介護老人保健施設とは?サービス内容や職員の種類などを解説

介護老人保健施設とは、病院から退院した高齢者や、健康に不安がある高齢者でも入りやすい施設の1つです。医師や看護職員、リハビリテーションの専門スタッフたちが、チームで利用者さんの生活をサポートしてくれます。今回は、介護老人保健施設の特徴や受けられるサービスなどを詳しくご紹介。提供しているサービスが多岐に渡り、多様な専門性を持った人材が必要となる施設ですので、介護業界で働きたい人は勤務先の候補として検討してみてくださいね。

【簡単に解説】介護老人保健施設(老健)とは?

厚生労働省が発表した「介護老人保健施設」についての資料によると、介護老人保健施設とは、病院から退院した高齢者や病状が安定している高齢者が在宅での生活に復帰できるよう、医療や介護・リハビリテーションなどのサービスを受けられる施設です。省略して「老健」と呼ばれる施設で、基本的には65歳以上かつ要介護1以上の人が利用できます。在宅での生活に復帰することが目標のため、原則として入居期間は3~6ヶ月に限定されており、いわゆる「終の棲家」としては原則として利用できません。入居期間が限定されておらず、終の棲家として利用可能な「特別養護老人ホーム」への入居待ち期間に利用されることもあります。

厚生労働省が作成した資料によると、介護老人保健施設の利用者さんの要介護度でもっとも多かったのが要介護4の人です。次いで要介護3の人、要介護2の人、要介護5の人、要介護1の人という結果でした。利用者さんの年齢は85~94歳が全体の半数以上を占めています。介護老人保健施設に入所するときの傷病名でもっとも多かったのは認知症で、次に多かったのは脳卒中でした。(出典:厚生労働省 第183回社会保障審議会介護給付費分科会 資料2)

介護老人保健施設では、施設に入居する以外にもさまざまな利用の仕方が可能です。自宅から通所でリハビリテーションを受けたり、自宅で訪問リハビリテーションを受けたりすることもできます。ショートステイ・通所・訪問リハビリテーションのすべてが提供できるのが、介護老人保健施設の特徴です。

介護老人保健施設で提供されるサービス内容とは?

介護老人保健施設(老健)では、介護や看護はもとより、食事や入浴・リハビリテーションといったサービスを受けることができます。ここでは、介護老人保健施設で受けられるサービスの一例を見ていきましょう。

リハビリテーション

お風呂やトイレ、食事や移動など、日常生活の中で行うすべての動作がよりスムーズにできるようになるための訓練を受けることができます。認知症の人向けの訓練やサービスも利用可能。医師やリハビリテーションの専門スタッフの指導のもと、利用者さん一人ひとりに合ったメニューを行います。

看護・医療ケア

風邪や腹痛などの体調不良時には、看護職員が対応します。インシュリン注射や経管栄養など、常時必要となる医療ケアを受けることも可能。介護老人保健施設とは本来自宅に帰ることを目的としていますが、施設によっては最期の看取りが可能な場合もあります。

身の回りの介助

入浴や食事・着替えなどの介助や、場合によってはオムツの交換など排泄に関する介助が受けられます。

生活に関する援助

部屋の掃除やシーツの交換などのサービスが受けられます。衣服の洗濯は家族に依頼するか、別途費用が発生しますが外部業者に委託できる場合が多数です。

食事の提供

栄養士が栄養やカロリーを計算した食事が提供されます。利用者さんの体調や食べる力に応じて、治療食や介護食の提供も可能。利用者さん一人ひとりに合わせて、個別に対応可能です。

介護老人保健施設の職員の種類と人員配置

介護老人保健施設は、医療から介護まで幅広いサービスを提供するという特性上、さまざまな専門性を持った人員が配置されています。ここではその一例を見ていきましょう。(人員配置の出典:厚生労働省 第144回社会保障審議会介護給付費分科会資料 参考資料2)

