看護小規模多機能型居宅介護とは?サービス内容や職員の種類などを解説

看護小規模多機能型居宅介護は、住み慣れた環境と地域住民との交流のもとで、介護と看護の一体的なサービスを利用者さんに提供するという、介護保険サービスです。今回は、看護小規模多機能型居宅介護とは具体的にどのようなサービスなのか、職員の種類や利用者さんの利用条件について解説していきます。看護小規模多機能型居宅介護に興味がある方や、これから就職・転職を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

【簡単に解説】看護小規模多機能型居宅介護とは?

看護小規模多機能型居宅介護とは、利用者さんが要介護の状態となった場合においても、可能な限り在宅生活を送れるように、看護と介護を一体的に提供するサービスのことです。略して「看多機(かんたき)」と呼ばれることもあります。

看護小規模多機能型居宅介護は、退院直後で状態が不安定な人や医療依存度の高い人、在宅での看取り支援など、住み慣れた自宅や地域での療養を支える、「訪問看護」と「小規模多機能型居宅介護」を組み合わせた介護保険サービスです。通いを中心に、短期間の宿泊や自宅への訪問を組み合わせながら、利用者さんが可能な限り自立した生活を送ることができるようにサポートすることを目的としています。

主治医との連携のもとに、医療処置も含めた幅広いサービスを24時間365日提供することが主な業務です。

高齢、多死社会を迎えている中で、高齢者の1人暮らしや老老介護が増加してきており、在宅療養を地域で支えていくことが求められています。そんな時代の中で、看護小規模多機能型居宅介護は、医療依存度が高くても、住み慣れた場所で在宅療養を望む利用者さんの思いに応えるため、2012年に創設されました。

提供するサービス内容や利用条件は?

看護小規模多機能型居宅介護で提供しているサービスは、4つあります。

  • 訪問看護
  • 訪問介護
  • 事業所への通い
  • 事業所への泊まり

この4つのサービスを、利用者さんの状況や必要に応じて、1つの看護小規模多機能居宅介護の事業所が提供しています。

具体的にいうと、退院直後に在宅生活へスムーズに移行することや、がん末期等の看取り期・病状不安定期における在宅生活の継続、家族に対するレスパイトケア・相談対応による負担軽減といった内容です。

4つのサービスを、1つの事業所で提供することにより利用者さん側は、

  • 体調や家族の状況に合わせてサービスが受けられる
  • 顔なじみの看護師や介護士が対応するので安心できる
  • 各サービスの利用手続きが1回で済む
  • 専属のケアマネジャーが配置される

など、安心して看護や介護を受けられるようになります。

なお、看護小規模多機能型居宅介護のサービスの利用条件は、要介護1以上の認定者で、管轄する区市町村に住んでおり、利用する事業所の所在地に住民票があることです。また、常時医療機関での治療の必要がないという方が対象となります。

看護小規模多機能型居宅介護の医療体制は?

看護小規模多機能型居宅介護では、介護支援専門員看護職員が、利用者さんにサービスを提供します。

看護師は、医師の指示のもとに利用者さんの自宅へ訪問し看護ケアを行い、事業所での通い・泊まりの際にも医師の指示書をもとに看護ケアをするので、医療体制は整っているといえるでしょう。

要介護度が高く、医療ニーズの高い利用者さんも、安心して利用できるサービスです。

看護小規模多機能型居宅介護の職員の種類と人員基準・配置

看護小規模多機能型居宅介護では、保健師もしくは看護師や准看護師の看護職員と、小規模多機能型サービス等計画作成担当者研修を修了しているケアマネジャー(介護支援専門職員)、常勤専従の管理者といった種類の職員が必要です。

厚生労働省の小規模多機能型居宅介護及び看護小規模多機能型居宅介護の参考資料によると、看護職員は、日中の通いの利用者さん3人に対して1人+訪問対応1人、夜間の泊まりと訪問対応で2人(そのうち1人は宿直可)以上となっています。ケアマネジャーは、事業所につき1人以上必要です。

また、利用者さんの1事業所の登録定員は、29名以下で、「通い」の利用定員は1~15名、「泊まり」の利用定員は1~9名とする決まりがあります。各事業所は、利用者さんの登録定員に合わせて人員配置を行わなければなりません。

看護小規模多機能型居宅介護事業所の設備は?

