地域包括支援センターとは?具体的な業務や求められる職種をチェック

地域の高齢者はもちろん、介護や福祉に携わる家族や事業者もサポートする機関である地域包括支援センター。保健師や社会福祉士などの求人でも見かける職場ですが、具体的な業務についてははっきりとわからないという声も少なくありません。

そこでこの記事では、地域包括支援センターとはどんな施設か、についてわかりやすく紹介していきます。地域包括支援センターへの転職などを検討中の方はぜひご一読ください。

地域包括支援センターとは?設置のきっかけは法律改正

まずは、地域包括支援センターの立場を改めて確認しておきましょう。

地域包括支援センターとは、地域内に住む高齢者とその介護・支援に携わる家族や事業者をサポートする中心的な機関です。運営は、市区町村や各自治体から委託を受けた社会福祉法人・医療福祉法人・民間企業などが担っています。

地域包括支援センターの設置が定められたきっかけは、厚生労働省が2005年度に行った介護保険法の改正です。厚生労働省老健局認知症施策・地域介護推進課が2020年4月に行った調査によると、全国での設置数は5,221ヶ所であることがわかっています。

厚労省が推進!2025年までに目指す地域包括ケアシステムとは

地位包括支援センターが設置された目的は、「地域包括ケアシステム」を実現することにあります。地域包括ケアシステムとは、高齢者が住み慣れた地域で生涯暮らせるよう、住まいや介護、医療などのサービスを地域内で提供する体制のこと。

厚生労働省が推進する取り組みで、医療や介護のニーズがより高まると予想される2025年を目途に、各地域で整備が進められています。地域包括ケアシステムは、各市区町村の特性に応じて、それぞれに作り上げていくことが重視されているシステムです。

地域包括支援センターの主な業務内容とは?

高齢者やその支援者たちをサポートする中心機関として設置されている地域包括支援センターには、主に4つの代表的な業務があります。具体的な業務内容など、どのような活動を行っているか確認していきましょう。

介護予防ケアマネジメント

介護が必要になった高齢者や今後必要になる可能性が高い方であっても、自立した生活を続けられるようサポートする業務が、介護予防マネジメントです。介護認定審査で「要支援1・2」と判定された高齢者や、今後介護や生活サポートが必要になる可能性が高い方が、主な対象になります。

具体的には、利用者さんと話し合って介護予防を目的としたケアプランを作成し、運動機能や健康状態などの把握や課題の分析を行います。また、介護予防に取り組みたい利用者さんを対象にした、介護予防教室などを行うことも業務の一環です。

包括的・継続的ケアマネジメント

包括的・継続的ケアマネジメントは、高齢者が生涯にわたって暮らしやすい地域にするための環境を整える業務です。主に医療や介護など、幅広い専門家と地域住民とのネットワークを築き上げていきます。

具体的な業務内容では、厚生労働省が推進する地域ケア会議の開催やケアマネジャーを対象にした研修会などがあります。また、ケアマネジャーだけでは支援が難しい利用者さんにどのように対応するかをアドバイスすることも業務のひとつです。

高齢者の総合的な相談窓口

地域包括支援センターでは、高齢者が生活する上での総合的な相談にも対応していきます。生活のサポートが必要な高齢者本人からはもちろん、初めて介護に直面する家族からの相談に応じることも少なくありません。

地域内のさまざまな社会資源を活かしながら、高齢者の生活を支援する適切なサービスへとつなげる役割も担っています。

高齢者の権利を守る

高齢者の「権利擁護」を実現することも、地域包括支援センターの重要な役割です。高齢者がターゲットとなる詐欺や悪徳商法、虐待などの早期発見と防止にも努めています。

また、認知症を発症した利用者さんなどに対して、財産などを適切に守れるよう成年後見制度の手続きを行うサポートも行っています。

地域包括支援センターに必要な専門家や人員基準とは?

地域包括支援センターで専門的な業務に携わるためには、次の資格や経験が必要です。それぞれの基準を確認していきましょう。

包括的支援事業に必要な人員基準

65歳以上の高齢者の人口が3,000人~6,000人ごとに、地域包括センターには次の職種を各1名配置することが義務づけられています。それぞれの専門職が担う、主な業務内容は以下のとおりです。

<社会福祉士>
介護・福祉サービスの総合的な相談やサポートに応じているのが、社会福祉士です。高齢者の健康状態や生活状況に応じて、適切な医療機関や施設などへとつなげていきます。介護保険の相談や成年後見制度の手続き支援、家庭訪問など、総合相談や権利擁護の業務を主に担っています。

<保健師>
医療にまつわる相談やサポートを行うのが、保健師です。地域包括支援センターでは、主に介護予防マネジメントの業務を担っています。介護予防の促進や健康づくり教室の企画、体調管理の相談などの医療知識が必要な場面を任されることが多いでしょう。

<主任ケアマネジャー>
介護サービス事業者や地域で働くケアマネジャーへのサポートを行うのが、主任ケアマネジャーです。包括的・継続的マネジメントの業務を主に担っています。地域内のケアマネジャーから個別相談を受けたり、地域ケア会議の開催などを行ったりします。

介護予防支援に必要な人員基準

上記3種の専門職に加えて、地域包括支援センターでは次の資格や経験を有する人員を1名以上配置する必要があります。

  • 保健師
  • 社会福祉士
  • 介護支援専門員
  • 経験のある看護師
  • 3年以上の実務経験をもつ社会福祉主事

このほか、報酬請求事務や書類整理などの事務処理作業については、専門職種でなくても従事することが可能です。

地域包括支援センターの利用に費用はかかる?

地域包括支援センターの利用や相談には、費用がかかりません。すべて、無料で行われています。ただし、紹介したサービスを利用する場合には、必要に応じて利用者さんに費用を負担してもらうこともあるでしょう。

利用対象者は、各地域包括支援センターのある地域内に住む、65歳以上の高齢者と親族などの関係者です。65歳以上の高齢者であれば、誰でも利用できます。

今後の地域包括支援センターとは?求められる役割も高度化する

団塊の世代が75歳を超える2025年に向けて、地域内でサポートするべき高齢者の人口はより一層増えていきます。今後は、その中心を担う地域包括支援センターの重要性もさらに高まり、業務も高度化することが見込まれるでしょう。資格や経験を活かしたい方は、各地域の包括支援センターの求人情報をチェックしてみてはいかがでしょうか。

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