アウトカム評価をわかりやすく解説。BIから介護報酬改定の動きまで

提供したケアによってどのような効果があったかに着目する「アウトカム評価」。介護におけるアウトカム評価は介護事業所の評価にもつながることが特徴です。これまでは提供したケアだけに着目されていましたが、働き手が不足している介護福祉業界では、効率的かつ効果のあるケアが重要視されつつあります。この記事では今後主流になる可能性の高いアウトカム評価についてわかりやすく解説。今後の働きがどのように評価され、報酬へとつながるのか、正しく理解しておきましょう。

【わかりやすく解説】介護における「アウトカム評価」とは?

アウトカム(Outcome)とは英語表現で「結果・成果」を意味する言葉です。介護におけるアウトカム評価とは、ケアによってもたらされた結果に着目し、その評価が事業所の評価へとつながる仕組みを指します。では、アウトカム評価について正しく理解するために、その評価の仕組みについて詳しく解説していきましょう。

評価の種類は3つ

評価には、ほかにもストラクチャー(構造)プロセス(過程)があり、アウトカム(結果)を合わせると種類は全部で3つあります。

  • ストラクチャー(構造)…どんな体制を整えたか
  • プロセス(過程)…どんな利用者さんにどんなサービスを実施したか
  • アウトカム(結果)…どんな結果があったか

これら3つの要素がそろうことで、バランスのいい評価になると言われています。しかし、これまではアウトカム評価はあまり取り入れられることがありませんでした。なぜなら、結果とするものが本当に提供したサービスによるものかという判断が難しかったからです。また、事業者が結果を出せそうな利用者さんを選別する、いわゆる「クリームスキミング」につながるという懸念もあり、導入が進んでいませんでした。しかし、政府は介護の質を効率よく向上させるため、アウトカム評価を普及させる方針です。今後どのようにアウトカム評価が盛り込まれていくのか、介護報酬改定など今後の動向をチェックしておきましょう。

似たニュアンスを持つアウトプット評価との違いは?

介護保険事業の評価には、もうひとつ「アウトプット評価」という観点もあります。厚生労働省の「第6回 標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会」の資料によると「目的・目標達成のために行われる事業の結果に対する評価」を表しており、事業実施量で評価されるようです。一方アウトカム評価は「事業の目的・目標の達成度、また、成果の数値目標に対する評価」と記されており、結果に着目した評価となっています。つまりアウトプット評価は、目標達成のためにどれだけ尽力したかを評価すること、アウトカム評価はどれだけ目標が達成されたかを評価するものです。
では、例として「要介護状態にならない」という目標を立てた場合、2つを比較してみましょう。アウトプット評価では介護予防のための機能訓練実施率や介護予防指導率などが評価指標になります。一方、アウトカム評価では結果を示す要介護率が評価指標です。名前は似ていても、評価対象となる事象が異なることが大きな違いとなっています。

アウトカム評価の指標となるバーセル・インデックス(BI)とは?

アウトカム評価の指標として採用されるもののひとつに「バーセル・インデックス」略してBIがあります。BIは食事や着替えなど日常生活で必要な基本動作となるADL(日常生活動作)を評価する指標です。評価項目は、食事・整容・移乗・入浴・トイレ動作・排便コントロール・排尿コントロール・歩行(移動)・更衣・階段昇降の全10項目。各項目を自立度に応じて15点、10点、5点、0点で採点していきます。100点満点で評価され、85点以上で自立、60点以上で部分自立、40点で大部分介助、0点で全介助となります。シンプルな採点方法のため短時間で評価できることが特徴です。もとはリハビリの現場で使用されることが多く、介護現場で活用される場面はほとんどありませんでした。今後は介護で提供したケアによって利用者さんのADLが維持・改善されたというアウトカム評価での活用が期待されています。
しかし、BIは50年ほど前に作られた指標のため、認知症の評価が含まれていません。また、評価者によりバラつきが出やすいのではないかという懸念の声もあるようです。このようなデメリットもありますが、今後介護の現場で使用する機会が増えるため念頭に置いておきましょう。

アウトカム評価が採用されている加算について

現在、アウトカム評価が採用されている加算は「ADL維持等加算」「在宅復帰・在宅療養支援機能加算」の2つです。ADL維持等加算はデイサービスで、在宅復帰・在宅療養支援機能加算は介護老人保健施設で設けられています。ADL維持等加算は上記で説明したBIを採用。在宅復帰・在宅療養支援機能加算は在宅復帰率やベッド回転率などを足し合わせた値で評価されています。しかし、ADL維持等加算は2020年4月の段階で加算の届け出をした事業者が全体の約2%と普及が進んでいません。理由としては、加算される単位数が少ないこと、算定の手続きが複雑であることが挙げられます。アウトカム評価を広めるため、今後どのように改定していくかが課題となっているようです。

介護報酬改定での最新の動きとは

2021年の介護報酬改定ではアウトカム評価が「排せつ支援加算」と「褥瘡マネジメント加算」に新たに盛り込まれることになりました。排せつ支援加算では、おむつアリからナシへと改善する、排尿・排便状況が改善するといった結果を評価。褥瘡マネジメント加算では、褥瘡リスクのある方が発症していないという結果が評価されます。
また、従来からアウトカム評価が導入されている在宅復帰・在宅療養支援機能加算では、在宅復帰をさらに進めるため指標の見直しを実施。ADL維持等加算においては普及を進めるため、単位数は10倍に、手続きも簡略化され、対象となる施設が拡大されました。対象となる加算が増えたことや、加算数の引き上げによりアウトカム評価は少しずつ普及していく見込みとなっています。

今後はアウトカム評価がスタンダードに

政府によるアウトカム評価を普及させる動きはすでに始まっています。医療、看護業界では当たり前のように使用されてきたアウトカム評価が、今後は介護業界でもスタンダードな評価項目となっていくでしょう。ケアの質を高めるためにも、結果を評価することはとても大切です。アウトカム評価を正しく理解し、今後どのように評価され報酬へとつながるのか注目しておきましょう。

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