厚生労働省の、看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)について、によると、看護小規模多機能型居宅介護の事業所の設備は、居間・食堂・台所・宿泊室・浴室に加え、消火設備やその他非常災害の際に必要な設備、その他サービス提供に必要な設備及び備品などが必須です。

また、居間・食堂に関しては、機能をしっかりと発揮することのできる適当な広さが必要となります。

宿泊室に関しては、詳細に基準が設けられているので、1ずつみていきましょう。

  • 個室
    定員:1 (利用者さんの処遇上必要と認められた場合は2人)
    床面積:7.43平方メートル以上 (病院または診療所の場合は6.4平方メートル以上)
  • 個室以外
    床面積:7.43平方メートル×(宿泊サービス利用定員-個室の定員)
    (プライバシーが確保されている居間は、宿泊室の面積に含むことができる)
    構造:プライバシーが確保されたもの
  • 診療所が有する病床については、宿泊室を兼用することができる

以上のことが、看護小規模多機能型居宅介護の事業所開設の際に義務付けられています。

看護小規模多機能型居宅介護の介護報酬と料金(利用者さんの費用感は?)

介護サービスを提供した場合は、原則として、介護報酬の7~9割は介護保険から支払われ、1~3割は、利用者さんの自己負担となります。

一定以上の所得のある利用者さんの場合は、2または3割負担となりますが、利用者さんの自己負担は、原則1割です。

それでは、看護小規模多機能型居宅介護の利用者さんが、負担しなければいけない費用(1割負担)の目安の料金表をみてみましょう。

要介護度区分同一建物以外に居住の場合(1ヶ月につき)同一建物に居住の場合(1ヶ月につき)
要介護112,401円11,173円
要介護217,352円15,634円
要介護324,392円21,977円
要介護427,665円24,926円
要介護531,293円28,195円

上記はあくまでも目安なので、料金は事業所ごとに多少前後します。

看護小規模多機能型居宅介護にかかる費用は、要介護度に応じた月額定額制です。そのため、1ヶ月の介護保険利用限度額を上回るという心配をせずに利用してもらうことができます。ただし、月途中で登録・登録を終了した場合は、日割り算定を行います。看護小規模多機能型居宅介護には、利用回数に上限はなく、各サービス1日あたりの定員以内であれば、何度でも利用可能です。

また、利用する事業所によって、サービス提供体制強化加算・介護職員処遇改善加算(現行加算)・介護職員等特定処遇改善加算(特定加算)が加わり、利用者さんの自己負担額が増える場合があります。

これらの費用に加えて、食費・宿泊費・光熱費・おむつ代や理美容費などの、日常生活費が別途必要です。また、看護小規模多機能型居宅介護を利用している間は、居宅療養管理指導や訪問リハビリテーション、福祉用具のレンタル以外のサービスを利用することはできないので、あらかじめ利用者さんに伝えておく必要があるでしょう。

これからの時代により必要とされる看護小規模多機能型居宅介護

高齢化・多死社会が進んでいく中で、看護小規模多機能型居宅介護は「住み慣れた環境で生活したい」と願う利用者さんにとって、頼れる重要な施設です。その思いに応えるために、決められたサービスを行うだけではなく、利用者さんの状況に応じて柔軟に、さまざまなサービスを提供する必要があります。そんな看護小規模多機能型居宅介護で働けば、さらなるスキルアップに繋がるかもしれません。看護小規模多機能型居宅介護に興味のある方は、ぜひ参考にしてみてください。

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