医師

定期的な診察に加え、病状が悪化したときは施設内で治療を行います。利用者数100名に対して常勤の医師1人以上の配置が必要です。

看護・介護職員

利用者数3人に対して1人以上の配置が必要。看護・介護職員のうち2/7程度は看護職員でなければなりません。

支援相談員

入退所に関する相談や、入所後の生活についてなど、利用者さんや家族のあらゆる相談に対応します。利用者数100名に対して1名以上の配置が必要です。

理学療法士・作業療法士または言語聴覚士

利用者さんの状況に合わせて、リハビリテーションの計画を作成し、実行します。利用者数100名に対して1名以上の配置が必要です。

栄養士

食事の献立を作成し、利用者さんの栄養管理を行います。入所定員が100人以上の場合、1人以上の配置が必要です。

介護支援専門員

介護や看護・リハビリテーションなどの施設サービス計画を作成します。利用者数100名に対して1人以上の配置が必要です。

薬剤師

利用者さんに必要な投薬管理を行います。その施設の実用に応じた適当数の配置が必要で、利用者数300人につき1人の配置が標準です。

介護老人保健施設の設備や種類

介護老人保健施設には、以下のような設備が整えられています。(広さや幅の出典:厚生労働省 第144回社会保障審議会介護給付費分科会資料 参考資料2)

療養室

居室とも呼ばれる部屋で、利用者さんが自分の部屋として寝泊まりする部屋のことです。療養室には3種類あります。2~4人で1部屋を使う「従来型多床室」と、1人で1部屋を使う「従来型個室」、個室の療養室と共有スペースの生活設備がセットになっている「ユニット型個室」です。従来型多床室の場合、1人当たり8平方メートル以上の広さが必要で、従来型個室・ユニット型個室の場合は10.65平方メートル以上の広さが必要です。

機能訓練室

数ある老人介護施設の中でも、介護老人保健施設は機能訓練室が充実しているのが特徴です。機能訓練室には、平行棒や階段などの用品があり、歩いたり段差を越えたりするためのリハビリテーションが行えるようになっています。利用者さん一人ひとりの趣味に合った折り紙や手芸をして、手先や脳のトレーニングをするのもリハビリテーションの一環。スポーツジムにあるような筋力トレーニングに使うマシンなどが設置されていることもあります。

食堂

2平方メートル×入所定員数以上の広さが必要です。

廊下幅

1.8メートル以上の幅が必要です。(中廊下は2.7メートル以上)

浴室

身体が不自由な利用者さんの入浴に適したサイズの浴室の設置が必要です。

介護老人保健施設を利用するための費用

介護老人保健施設の費用は施設によって差異があるものの、公的施設のため利用者さんの負担額は少ない傾向にあります。介護保険が適用されるため利用者さんの負担額は1~3割程度で、入居一時金などの初期費用もかかりません。介護老人保健施設を利用するためにかかった居住費や食費、介護サービス費などは医療費控除の対象になるので、申請すればお金が戻って来る場合もあります。

介護老人保健施設の費用を構成しているのが、「居住費」「食費」「介護サービス費」の3つ。居住費は療養室のタイプによって異なりますが、従来型多床室、従来型個室、ユニット型個室の順に費用の負担額が大きいです。厚生労働省によると、食費は3食で日額1,445円という基準が定められていますが、これを上回る施設もあります。介護サービス費は、食事や入浴の介助など、受ける介護サービスに応じて支払うお金です。要介護度が高いほど負担額も大きくなります。このほかにも、理美容代や電話代・新聞代など、日用品は利用した分だけ実費の負担が必要です。

費用の支払いが難しい場合、条件に当てはまっていれば負担額が軽減される「特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)」という制度もあります。生活保護を受給している場合や、世帯全員が市町村民税非課税など、状況によって第1~4段階に分類され、第1~3段階に該当する人が限度額の適用対象です。この制度を利用するには、市区町村で手続きをして負担限度額認定を受ける必要があります。

医療・介護の両面からサポートできる介護老人保健施設

介護老人保健施設では、高齢者の生活を医療と介護の両面からサポートできます。医師や看護師などの医療系専門職から、理学療法士や作業療法士などの介護系専門職、さらには、事務スタッフや調理員といった幅広い人材が必要となる介護老人保健施設。自分の得意分野を活かせる求人が出されているかもしれないので、お近くの介護老人保健施設の求人情報をチェックしてみてくださいね。

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