~64歳であれば入居が認められることもあります。また、特例として、要介護1~2の方でも認知症や知的障害など日常生活に支障をきたす症状が頻繁に見られる場合は、入居が認められることもあるのが特徴です。

ただし、入居条件を満たしていても、24時間体制の医療ケアが必要な方や感染症に患っている方は、入居ができない場合もあります。

提供するサービス内容とは?介護以外の内容もチェック

特別養護老人ホームでは、食事や入浴、排泄などの介護の他、日常生活に必要なお世話や機能訓練、健康管理などを行っています。詳しい内容について、厚生労働省の「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」を参考に、簡潔に説明しましょう。

代表的なサービスサービス内容
食事入所者さんの心身の状況や嗜好に応じたものを、適切な時間帯に提供する
入浴1週間に2回以上、適切な方法で入浴、又は清拭を行う
排泄入所者さんの心身の状況を考慮しながら、排泄の自立を促して、適切な援助を行う
機能訓練入所者さんの心身の状況に応じて、日常生活に必要となる機能の維持や改善、減退を防ぐ訓練を行う
健康管理施設の医師や看護職員によって、健康管理や療養のお世話を行う

その他、都道府県別に定められた基準では、居室や共有空間の清掃、娯楽や趣味に繋がるレクリエーションの提供なども定めています。

特別養護老人ホームとは、介護だけでなく、利用者さんが日常生活を自立して送るためのさまざまなお世話を行っているのが特徴です。

医療体制は?

特別養護老人ホームとは、食事や入浴、排泄といった介護ケアに重点をおいて、利用者さんの日常生活のお世話を行っている施設です。「介護老人保健施設」や「介護療養型医療施設」など、医療ケアに特化した他の介護保険施設と比べると、きめ細やかな医療体制が取りづらいことも往々にしてあります。

特別養護老人ホームでは医師や看護職員の配置が定められていますが、介護老人保健施設や介護療養型医療施設よりも配置人数が少ないことが特徴です。

厚生労働省「特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準」によると、医師は「入所者に対し健康管理及び療養上の指導を行うために必要な数」を設置するとされています。しかし、常駐ではない場合もあり、施設ごとに異なるといえるでしょう。

看護職員および介護職員については、「入所者の数が3又はその端数を増すごとに1以上とすること」とあります。入所者さんが100人入居している施設であれば、看護職員が3人という計算です。なお、看護職員が24時間体制で常駐することは義務づけられていないため、施設によっては、特別な医療ケアが必要な入居者の方は受け入れられないケースも多くあります。

医師や看護師など、職員の種類と人員配置は?法律をもとにチェック

特別養護老人ホームで働く職員の種類と人員配置について、厚生労働省の「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」では以下のように説明されています。

職員の種類人員配置
医師入所者に対し健康管理及び療養上の指導を行うために必要な数
生活相談員入所者の数が100又はその端数を増すごとに1以上
介護職員又は看護職員介護職員及び看護職員の総数は、常勤換算方法で、入所者の数が3又はその端数を増すごとに1以上とすること。
栄養士又は管理栄養士1以上
機能訓練指導員1以上
介護支援専門員1以上(入所者の数が100又はその端数を増すごとに1を標準とする)

特別養護老人ホームで働く職員の中で一番多いのが、入所者さん100人につき31人以上を配置しなければならないと定められている介護職員です。また、医療体制についての項目でも説明しましたが、医師や看護職員の配置も一定数定められています。なお、表にある生活相談員とは、入所者さんご本人やご家族の方からの相談、連絡・調整などを行う職種のことを指します。その他、栄養士(又は管理栄養士)や機能訓練指導員、介護支援専門員も、施設ごとに必ず配置されるようになっているのがポイントです。

特別養護老人ホームの設備や種類は?

特別養護老人ホームの運営で必要とされている設備や種類について、説明します。

必要となる設備と設置基準

特別養護老人ホームでサービスを提供するために必要な設備と、その設置基準について、簡潔に表にまとめてみました。

設備名設備基準
居室・定員は、原則1人
・入所者さん1人当たりの床面積10.65㎡以上
食堂及び機能訓練室・入所定員×3㎡以上
浴室・介護が必要な入所者さんの入浴に適したもの
便所・居室ごと、又は共同生活室ごとに設ける
・ブザー又はこれに代わる設備を設ける
医務室・医療法に基づいた診療所であること
廊下・手すりを設ける ・幅1.8m以上
階段・手すりを設ける ・傾斜は緩やかにする

設置基準は他にもありますが、主だったものを紹介しました。

特別養護老人ホームの居室タイプは?

特別養護老人ホームには、おもに4種類の居室タイプがあります。

居室タイプ特徴
ユニット型個室10人程度のユニットを組み、共有スペースを囲むようにそれぞれの個室が配置されている
ユニット型準個室ユニット型個室と同じような配置だが、壁ではなく天井と間が空いたパーテーションや仕切りで区切られた個室となっている
従来型多床室1部屋に定員2人以上で構成されており、食堂や浴室などはともに共有して使用する
従来型個室ユニットを組まずに、それぞれの個室で構成されている

特別養護老人ホームといえば、従来型多床室や従来型個室の施設が多く、大勢のスタッフと入所者さんが同じ空間で過ごすことを基本としていました。

しかし、近年では、少人数のスタッフで入所者さんに寄り添いながら介護ケアを行う、ユニット型の施設も増えています。

特別養護老人ホームの種類をチェック!

特別養護老人ホームには、大きく分けて広域型・地域密着型・地域サポート型の3種類があります。

広域型は、定員30人以上という特別養護老人ホームで、居住地に関係なく申し込みが可能です。

地域密着型は、定員29人以下からなる小規模な施設であり、施設のある所在地に居住している方しか利用できません。また、地域密着型は、広域型特別養護老人ホームが運営するサテライト型と、よりアットホームな単独型にさらに分かれているのが特徴です。

地域サポート型は、在宅介護生活を送る高齢者の方を対象とした施設です。スタッフが24時間体制の見守りを行っています。

どのくらいの費用がかかる?

特別養護老人ホームでは、入所のための初期費用は必要ではなく、毎月かかった利用料を支払うこととなります。

入所者さんが負担する項目について、ご説明しましょう。

  • 施設介護サービス費
  • 介護サービス加算
  • 居住費
  • 食費
  • 日常生活費

介護保険の給付対象となる施設サービス費と介護サービス加算は、入所者さんの負担は原則として1割(所得に応じて2割・3割負担の場合も)です。施設サービス費は、居室タイプや介護度によってかかる金額が変わります。介護サービス加算とは、サービスの人員やどのような体制かによって追加で請求される費用のことで、充実したサービスを行う施設ほど、加算が多くなるのが特徴です。

また、特別養護老人ホームの負担限度額は、入所者さんご本人やご家族の方の合計所得に応じて変わります。

月々の利用額は居室タイプや介護度、入所者さんの状況によってそれぞれ異なるのが特徴です。多床室タイプ利用で月5~16万円程度、ユニット型個室タイプ利用で月18~22万円程度がおおよその目安となっています。

特別養護老人ホームとは高齢者の方やご家族を支えるための公的な介護施設

特別養護老人ホームとは、介護度の重い高齢者の方を対象とした公的な施設。入居条件はもちろん、人員配置や施設の設備、かかる費用まで、さまざまな法律で細かい基準が設けられています。また、民間運営の施設よりも安価であることが多いため、入所希望者が多い点もポイントです。入所者さんやそのご家族の支えとなる、重要な介護施設といえるでしょう。特別養護老人ホームとはどんな施設か知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

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